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<憑依>凶悪犯罪者・室井③~正義~ (完)

憑依薬を手に入れ、
好き放題を続ける凶悪犯罪者の室井。

多くの女性の幸せを壊し、
多くの人間を女性の手で殺めた室井。

その行く末はー
”正義”の弾丸が放たれるその瞬間ー。
”彼”は何を思うのかー。
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「……」
警察官、大室順二は家を見回した。

荒れ果てている自宅。

そして、同居していたはずの寧音の姿はない。

順二は唇を噛みしめた。

この状況が意味することは
一つ。


大切な彼女のーー
寧音が室井に憑依されたということ…。

テーブルに置いてあるブルーレイを
再生する。


そこには寧音の姿があった。

「順二~
 この映像を見てるってことは…
 もう分かってるよね~」

寧音がカメラに顔を近づけて
唇をなめまわす。

「わ・た・し、
 貴方の捕まえようとしている
 凶悪犯に
 乗っ取られちゃったぁ~♡」

楽しそうに言う寧音。

順二は、手を怒りで震わせた。

許さないー。

絶対、何があっても許さないー。

必ずこの手でーー
お前を叩き潰す。

「見て~」

テレビの中の寧音が楽しそうに言う。

「私たちが大事にしている
 ハムちゃん!」

ハムスターを尻尾から掴んで笑っている寧音。


寧音が欲しがって
毎日大切にしていたハムスター。


ーー彼女は笑いながらそれを引き裂いた。


「-----っ!!」
順二は目を逸らした。

「あははっ!
 どう~?
 今の寧音は何でもしちゃうよ~♪
 
 体も心も言いなりなんだもん!」


寧音が嬉しそうに言う。


そしてーー

「ーー東地区の第2ビルの屋上で
 待ってるからー。

 私の事が本当に好きなら…
 迎えに来てね!」

寧音は笑ったー。
いつもの”笑顔”でー。


さらに寧音は続けたー。

「順二が来るまでヒマだから~
 いっぱい私の体で遊んでるね!」

そう言うと、寧音は乱暴にカメラを蹴り飛ばし、
そこで映像が途切れた。


ふざけるな!

ふざけるな!!

ふざけるな!!!

順二の怒りが爆発した。

無残な姿になったハムスターを横目で見つめた順二は
そのまま家を飛び出した。


30分後。

彼は指定されたビルへやってきた。


仲間にも連絡を入れた。
同期の警官、山田と後輩の星恵が到着する。

「---大室…お前の彼女さんが?」
山田は青ざめた表情で言う

「--そんな…酷過ぎますよ」
後輩の女性警官、星恵が悲しそうにつぶやく。


「---俺、一人で行く。
 何かあったらすぐに無線で連絡する。
 そしたら屋上に来てくれー」

順二が言うと、二人の警官は頷いた。
順二も頷き返す。

「--お気をつけて」
後輩の星恵の言葉に、順二が笑みを浮かべると、
非常階段から屋上へと向かった。

”死の屋上へとー”


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「あっ…あっ・・・ あぁぁん・・・♡」

屋上へ向かう途中、上から喘ぎ声が
聞こえてきた。

いつも、優しい笑みを浮かべていた寧音ー。
最愛の彼女がこんなーーー



「室井ーーーーー!」

屋上に辿り着いた順二は叫んだ。


そこには、乱れきった格好で、
顔を赤く染めた寧音が自分の胸を触り
喘いでいた


「あっ…♡
 おっそいよぉ…
 もう、、寧音3回もいっちゃった… あは♡」

順二は挑発に乗らず、
冷静な表情で寧音に銃を向けた。


「--はは…撃てるの?あんたに私が!
 寧音、死んじゃうよ…?」

寧音が挑発的に言う。
だが、順二は銃を降ろさなかった。


「---寧音を解放しろ」
順二が冷たい声で言い放つ。

「-----…」
寧音がバカにしたような目で順二を見つめた。
その間も寧音は自分の愛液を指につけて
ペロペロと舐めている。


「私はむろ…」
寧音が口を開いたその時だった。

バン!

銃声が響き、寧音の足もとに着弾し、
寧音は顔色を変えた。

「--しゃべるな。
 寧音の”思考の書き換え”なんて絶対にさせない。
 何か余計な事を口走ってみろ?
 お前の頭、ぶちぬいてやる」

順二が怒りを込めて言い放つ。

「---ウフ…
 そんなに私のコトが好きなんだぁ~♡

 寧音、嬉しい♪」

寧音が無邪気にジャンプしながら
喜ぶ。

「---黙れって言ってんだろうが!」

順二は冷静さを失っていた。
対する、室井が憑依する寧音は笑っていた。

「なぁーーもう一度言うぜ?
 アンタ、”ルールに縛られて生きていて”楽しいのかい?」

寧音が突然男言葉で話し出す。

そして、”憑依薬”を手に持ち、笑う。

「--どうだよ?
 お前も俺と… いえ、寧音と一緒に…
 好き放題しない?
 あなたも、私のような楽しい人生を送ってみない?」

寧音が妖艶に笑った。

ーーー順二は揺らがなかった。

”お前のようなケダモノとは違う”


「---黙れ!」

バン!

順二の銃が火を噴いた。
そして、銃弾は寧音の肩を貫いた


「ひっ!?」
寧音が悲鳴を上げる。

「---俺は本気だぞ。室井。
 今すぐ彼女を解放しろ」

順二が銃を寧音に向けた。

寧音は蔑むような視線を順二に向けた。
優しい彼女から蔑まれる順二。
順二は今にも泣き叫びたい気分だった。

だがーーー
”優位”なのはこちらだ。

室井は死にたくはないはず。
必ず、寧音を解放するーー。


「----えへへ…」
寧音が笑う。自分の血を舐めながら。


室井には分かっていた。

どんなに威勢が良くても、
この男には”恋人を射殺することはできない”

追い詰めることはできても、
”殺すことはできない” とー。


「ばっかじゃないの」
寧音は笑いながら立ち上がった。

「動くな!」
順二が叫ぶ。
だが、寧音はお構いなしに順二に近づいた。


そして、順二に熱いキスをした。

「なっ…」

順二から唇を離すと寧音は笑った。

「順二♡」
寧音が近くで甘い声を出す

「貴方に私は殺せないでしょ?
 だって、私は貴方の大切な大切な
 彼女だもの」

寧音は耳元で色っぽくささやく。

「---ほ、本当に撃つぞ!」
順二が叫ぶ。

だがー
寧音は順二の頬を優しく包み込んだ。


「---あなたには無理。
 寧音は順二のコト、信じてるよーー」


「-----!!」

優しい寧音の顔ーー。
順二の心は揺らいだ。。。

そしてーーーー


「無能な警察官だな!」
突然、寧音が大声をあげて順二の銃を蹴り飛ばした。

そして、
順二を殴り倒すと、その手をハイヒールで踏みつけた

「ぐっ…」
順二が悔しそうに寧音を見上げる。

寧音は見下すような目で順二を見ていた。


ハイヒールで手をグリグリと地面に押し付ける

「---寧音だって本当はこんなことしたくないの!
 助けて!助けて順二!
 ねぇ、助けてよォ!」

寧音がハイヒールで手を踏みつけながら叫ぶ。

もちろんーー室井の演技なのはわかっている。


「---き…さまぁ!」
順二は叫ぶ。
だが、寧音は続けた

「ハムちゃん…
 私、大好きだったのに…
 自分の手で”殺させられちゃった”

 ひどい…本当に酷い…」

寧音が涙を流す


「--順二をこんなに傷つけたくない…
 こんなことしたくない…
 どうして、、私がこんな目に遭わなきゃいけないの…

 夜中のビルの屋上で、一人でエロいことさせられたり、
 家を無茶苦茶にさせられたり…

 私、こんなことしたくない!」

寧音が泣き叫ぶ。

順二は思わず叫んだ

「寧音!!俺は必ずお前をーー」
その言葉を聞いて、寧音は言う


「順二!助けて!お願い…」

そこまで言うと、寧音が爆笑し始めた


「っ…ぷぷ…あははははははははっ!

 この女だったら、
 今みたく言うんじゃないかなぁ~

 ぷはははははっ!
 馬鹿らしくて笑えるぜ!」

寧音が笑うー


さっきのも”全て室井の演技”そんなことは分かっている。


寧音は、順二の手を散々踏み終えると、
自分の服を乱暴にいじくりまわしながら言った

「寧音のーーご主人様はーー
 室井様です」

”思考”の書き換えーーー。

寧音が順二を見つめながら”思考を変えられていくー”



「私のご主人様はーーー」


「うああああああああ!ふざけるなぁ!」
順二が叫び、腰に持っていた”もう1丁の銃”で、
寧音に向けて発砲した。

銃弾は、寧音の腹部を貫いた。

「かっーーー!」
寧音は驚きの表情を浮かべてその場に倒れた。


「寧音!--」
順二が近付く。

だが、寧音は笑っていた


「助けて…
 お願い…順二……
 わたし、、、死にたくない」

寧音が涙を流すーーー


”室井”はほくそ笑んだ。

この女はもうダメだー。
だが、まだすぐには死なない。
もう少しだけ、からかってやるー。

”死の直前”に抜け出せばそれで良い。
そしてー、
この男は、寧音にトドメを刺すことなんて出来ない。
絶対に!


「…寧音」
順二が戸惑う。

「--私・・・順二と結婚して
 幸せな過程を作りたいの……

 お願い…助けて……
 順二、、、私、、あなたと結婚したい……」

寧音の頬を涙が伝う。


「---…」
順二は目をつぶり、涙を流した。


分かっているーー。
これも室井のおふざけだーーー。


寧音の優しい顔が浮かぶー。

だが同時に、犠牲になった人々の顔が浮かぶ。

女子高生の梨音ー。
先輩警官の大和田ー。
そして牧警視正ー。


”これ以上、犠牲を増やしてはならない”

牧警視正の言葉が脳裏に浮かんだ。


そして、順二は目を開いた

「ごめんーー。
 寧音ーーー。
 本当に、、ごめん」


そう言うと、順二は引き金に手をかけた


「-----!!!」
まさかコイツーーー!
寧音の中の室井が初めて”恐怖”を感じた。

そしてーーー
抜け出す前にーーー。


バン!


順二の銃弾は寧音の頭部を貫いた。


順二は銃を投げ捨て、寧音の前で
うずくまった。

「寧音ー。寧音…
 本当に……すまない…俺は」

順二はいつまでも、
いつまでも涙を流し続けた。

「--ーー寧音…」
順二は寧音に黙とうを捧げた。

彼女はもう、戻らない。
だがーー、
これで良かったんだ。

順二は自分にそう言い聞かせた。

あのままじゃ、寧音は変えられてしまい、
室井にも逃げられてしまうところだった。

「俺だ…
 今すぐ来てくれ」

順二が下で待つ仲間を呼ぶ。


5分後、後輩の星恵が上がってきた。

「---先輩?」
順二の悲しそうな背中を見て
星恵が心配そうに声を出した。


「----室井は、死んだ…」
順二が疲れ切った表情で、
彼女の寧音の死体を示した


「……大室さん…」
順二の名前を読んだ、星恵は順二の心中を察した。
室井をころすためとは言え、
本当につらかっただろう…。


「---彼女さんのご遺体…
 丁重に弔いましょう…」

星恵が悲しそうに言う。
順二は悲しそうにうなずいた。


とりあえず、応援を呼ぶことにし、
順二と星恵は非常階段から下に降りていく。

同僚の山田が待機している車で応援を呼ぶのだ。


……寧音、ごめんな。

順二は心の中で何度も、
そう呟いた。

そして、車の扉を開き、
中にいる山田に「応援を」と言葉をかけた


「-----!?」
順二は目を見開いた。

運転席のハンドルにうつ伏せになっている山田の
様子を見て”異変”を感じる。

順二が、慌てて確認すると、
山田の額に穴が開いており、
山田は既に息絶えていたーーー


「こ、、、これはーー」

順二が驚きの声をあげる


「----先輩!」
背後から星恵の声がしたー


順二が振り返るー。
そしてーーー
一発の銃声と共に、彼の意識は永遠の眠りについた。


ーーーー。

「バカな先輩♪」
星恵が笑う。


警察官の持つ”正義”の銃が、
警官を射殺ー。
なんとも、皮肉なことだ、と星恵は笑う。


「---誰が、体が死んだら中に居る人間も
 死ぬって言いましたぁ~?

 えへへ!それって、
 牧警視正の勝手な推理ですよねぇ~♪」

星恵が笑う。

そして、順二の死体を踏みつけて言った

「わたし~
 これからもいっぱい、
 可愛い女性で遊ばせてもらいますから。」


そう言うと、星恵は順二の死体に唾を
吐き捨てて、そのままパトカーを放置して夜の闇に姿を消したーーー。


その後の
凶悪犯罪者・室井の足取りを知るものは居ない。


だがー、
世の中では、
定期的に女性による残虐な事件や異様な事件が、
起きるようになっていたーー。


おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

凶悪犯罪者・室井 完結です!
室井を逮捕してエンド…なんて誰も言ってませんよ?(鬼)

いつか続きがあるかもしれませんけれど…

それにしても、
凶悪犯罪者が憑依能力を手に入れたら、
それこそ世の終わりですね・・・。

お読みくださりありがとうございました~


コメント

No title

ダークで面白かったです

No title

そんな気はしてた( ˘ω˘ )
悪霊には塩投げつけないと

No title

まさか打ち殺せるとは…
でもまあ死なないですよね

Re: No title

> ダークで面白かったです

ありがとうございます^^
何の救いも無いダークなお話しになってしまいました(笑)

Re: No title

> そんな気はしてた( ˘ω˘ )
> 悪霊には塩投げつけないと

恐ろしい悪霊…
塩で彼を退治できれば良いですが…(汗)

Re: No title

> まさか打ち殺せるとは…
> でもまあ死なないですよね

彼なりに(先も考えた末の)苦渋の決断だったようですが、
無駄になってしまいました…

”体を殺せば中身もー”と発言した
警視正無能…?(汗)

No title

こういう悪霊は陰陽師に魂を滅却させましょう、
なお洗脳の所為で自分が悪霊だと思い込んでる人をスケープゴートにされ逃げられる模様

Re: No title

> こういう悪霊は陰陽師に魂を滅却させましょう、
> なお洗脳の所為で自分が悪霊だと思い込んでる人をスケープゴートにされ逃げられる模様

凶悪犯罪者の手の届くところに憑依薬を置いてはならない!
と、いうことですね^^

No title

恋人と後輩女刑事は活用してくれると信じてました! 心優しい女性ばかりが凶悪犯に乗っ取られていく容赦のない展開、最高に美味しかったです。

ところで、思考を書き換えられるということは「快楽殺人鬼そのものに変えてしまう」こともできたりするんでしょうか。

Re: No title

> 恋人と後輩女刑事は活用してくれると信じてました! 心優しい女性ばかりが凶悪犯に乗っ取られていく容赦のない展開、最高に美味しかったです。
>
> ところで、思考を書き換えられるということは「快楽殺人鬼そのものに変えてしまう」こともできたりするんでしょうか。

楽しんでいただけて何よりです!

憑依している間に快楽殺人鬼だと念じれば、
思考が塗り代わり、目を覚ます頃には憑依されていた女性は
第2の室井になっています。。
(実は、そういう描写も書こうとしていたのですが
 今回はナシになりました)
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Author:無名
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