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<皮>石焼き芋屋さん③~初恋の果て~(完)

焼き芋の移動販売をする女性に
恋をした、男子大学生の省吾ー。

けれど、その恋は終わるー
---------------------

「ーーーや、、やめてください!」

夜の公園ー

そこでー女子大生が男に
追いかけられていたー

哀川 菜々美ー。
ごく普通の女子大生。
整った容姿で、穏やかな雰囲気を持つ子だー。

「--へ、、へへへへへへ…
 お嬢ちゃん、可愛いねェ」

中年の男が、笑いながら菜々美に近づく。

人の気配のない夜の公園ー
バイトで遅くなった菜々美は、
そこで、男に襲われていたー

男は、焼き芋の移動販売をしていた男ー。
だが、1年前に焼き芋の移動販売をやめて、
ホームレス同然の生活をしていたー

「--君みたいな、可愛い身体があれば、
 焼き芋も、売れると思うんだよぉ へへへへ」
男が笑う。

「--な、、何を言ってるんですか…?」
菜々美がおびえた様子で男を見るー

「--焼き芋、売ってみないかい?へへへ」
男は明らかに正気を失っていたー

「--や、、焼き芋!?
 そんなの、け、、結構です!」
菜々美はそう叫ぶと、男を払いのけて、
スマホで警察を呼ぼうとするー

「---そんなの?」
男は呟いた。

そして叫んだ。

「クソガキがぁ!」
怒り狂った中年の男が、菜々美の頭のあたりを無理やりつかむー

「あっ!?」
菜々美の目の輝きが失われていくー

菜々美の後頭部にはー
チャックのようなものが出現していたー

身体から、力が抜けていくー
スマホを地面に落とし、ぶるぶると震える菜々美ー

やがて、菜々美の身体が、まるで着ぐるみのように
ぶかぶかとしたものに変わっていくー

「た、、、たすけて…」
菜々美は、何が起きているのかもわからないまま、
彼氏の顔を思い浮かべたー

そして、何も考えられなくなるー

中年の男は、皮のようになった
菜々美を着こむー

「--くく…ふふふふ、本当に、、本当に
 人間を皮にできた…」

よろよろと歩き始める菜々美ー
男は、菜々美を皮のように着込むと、
菜々美になったー

そのまま男子トイレによろよろと入ると、
菜々美は目に涙を浮かべたまま
鏡に向かって呟いたー

「これから、わたし…
 焼き芋を売っちゃいま~す♡」

とー。

菜々美は、そのまま夜の薄汚れた男子トイレで
ひとり、激しいエッチを始めるのだったー
今までの苦悩や怒りをすべてぶちまけるぐらいに
激しくー

翌日からー
菜々美は豹変したー。
大学に行かなくなり、
友達や彼氏との連絡を絶ち、
バイトはそのまま音信不通ー

美穂と名乗り、焼き芋の移動販売を始めたー

全てはー
1か月前の出来事ー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「---」
省吾は、スマホでニュースを見つめていたー

男子大学生変死体で発見ー

そのニュースを。

犠牲になった男子大学生の写真が
載っているー。

その写真は、
昨日の夜、省吾が物影から見ていた男ー…
焼き芋の移動販売をしている女性に
詰め寄っていた男だったー。

あの時ー店主の美穂、いいや、菜々美の中から
中年の男が飛び出してきていたー。
あれはいったいー?

そして、あのあと、逃げる男を菜々美が追って行ってー…

「---」
省吾は表情を歪める。

「あれはいったいなんだ…?」

省吾は、焼き芋の店主・美穂のことが好きだったー
あの若さで、焼き芋を売り、笑顔を振りまく。
並大抵のことではできないだろう。
祖父の焼き芋の移動販売を継いだ、という
境遇にも、なんとなく親近感が持てたー。

だがー
もしもそれが全てうそだったらー?

もしも彼女がー
何かとんでもない存在だったらー

「--」
省吾は立ち上がったー

今日も、大学が終わったら、
焼き芋を買いに行こうー。

スマホニュースの記事の続きを読む省吾。

その最後にはー
”発見された男子大学生は、
 まるで脱皮した昆虫の抜け殻のようだった”と
書かれていたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ありがとうございました~」
焼き芋を手渡して笑顔を浮かべる店主の美穂ー

彼女は、省吾に対して美穂と名乗った。

だが、それは本名ではない。
本名は哀川 菜々美ー。
だが、”この身体”の名前なんて関係ないー

今は天童 美穂として焼き芋を売る女に
してやったのだー。

「--……ふふ」
売上を見て笑みをこぼす美穂ー

1年前ー
中に潜む男は、焼き芋の移動販売を
廃業したー
理由は簡単だった。
売れなかったからだ。

いや、それだけではない。
近所の人からのいやがらせも受けた。
時代遅れと笑われたり、
学生にいたずらされたり、
そんな積み重ねが男を精神的に
追い詰めてもいた。

そしてついに、男は廃業した。

それからはホームレスとして
絶望の日々を過ごした。
焼き芋の移動販売を始めた理由はー
”嘘”ではない。

男は確かに”祖父の焼き芋の移動販売を継いだ”

サラリーマンとして働きながら
仕事が終わると、焼き芋の販売をした。
会社も、それを容認し、認めてくれていたー。

だが、会社は業績の悪化で、男をリストラしたー
焼き芋の移動販売とバイトでなんとか盛り返そうとしたが
だめだったー
周囲は焼き芋の移動販売をあざ笑った。
時代遅れー
そんなことは分かっている。
でも、わざわざ口にしたり、指をさして笑ったり
いやがらせをする必要はないじゃないかと男は思ったー

そしてー
経営難と精神的負担が積み重なり、
男は廃業したー。

その時、娘を失ったー
男手ひとつで育ててきた娘がー
自ら命を絶ったのだー

娘の名前が、今、菜々美の身体を乗っ取ったあとに名乗っている
美穂という名前だったー

失意の中、ホームレスとしてさまよう男の前にー
謎の男が現れたー

その男がー
男に”人を皮にする力”を授けた。

あの男が何者なのかは分からない。
幻覚かもしれない。
自分は頭がおかしくなったのかもしれない。

けれどー
偶然通りかかった菜々美にその力を試した結果ー
今、自分はこうして女子大生の身体で焼き芋を
販売することができているー

容姿を利用して愛想よく振舞うだけでー
客が増えたー
”実に便利な皮”だー。

世の中は、おっさんに厳しいー
男はそう思った。

売っているのが「おっさん」ではなく
「可愛い女子大生」なだけでー
こんなにも、売上が違うー

「----こんにちは」

ーーー!?

美穂が我に返って「いらっしゃいませ」ととっさに
返事をすると、
省吾がそこにはいたー

「あ、どうも」
美穂がほほ笑むー。

省吾は、「考え事ですか?」と尋ねた。

「あ、いえ、すみません
 ぼーっとしてて」
ほほ笑む美穂ー。

「---」
省吾は、昨日のことを思い出しながら
深呼吸するー

焼き芋の移動販売の店主・美穂が
たとえどんな人間だったとしてもー
省吾にとっては初恋の相手だ。

ここで、逃げたら、省吾は自分が一生後悔すると
そう思ったー

省吾は口を開くー

「--哀川 菜々美さん?」
省吾が言うと、
美穂の表情から笑顔が消えた。

「---……」

「---本当の名前…
 哀川さんの、彼氏の方から聞きました」
省吾が言う。

彼氏とは、今朝、変死体で見つかった
男子大学生のことだー
彼氏から聞いたのではないが、
そう嘘をついたー

昨日のことも含めて
もう全部知っていると、
そういうメッセージを込めて。

「----……」
美穂はイライラした様子で頭をかくー。

そして、笑みを浮かべた。

「---わ、わたしは天童美穂ですよ」

とー。

「え、っと、いつものひとつでいいですか?」
美穂が自暴自棄な様子で呟くー

「--…見たんです」
省吾は口を開く。

「何があったのかは知りません。
 でもー目の前にいるのは
 哀川菜々美さんでーー

 その中に…
 あなたがいるー」

省吾は、昨日の夜、
菜々美の中から出てきた男を思い出しながら言うー。

「--…!」
美穂、いや、菜々美の表情が歪んだー

「---その子に、何をしたんです?」
省吾が震えながら言う。

怖いー

おそらくー
この子の彼氏は、
昨日、この子の中に潜む”なにか”に殺されたー

自分も同じ目に遭うかもしれないー

ガン!
菜々美が思いっきり壁を殴りつけた。

「--わしの、邪魔をするか」

その表情はーー鬼のような形相だったー

「--ち、、ちが…お、、俺は…!」
省吾はうろたえる。

菜々美は、省吾のほうに向かって歩き始めたー
鬼のような形相でー

「--ま、待ってくれ…!なぁ、、おい!」
省吾はそう叫ぶと、後ろずさるー

菜々美の歩く足が速くなるー

省吾は、走って逃げだしたー

菜々美があとを追いかけてくるー

省吾は、変死体で見つかった
菜々美の彼氏のことを思い出すー

”自分も、殺される”

そう思ったー
やっぱり、こんなことに首を突っ込まなければよかったー
焼き芋に興味なんか持たなきゃよかったー

「--くそっ!」
省吾は裏路地に追い込まれる。

蟹股で歩いてくる菜々美ー

「----ふふふ…もう逃がさないー」
菜々美がクスクスと笑うー

裏路地の角で、省吾は倒れて菜々美のほうを見つめるー

「--た、、た、、助けてくれ…!」
省吾は叫んだ。

「--……」
菜々美は冷たい目で省吾を見つめているー

その菜々美の表情に、
焼き芋を売っていたときの笑顔はないー

「--お、、俺、、何か悪いことしたかな」
省吾が泣き笑い状態で、菜々美のほうを見るー

「今の時代に焼き芋の車って珍しいなって思って
 見に行って、そしたら、君みたいな子が
 お店をやってて、純粋にすごいなぁ、って思ってー
 最初は好きでもなかったけど、焼き芋を買っててー」

省吾は命乞いでもするかのように
必死に叫ぶー

「---ふふ」
菜々美が自虐的に笑うー

「---ほら、お前もどうせこの女目的!
 馬鹿どもはみんなそうだ!
 わしだって愛想を振りまいていたのに…

 この世はしょせん見た目なんだよ」

菜々美が怒り狂った様子で叫ぶー

そんな菜々美の叫びが聞こえていないのかー
パニックで必死なのか-
省吾はそのまま話をつづけたー

「でも、毎日食べているうちに
 純粋に焼き芋をおいしいと思い始めてー

 君の作る焼き芋が美味しいと思い始めてー

 昨日の夜も、遅くなっちゃったけど、
 家で君の焼き芋を食べたいなって思って…

 それなのに
 あんなことがーー…

 あんな光景見ちゃったら…
 聞くしかないんじゃんかよ…」

省吾は涙を流しながら言うー

「---…」
菜々美の表情が歪むー

「---……」
省吾は裏路地で悔しそうに涙を流すー

勝手に好きになっただけだけれどー
初恋の相手がー
あんなにおいしい焼き芋を作る人がーーー
こんなーー

「--焼き芋を売ってくれる君は
 本当に楽しそうだったーー

 何が起きているのか、俺は分からないけどー
 でも…
 俺は、君の焼き芋も、焼き芋を作って売っている
 君のこともーー
 好きだった」

省吾が吐き捨てるようにして言う-

「でも…でも…」

目の前にいるこの子はー
”誰かに何かをされて乗っ取られているー”
のかもしれないー
そして、昨日、この子に詰め寄っていた彼氏はーーー

「-----……期待に添えられなくて、
 ごめんね」

菜々美はそれだけ言うと、
省吾に背を向けた。

省吾に何もすることもなくー

「--…この子の彼氏ー
 この子に暴力ふるってたのー」

そう言うと、背を向けながら
菜々美は腕をまくってー
あざだらけの腕を見せたー

「--……ま、、、
 何を言っても言い訳…か」

菜々美はそれだけ言うと、
「わしは…私は、悪人だから」と
呟き、立ち去って行った。

最後にー
「焼き芋、おいしいと言ってくれてありがとうー」

と、言い残してー

・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日からー

焼き芋の移動販売の車は
いなくなってしまったー

どこか、別の場所に行ってしまったのだろうか-

親友の健太郎が笑う。

「--最近、芋喰ってねぇだろ」

100円ショップの干し芋を鞄から
取り出して省吾に手渡す健太郎。

「--はは…焼き芋じゃないんじゃんか」
省吾は、そう言いながらも
「ありがとな」と呟いたー。

あの子は何だったのかー
中から飛び出してきた男は何だったのかー

省吾は、それを知らないままー

けどー
「--…俺が関わることじゃないのかもな…」

そう呟くと省吾は
少しだけさみしそうに、干し芋を食べ始めたー

・・・・・・・・・・・・・・・・

「--なぁ、この子…元に戻せないか…
 わしはどうなってもいい…

 この子だけはーーー」

菜々美が土下座をしているー。

謎のスポットライトが反射するその場所でー

男が笑う。

「--おや…」
相手はー
焼き芋を売る男に、”人を皮にする力を授けた”男ー

「頼むー
 わしは間違っていたー…。
 この子の…この女の子の人生を、この子に返してあげたいー」

震えながら土下座する菜々美ー

省吾との出会いが、
菜々美を皮にした男のことを、
少しだけ、変えたのかもしれないー

光が反射してー
相手の男の顔は見えない。

男は静かに笑うと、静かに囁いた

「----いいでしょう」

ーーと。


おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

焼き芋の移動販売のお話でした~!

お読み下さりありがとうございました☆!

コメント

No title

お疲れ様でした。
最後には改心して
焼き芋の値段を多少上げてでも女の子のバイト雇うことを覚えましたね。

Re: No title

> お疲れ様でした。
> 最後には改心して
> 焼き芋の値段を多少上げてでも女の子のバイト雇うことを覚えましたね。

コメントありがとうございます~☆
皮にしていた子を雇うお話につながっていく…かもしれませんネ~笑
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プロフィール

無名

Author:無名
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