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<憑依>他人の身体で飲む酒はうまいか?②~報告~(完)

大学時代に犠牲になってしまった彼女ー

しかし、そんな彼女は、他の女性に憑依して、
最愛の彼氏との時間を毎週楽しんでいた。

が、彼氏の保志には結婚が近づいていて…?
-------------------------

「--お…俺…
 その人とー
 恵麻と…結婚するんだ」

保志は、恵麻にそう呟いたー。

端から見たらおかしな光景かもしれないー

しかし、今、
保志の婚約者である恵麻は、
大学時代の恋人ー千奈に憑依されている。

「---」
恵麻の表情から笑みが消えた。

不機嫌そうにお酒を飲み干すと、
恵麻は言った。

「そっか」
微笑む恵麻。

「---ごめんな」
保志は、ほっとひと安心した。

千奈が、怒り狂ったり、
そういうことをするかと思った。

けれどー
千奈は冷静だった。

穏やかな笑みを浮かべると
保志の方を見て、恵麻はにっこりと笑う。

千奈は生前、優しかった。
そうだー
死んだあとも、千奈は千奈だー。
恵麻のことを壊したり、
そういうことをするはずがないー

保志は、千奈になかなか報告
できなかった自分を恥じていたー

「---じゃあ、壊しちゃお!」

「-え?」
目の前にいる恵麻が
不穏な言葉を口にした気がした。

「--おかわりちょうだい!」
マスターの方に向かって言う恵麻。

恵麻は、運ばれてきたお酒を
勢いよく飲み始めた。

「は~!やってらんない!」
恵麻がイライラした様子で髪を掻き毟る。

「--え、、恵麻…い、、いや、、千奈…?」
保志が困惑する。

「--他の女と結婚するなんて…
 ゆるせない…!」

恵麻が睨むようにして
保志の方を見た。

ーーーー!!!

保志は背筋が凍る思いをしたー

千奈はーー
保志と恵麻の結婚を祝福してはくれなかったー。

「い…言えなかったのは、悪かった!
 ほ、本当は、恵麻と付き合いだした時点で
 報告するべきだったんだけど、つい!」

保志は、恵麻に向かって土下座をしたー。

最初、千奈が他人に憑依して
自分に会いにきたときは、まだ恵麻と
出会ってすらいなかったー。

恵麻と出会ったのは、その数年後だ。

そのとき、すぐに報告しようと思った。

けどー
千奈は自分を守って死んだ。
そんな千奈を悲しませることはできなかったー

恵麻との結婚も、ずっと迷っていた。

千奈に悪い気がしたからだー。

自分は、千奈の存在を言い訳にしているだけかもしれない。
それでもー
毎週、逢いに来てくれて、うれしそうにしている千奈の
姿を見たら、どうしても、保志は言えなかった。

”お前にはもう用はない、消えろー”

と千奈に言わんばかりのことを言うことはできなかったー。

千奈にもー
恵麻にもー
憑依された女性たちにもー

悪い事をしている。

そうは、思いながらもー

「ーーふ~ん」
恵麻は怒りの形相で土下座した
保志を見ると、
恵麻は、さらにお酒を飲み干す。

「あ~!」
恵麻はお酒が得意ではない。
ふらふらしながら恵麻は叫ぶ

「--やすしぃ~!
 わたしが、この女の身体、奪っちゃえば
 わたし、保志と結婚できるね~?
 うっふふふふふふ♡」

恵麻が自分の太もものあたりを
触りながら言う。

「---ち、、千奈…」
保志は恵麻の方を見て言う。

「--保志~♡
 ほら、わたしを抱いて~?」

恵麻が顔を赤らめながら笑っている。

「--……」
保志は困り果てた表情で
恵麻の方を見る。

「ほら~!
 わたしと結婚しようよ~!
 こんな女なんて、どうでもいいでしょ~?
 ふふふふふふ」

恵麻が無理やり保志に抱き着く。

保志はそんな恵麻を振り払った。

「もうやめてくれ…頼む」
保志が頭を下げる。

「俺は…俺は…」

煮え切らない保志を見て、
恵麻は叫んだ。

「わたしとこの女!どっちが好きなの?」

とー。

保志は”これが修羅場か”と思いながらも
恵麻の方を見た。

「ど、、どっちも…どっちも好きなんだ…
 千奈…!俺は…」

そう言う保志。

「---じゃあ、わたしがこの女の身体
 奪ったまま、保志と結婚しよ~っと!」

恵麻はそう言いながら笑うと、
マスターに「ほら!もっとお酒持ってきて!」と叫ぶ。

「あっははははははははは!
 あっははははははは~」

狂ったように笑いだす恵麻。

「や…やめてくれ…!千奈!頼む!」
保志が叫ぶ。

「--わたし、保志が大好きなんだもん!」
そう言うと、お酒を乱暴に飲み干して
保志の方を見る。

「--え、、恵麻はお酒が苦手なんだ!
 もうそのぐらいにー」

「うるさい!」
恵麻が叫んだ。

「この身体は、もうわたしのものよ!」
大声で叫ぶ恵麻ー。

「--ち、、違う!その身体が恵麻のものだ!」
保志が必死に食い下がる。

「--はぁ?」
恵麻が不機嫌そうに返事をするー

このままじゃ、恵麻の身体が
完全に奪われてしまう。

「--わたしの代わりの女でしょ?
 わたしが戻ってきたんだから、必要ないじゃない」
恵麻は明らかにイライラした様子だ。

いやー
性格には、恵麻に憑依している千奈が
イライラしている。

「---違う…」
保志は必死に叫ぶ。

「--この女は今日からわたしになるの!
 うふふふふふ♡」

恵麻は自分の身体を撫でるようにして
触っている。

「違う!恵麻は千奈の代わりなんかじゃないー」
保志は、意を決して大声で叫んだ。

「俺は、、恵麻が好きなんだ!
 恵麻と結婚したいんだ!!!」

今一度土下座をして叫ぶ保志。

バーの中に保志の大声が響き渡る。

「---…わたしより、、この女が好きなの?」
恵麻が言う。

「----……」
保志は、頭を下げたまま答えない。

千奈を傷つけてしまうー
それ以上、先は言えなかった。

「-----どっちが大事なのかはっきりしなさいよ!」
普段声を荒げない恵麻が、声を荒げたー。

「---お…俺は…」
保志は震えているー

千奈のことは今でも好きだー
でも、千奈が死んでからー
その感情は、少しずつ、ゆっくりと薄れてー
今はー

今は恵麻のことがー

「---もういい!こんな女の身体、こわしてやる!」

そう言うと恵麻は、カウンターの中に入っていき、
乱暴に何かを探し始めた。

「--お、、落ち着いて!」
マスターが慌てふためく。

「どけ!」
恵麻がマスターを乱暴に押すと、
カウンターの中にあった包丁を見つけて
恵麻が微笑んだー。

「--こんな女、壊してやる!」
恵麻が狂ったように笑いながら叫ぶ。

「やめてくれ…
 俺は……恵麻のほうが…
 今は、、今は恵麻のほうが好きなんだ…!!!」

保志は大声で叫んだ。

保志は、頭を下げたまま
半泣きしているー。

終わりだー
千奈は恵麻の身体を壊すー。

もうー

・・・・

沈黙が流れる。

そしてー
誰かの手が肩に触れた。

「顔を、上げて」

保志が顔を上げると、
そこには、恵麻の姿があった。

もう、包丁は手に持っていないー。

「---恵麻…?」
保志が驚いた様子で言う。

「ようやく…
 本当のこと言ってくれたね…」

そう言うと、恵麻は微笑んで、
カウンターに座り直すように、保志に言ったー

・・・・・・・・・・・・・

「---ドッキリ仕掛けてごめんね」
恵麻が笑うー

「--」
マスターも無言で頭を下げる。


「ど、どういうことだ…!?」
保志が言うと、
マスターが口を開いた。

「先週ー
 私が千奈さんに伝えたんです」

先週、飲み終えたあとに
先に店の外に出た保志ー

その時、
マスターが千奈に声をかけた。

「あの…千奈さん?」
マスターが言うと、
千奈に憑依された女性は不思議そうに振り返った。

「---実は彼、
 来月には結婚するんです。」

マスターの言葉に、千奈は驚いた。

「ずっとずっと、悩んでいたみたいですが
 ずっと言いだせないでいるんですよ。
 千奈さんのことがずっと気がかりで、
 どうにも彼は前に進めないようでー。

 このままだと、
 婚約者の女性と結婚したあとも
 そのことを言えず、彼は今の状況を
 続けるでしょう」

マスターは、保志の様子を見かねて
千奈に結婚のことを伝えたのだった。

「そう…ですか」
千奈は取り乱さなかった。

「--いつか、そんな日が来ると思ってました。
 わたしは、もう、死んでるから」

少しだけ悲しそうな顔をすると、
千奈は、マスターの方を真剣な目で見た。

「保志のー、
 彼の迷いを断ち切るためにー
 来週、付き合ってくれませんか?」

千奈はそう言ったー

・・・・・・・・・・・・

「保志が、この女の人と
 結婚を迷わないようにー
 ちょっと試したの。
 乱暴な方法だったけど、
 保志、そうしないといつまでも優柔不断に迷うでしょ?」

恵麻が笑ったー

今日の出来事は、
千奈とマスターが保志を後押しするために、仕組んだことだったー

よく見たら、バーには、他に誰もいない。
今日は貸切にしたのだと言うー

千奈が恵麻に憑依したのも、偶然ではなく、
マスターが恵麻の存在を教えたから。

「--な、、なんだよ…驚いたじゃないか」
保志が冷や汗をかきながら言う。

「迫真の演技だったでしょ?
 わたしも、マスターも」

「--千奈さんが飲んでいたお酒も、
 実は水だったんですよ」
恵麻がヤケ飲みしているように見えた酒は、
水だったらしい。

恵麻とマスターが笑うと、
ふたりは改めてカウンターに座った。

「---」

グラスを持ちながら、
保志が口を開く。

「俺さ…その人と…
 恵麻と結婚するんだ」

保志が、改めて報告する。

恵麻に憑依している千奈は笑った。

「うん。おめでとうー」

とー。

怒っている様子は全くないー

やっぱり千奈は、
生前と同じように、優しかった。

恵麻が水を飲みながら言う。

「--さっき、わたしより恵麻さんの方が
 好きって言ったよね…?」

恵麻が言う。

「--あ、あれは、咄嗟に口から出た言葉で…」
保志がうろたえると、
恵麻は微笑んだ。

「--ううん、大丈夫。
 恵麻さんと結婚するんだから、
 いつまでもわたしのこと引きずってちゃダメ」

恵麻はそう言うと、
悲しそうな表情をして、
バーの店内を見つめるー。

「--まぁ、わたしも、保志のことを
 引きずって、こうして憑依してるんだから
 ヒトのこと言えないけど」

恵麻に憑依している千奈は意地悪っぽく笑った。

「---ごめんな」
保志が言う。

「--ううん、わたしの方こそ…。
 そもそもわたしがちゃんと成仏してれば、
 保志を迷わせることもなかったんだし」

恵麻はそういうと、グラスの水を飲みほした。

「御馳走様です」
マスターの方を見て、微笑むと、
マスターも優しく微笑み返した。

「---保志が、幸せになるのを
 見届けられて、本当によかった…」

恵麻はそう呟くと、
保志の方を見て、笑うー

「---おめでとう。
 恵麻さんと、幸せに…ね?」

恵麻は微笑むと、
ふっと、力を失ったようにして
倒れてしまうー。

「---恵麻!」
保志は恵麻を抱き抱えた。

”これで、やっと、わたしも成仏できるみたいー”

千奈の声が聞こえて、
保志が顔を上げると、
透明な千奈の姿がそこにはあった。

「ち、千奈!」

保志が叫ぶ。

「---保志、今までありがとうー。」
千奈が微笑んだー

保志は思うー
千奈は、消えるのだと。

”待ってくれ”

そう叫ぼうとしたー

けれどー
その言葉を飲み込んだー

自分も、千奈もー
いつまでも、相手に未練を引きずっていてはいけないー

保志はそう思って、
言葉を必死に飲み込んだー

そしてー

「---ありがとう」
代わりにそう呟いた。

千奈はー
あの時、暴走車から保志を助けてくれた。
その、感謝の言葉ー

千奈は、その言葉を聞いて、
優しく微笑んだ。

「どういたしまして」

とー。

そして、千奈がため息をつく。

「--色々な人に憑依して、
 お酒飲んじゃったから、
 あの世で、怒られちゃうかも…!

 ちゃんと反省しなくちゃ」

色々な人に憑依して
他人の身体で酒を飲んできたー

千奈は、その人たちに申し訳ないと、
心から思いながら、
最後に保志の方を見たー

「---恵麻さんを不幸にしたら、
 わたし、化けて出てくるからね?」

笑う千奈。

「---不幸になんか、するもんか」
保志が微笑みながらそう返事をすると、
千奈は、にっこりとほほ笑んで、
雫のようになって、消滅したー

”さようならー”

「---」

保志は、泣きそうになるのをこらえて、
そのまま、雫となった光が消えるまで、
店内を見つめ続けたー

「---」
マスターもその様子を寂しそうに見つめていたー。


「---う…」
恵麻が目を覚ます。

保志は、はっとした。

そういえば俺、
この状況をどう説明すればいいんだー?

とーーー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

1か月後ー
保志は、無事に恵麻と結婚し、
幸せな日々を送っていたー。

そんなある日ー
保志は久々に、例のバーを訪れる。

千奈が消えてからは、
一度も足を運んでいない。

バーに辿り着いた保志は、
目を疑った。

「あれ…?」
そこに、バーはなかった。

寂れた建物があるだけー。
いつも使っていたエレベーターも、
停止している。

閉店してしまったのだろうかー

「あの…」
近くにいた、建物の管理人らしき老人に声をかける。

「この建物にあったバーは?」
と、尋ねるー。

すると、老人は言った。

「バー?
 あぁ…あったねぇ、そんなものも。」

老人は笑うー

「--10年ぐらい前だったかな…?
 とっくに閉店しちまったさ。

 あんた、昔のお客さんかい?

 …って、そんな年齢じゃないよね」

老人は呟いたー

10年前ー?

保志は、バーがあったはずの建物を見つめる。

そこにはー
もう、バーはなかった。


「---なんだったんだろうな」
保志は少しだけ微笑む。

千奈を失って、失意のどん底だった保志が
ふらふらとたどり着いたバー。
そこに、千奈が他の人に憑依して現れたー。

そういえばー
いつも客は、自分と千奈しかいなかったような
そんな気もするー

「---」

あのマスターは何者だったのだろう?

保志はそんなことを考えながら、
バーがあった場所に向かって頭を下げた。

「お世話になりましたー」

と。

保志は、千奈が化けてでてこなくて済むように
恵麻を幸せにしてやろうと、決意してー
歩きはじめるのだったー。


おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

お読み下さりありがとうございました~☆

今度は、他人の身体で好き放題飲む
ダークサイドなお話も書いてみたいような気がします~!

でも、
やっぱり憑依中の味覚が気になっちゃう無名さんデス(笑

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プロフィール

無名

Author:無名
憑依小説好きです!
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