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<MC>わるものをやっつける力②~なんで~(完)

わるものをやっつける力を手に入れたー

3年生の彼は、
洗脳の力で、”みんなのために”
わるものたちをやっつけていくー。
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”わるものをやっつける力”を手に入れた牧夫は、
自分の部屋のソフビ人形に向かって
話しかけていたー。

”よくやったね、牧夫くん
 きみも、立派なヒーローだ”
御面ライダーのソフビから声が聞こえて来るー

やっぱり、あれは夢じゃなかった!

「えへへ…」
嬉しそうにする牧夫。

ガシャン!
両親が喧嘩している音が1回から
聞こえて来るー

「ねぇ、御面ライダー…教えてよ
 どうして、僕のお父さんとお母さんは
 いつも喧嘩ばかりしているの?」

”うん…そうだね…気になるよね。
 それは…君のお父さんとお母さんが
 平和を、望んでいないからだ”

御面ライダーのソフビが言う。

「え…!じゃあ、僕のお父さんとお母さんはわるものなの!?」
牧夫が言うと、
御面ライダーのソフビは、こう答えた

”きみのわるものをやっつける力にはね、
 わるものを、変える力もあるんだ”

とー。

それを聞いた牧夫は、1階に向かうー

「牧夫!部屋にいなさい」
父親が言う。

「そうよ!これはわたしとお父さんの問題なの!」
母親が言うー。

「あらそっちゃだめだ!みんなで平和な世界を作るんだ!」
牧夫が叫ぶー

「な、なにを言ってるんだ?牧夫?」
父親が首をかしげる。

「ーーみんな、笑ってたほうが絶対にいいよ!」
牧夫はそう叫びながら、
母親と父親の方を見つめたー

「うっ」
「あっ…!」
父親と母親がビクンと震えるー

「-ーー仲直りして…!
 みんなとなかよしになって…!」
牧夫の言葉に、
父親と母親は、ぼーっとしたあとに頷いて、

「おとうさん、ごめんなさい」
「おれこそ、ごめんな」
と虚ろな目で呟いた。

そして、笑い合うふたりー。
洗脳されて、虚ろな目のまま笑っているふたりー。

牧夫は、それを見て満足そうに笑った。

「おとうさんとおかあさんが笑ってる…!
 ぼく、またいいことをしたんだ!」
牧夫は嬉しそうにそう叫んだー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー

学校に登校するー。
だが、授業は行われないー

昨日ー
いじめっ子の合田が自殺したからだー。

”自分をやっつけるんだ”
牧夫は、合田にそう命令したことを思い出す。

「---……」
クラスメイトたちは、2人立て続けに仲間が
死んだことに、心を痛め、
泣いている者もいたー。

「うっ…うっ…」
女子生徒の皆本も泣いている。
合田・細河と共に千佐江をいじめていた子だ。

「ーーなんで泣いてるの?」
牧夫が首を傾げながら皆本に話しかける。

「なんでって…?友達が…いなくなっちゃったから!」
皆本が泣きながら、牧夫の方を見る。

「-ともだち?ちがうよ、わるものをやっつけたんだよ!」
牧夫が笑うー

教室を見回す。

「ねぇ、なんでみんな泣いてるの?
 わるものをやっつけたのに!
 みんな?どうして?笑おうよ!
 みんなで楽しくー」

「--ねぇ!!!」

ーーー!

牧夫の言葉を遮って叫んだのは、
千佐江だったー。

「千佐江ちゃん…?」
牧夫が不思議そうな顔をする。

「友達が、友達がいなくなっちゃったのに
 どうして、牧夫くんは、そんなに笑ってられるの!?」
千佐江が言う。

自分をいじめていた”わるもの”を
友達ー?

牧夫には、まったく理解ができなかったー。

小さいころからヒーロー番組を見て育った牧夫は
”わるものはやっつけられるもの”と、強く信じ込んでいたー。
番組では、ヒーローがわるものをやっつけているー
そして、子供たちが笑顔でお礼を言っているー。

「--僕は、千佐江ちゃんのために、悪者をやっつけただけだよ」
牧夫が笑顔で言う。

「ま、牧夫くんが合田くんと細河くんをやっつけたの…?」
千佐江が戸惑う。

「うん!これから皆本ちゃんもやっつけるよ!」
何の迷いもなくー
牧夫は笑顔で言う。

それを聞いていた皆本は、怯えた様子で牧夫の方を見る。
他のクラスの子たちも戸惑っているー。

「--あ!そうだ!」
牧夫が、クラス一の力持ちの子の方を見る。

「皆本ちゃんを、やっつけてよ!」
牧夫が言うー。
目を見つめるー。

「---やっつける…
 やっつける…」

まるで、ロボットの方に皆本の方に近づいていく
力持ちのクラスメイト。

まだ”洗脳”の力に不慣れな牧夫は
催眠のような状態にしかできないがー、
慣れれば、人を自由自在に、意のままに操ることもーー

「--え…」
皆本が、その子の方を見るー

力持ちのその子は、教室の机を掴むと、
そのまま皆本の頭にたたきつけた。

「ぎぇっ!?」
皆本が激しい音と共にその場に
崩れ落ちるー

血が流れているー

「やっつける!
 やっつける!」
力持ちの子が、椅子と別の机を
倒れている皆本にたたきつけるー

「--そうだ!わるものはやっつけるんだ!」
牧夫が叫ぶ。

「すごい!すごい!!すごい!!!」
牧夫が嬉しそうに興奮している。

「ちょ、、ちょっと!やめてよ!」
千佐江が叫ぶー。

「--やめる?どうして?」
牧夫が笑いながら首をかしげるー

「僕は、わるものをやっつけているんだよ。
 千佐江ちゃんも、、みんなも
 どうして笑ってくれないの…?」

不思議そうに言う牧夫。

みんながー
悲しそうな顔をしているー

みんなが、
怖がっているー

「---…どうして???」
牧夫は首をかしげている。
本気で、理解できていないー

「-わるもの…やっつけた…!やっつけたー!」
動かなくなった皆本を見つめながら
力持ちの児童が言う。

「--ほら!みんな!わらって!」
牧夫が嬉しそうに言うー

しかしー

パチン!

「---!」
牧夫が驚くー

千佐江が牧夫の頬を叩いたー

「え…!?」
牧夫は泣きそうになりながら千佐江の方を見る。

「-ーーううぅぅぅうう…」
牧夫を叩いた千佐江は泣いているー

「---え…」
牧夫は困り果てた表情を浮かべているー

なんでー?
どうしてー?
僕、千佐江ちゃんを助けるために
”わるもの”をやっつけたのにー

どうして、千佐江ちゃんは泣いているの?
どうしてー?

牧夫には、理解できなかったー。

「--千佐江ちゃん…」

そうだー。
僕が、千佐江ちゃんを笑わせてあげようー。
僕がーー

「千佐江ちゃん…笑って」

千佐江の目を見ながら牧夫が言う。

「え…」
涙目の千佐江の目がとろーんとしていく。

「ふふ…」
千佐江が笑い始めるー
周囲が唖然としている。

「ふふふふ…ははは…うふふふふふふふ」
楽しそうに笑う千佐江。

目からは涙をこぼしているー

「ほら、、みんなも笑って!」
牧夫が言う。

「わるものをやっつけたんだよ!みんなも、みんなも笑って!」
牧夫の言葉に、他のクラスメイトたちはすっかり
怯えていたー

先生が駆けつけるー

「皆本さん…!」
変わり果てた皆本の姿を見つけて
先生は唖然としているー。

「-----」
机を投げ飛ばした男子は
ぼーっとしている。

”わるものをやっつけろ”と洗脳された彼は、
”わるもの”がいなくなったことで、
ぼーっと立ち尽くしていたー

「--先生、皆本ちゃんは、悪い子だから
 僕たちがやっつけたんだ!」
牧夫が言う。

「え…」
女性教師が戸惑いながら牧夫の方を見るー

牧夫と目が合うー。

「---あ…」
女性教師が立ち上がったー

そしてーーー

「ーーわるものは、やっつけなくちゃ!」
女性教師が叫ぶー

死んでいる皆本の身体を教室の窓の方に
持っていき、放り投げる。

「みんなも!わるものをやっつけるんだ!
 僕たちみんな、ヒーローになるんだ!」
牧夫が他のクラスメイトたちの目を見つめるー

「わるものをやっつける!」
「わるものをやっつける!」
「わるものをやっつける!」

・・・・・・・・・・・・

牧夫はー
ヒーローになったー

次々と学校の、近所のーー
あらゆるわるものをやっつけていくー

この力があれば、
僕はヒーローになれる。

わるいやつらをやっつけることができるー。

僕も、御面ライダーみたいなヒーローになったんだ!

牧夫は、学校に行くこともやめて、
ヒーローとして街を歩きまわったー

喧嘩をしている人を見つけてはー
牧夫は”やっつけた”

わるものをどんどんやっつけていくーーー。

「--千佐江ちゃん…もっと笑って!」
牧夫が一緒に歩いていた千佐江の目を見ながら言う。

「うん…!うふふふふふ…ふふふふふふふふふふ!」
千佐江が楽しそうに笑う。

”洗脳”の力にも慣れてきた牧夫ー。
千佐江は最初のように虚ろな目ではなく、
イキイキと笑っていたー

牧夫がいちいち命令しなくても
牧夫の思い通りに、千佐江は動くー

「-千佐江ちゃんは、僕が守るよ」

「うん!悪い奴らを、やっつけて!」

千佐江からの言葉に、牧夫は嬉しそうに頷くと、
わるものをどんどんやっつけていくー。

”僕は、正義の味方なんだ”
牧夫は、わるいやつらは、やっつけられて当然だと考えたー。

路上で絡んできた不良を洗脳して、車に飛び込みさせたー。
酔っぱらって絡んでくるおじさんを、千佐江にやっつけさせた。
店で騒いでいた男を、店員さんにやっつけさせたー

「わるものは、やっつける!」
牧夫は、自信をつけたー

”僕は、つよい”

とー。

だが、ある日ー。

学校から出てきた牧夫を、
パトカーが囲んだ。

警察が、子供相手に銃を構えているー

「動くな!」

牧夫の暴走は、
やがて、事件沙汰になっていたー
”次々と変死する住人”
”次々と凶行に走る住人”

「---動くな!手をあげろ!」

”超能力のようなものを使って人を操る”

警察に入った情報だー。

警察官たちは、警戒しながら
牧夫を確保しようとする。

「--ちょっと、警察署でお話を聞けるかな?」
警察官の一人が、牧夫の方に近づいてくるー

「え??なんで?」
牧夫は首をかしげる。

「僕は、わるものをやっつけてるだけだよ??」
幼い牧夫には、理解ができないー

わるものをやっつけているだけなのに、
どうして、こんなーーー?

「--僕は、正義の味方だよ?」
牧夫が首をかしげるー

「--牧夫くん!」
千佐江が牧夫を守りにやってくるー
他のクラスメイトたちもー。

警察官たちが唖然とするー

”洗脳”かー?
何が起きているー?

警戒する警察官たちー。

「そうなんだ…警察も…
 わるものを守ろうとするんだ…!」
牧夫が絶望の表情で言う。

「わるものをやっつけろ!」
「わるものをやっつけろ!」
牧夫が、洗脳したみんなに向かって叫ぶー

「--牧夫くん…だったな?
 今の君がしてることは正義なんかじゃない!
 君が、、君がわるものになってるぞ!」
警察官が叫ぶー。

「僕がわるもの?」
心底”わからない”という表情を浮かべる男の子ー…
そんな感じの牧夫が言う。

「え?なんで?ぼく、わるもの?なんで?」
戸惑っている牧夫。

僕は正義だ。
わるいことをするやつらがわるいんだ。

「--わるものを…」
千佐江が牧夫の背後から近づいてきてー

ガン!!

牧夫の頭をランドセルで思いきり叩いた。

「ぐえっ!?!?
 ち、、千佐江ちゃ…」

他のクラスメイトたちも、牧夫に襲い掛かる。

「わるものをやっつけろ!」
「わるものをやっつけろ!!」
容赦なく牧夫に殴る、蹴るの暴行を加えるクラスメイトたちー

警察官たちが唖然としながら叫ぶ

「や、やめなさい!!」

とー。

だがーー
牧夫は”やっつけられて”しまったー

”わるものをやっつけろ”
そう、洗脳していた牧夫ー

皮肉にも、力に溺れて暴走した牧夫自身が
”わるもの”になってしまったことで、
”わるものをやっつけろ”と洗脳されていた
千佐江たちは、
”わるもの”=”牧夫”をやっつけてしまったのだーー

「あ、、あれ」
血がついた手を見ながら千佐江が正気を取り戻す。

他の、みんなもーー

「きゃああああああああああああ!!」
千佐江が、悲鳴を上げたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・

”あ~~あ”

純粋な子供は、壊れやすい。
牧夫くんも、壊れてしまった。

牧夫くんにとっては、
わるものをやっつけているだけだったのにー

牧夫の家にあった、御面ライダーのソフビが並ぶ
不気味な家のような場所ー

男は静かにほほ笑むー

これは
”善意の暴走”の実験ー

無線機を仕込んだ御面ライダーのソフビを通じて
子供たちに語り掛けて、
そして、実験により生み出された洗脳の力を授けるー。

無垢な少年少女が、
力を手に入れたとき、どうなるのかー。

”さて、次はー”

男はほほ笑んだ-。

また、次の実験をしようー
次は、恋する少女に”愛を叶える力”として
この洗脳の力を授けようー

その子が、どうなるのかー
幼い少年少女が力を手に入れるとどうなるのかー

純粋故の、暴走ー

俺は、それを、みたいー。


謎の男は、静かにほほ笑んだー。


おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

小さいころに、人を思い通りにできる力を
手に入れてしまったら…?

やっぱり、暴走しちゃうかも…?ですネ~!

お読み下さりありがとうございました~!

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無名

Author:無名
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