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<憑依>ボーリングポゼッション①~憑依~

ボーリング場で
ボーリングを楽しむ男女4人ー。

そこに”憑依”の影が迫っていたー
--------------------

「--きゃあああああ!」
活発そうなポニーテールの女子が
悲鳴を上げているー。

投げた球は、左に流れて、
ピンを一つも倒すことができないまま、吸い込まれていくー

「ははは、残念だったな美代(みよ)~」
彼氏の啓介(けいすけ)が笑いながら美代を出迎えるー。

それを見ていた
眼鏡男子の遼太郎(りょうたろう)と、
大人しそうな華奢な女子・優海(ゆうみ)が苦笑いしているー。

今日は休日を利用して
同じ大学に通う男女4人が
ボーリング場に遊びに来ていた。

「ーーーよ~し、俺が見本を見せてやる!」
美代の彼氏・啓介が、
マイボールを手に、
ボーリングの球を威勢よく投げるー。

しかしー
美代と同じように、左に逸れて、
1ピンも倒すことができなかったー

2回目の投球でも2ピン倒せただけー

「なんだ~だめじゃん!」
美代が笑う。

「う、、た、、たまたま調子悪くてさ」
啓介が苦笑いしながら言う。

「--啓介はいつも口だけだからな~」
眼鏡男子の遼太郎が
眼鏡をいじりながら言う。

スコア表示は啓介・美代・優海の3人分だけー
遼太郎は、一緒に来ているものの、
1ゲーム目で疲れ果てて、
2ゲーム目は参加していないー。

「うるせ~!お前なんて1ゲームで
 ギブアップだろ~?」
啓介が言うと、遼太郎は
「僕は、1ゲームに全力をかけてるんだよ」
と、1ゲーム目のスコア表を指さしたー

1ゲーム目は、遼太郎が圧勝しているー。

「--勝ち逃げ野郎め~!」
啓介が遼太郎にちょっかいを出しているのを
優海と美代は苦笑いしながら見つめているー。

賑やかな4人ー


そんな4人の2つとなりで、
ボーリングを一人楽しむ男がいたー。

戸部 五郎(とべ ごろう)。

彼はー
一匹狼だったー。

ボーリングとは、心の戦い。
球を持ちー
呼吸を整えてー

そして、いつも投げ飛ばされて、
ボーリングのピンに激突させられている
ボールに感謝しながら、
それを投げるー

ボーリングの球を投げ終えた彼は、
静かにお辞儀をすると、
そのままストライクを叩きだしたー

「----」
五郎が、2つ隣の大学生たちを見つめるー

「---ーーー」
ゴゴゴゴゴゴ、と負のオーラを
爆発させながら、五郎は、大学生たちが
ボーリングを楽しむ様子をじーっと見つめるー。

4人の大学生たちは、
別にマナーが悪いわけではない。
ごく普通にボーリングを楽しんでいる
どこにでもいるような大学生グループだ。

だがー。
生まれてからずっと孤高に生きてきた五郎に
とっては、腹立たしいことこの上なかった。

小学校の頃、
”友達100人できるかな”などと言っている
先生やクラスメイトたちに
”友達なんていらない”と叫んだことから
五郎の孤高の旅は始まったー。

クラスの卒業写真の時に、
五郎はトイレに行っていたのだが
最後まで誰にも気づかれなかったー。

中学時代ー
友達は誰一人としていなかった。
2年生の時にはなぜか転入生だと思われて
周囲が賑わっていたこともある。

高校時代ー
バレンタインデーにチョコを貰ったことがある。
と、言っても本命チョコではない。
クラス全員に義理チョコを配っている子が
いただけの話だー。
その子は全員にメモ書きをしていたが、
そこに”名前が分からなくてごめんね”などと
書かれていたー

大学時代ー。
ついに、彼は完全に空気になったー
同級生だけではなく、教授や大学関係者からも
”誰?”という扱いをされるようになったー

社会人になってからはー
五郎は、誰ともかかわらないで済む仕事を選んだー
そして、今もー。

「---」
ボーリングの球を投げ終えた彼は
静かにお辞儀をしたー。

球への感謝を込めてー

「---なんだあれ?」

「---!」
五郎の耳に、大学生グループの一人・啓介が
呟いた言葉が耳に入ってしまった。

「こら!そういうこと言わないの」
彼女の美代が、啓介を注意すると
啓介は「あ、ごめん」とすぐに美代に
頭を下げたー

「-----」
五郎は、無表情だったー。

だがーー
”怒り”が爆発していたー

”なんだあれ?”だとー?
貴様らは、ボーリングの球に感謝しているのかー?
ボーリングの球が投げられて当たり前だと思っていないか?

人にやられてイヤなことをしてはいけない、と
親に教わらなかったのかー?

五郎の中で、思考が暴走するー。

彼は、リア充も大嫌いだったー。
群れることでしか、騒ぐことができない、
つまらない人生を送っているやつらー。

それが、五郎の中での、リア充に対する印象だ。

そしてー
彼は、椅子に座ると、
ボーリングをやめて、
そのまま眠りについたー。

ボーリングの球は、毎日毎日
人々に投げられ続けて
痛みに耐えながら、人間に娯楽を
提供してくれているー。

そんな、辛い思いをしている球たちに、
せめて、感謝の気持ちを忘れてはならない
五郎は、そう思っていたー

”憑依”

五郎は、娯楽への感謝の末に、
憑依能力を手に入れていたー

細かいことはよく分からない。

1年前のある日、
夢を見た五郎は、
その夢の中で、憑依能力を授かったのだー

五郎は、小さなことからずっとボーリングだけが友達だった。
そのボーリング場で、ヘラヘラと笑いながら、
ボーリングに対する感謝の気持ちも忘れているやつらを
とても、腹が立つー。

まるで、恋人が殴られているのを、目の前で見ているかのような、
そんな気持ちになる。

「許されない…」
五郎はそう呟くと”憑依”するために、静かに目を閉じた。

・・・・・・・・・・・・・

「わ、、わたしの番~」
大人しそうな優海が、ボーリングの球を投げるー

そこそこのピンが倒れて、
2回目の投球でスペアを記録する。

「やった♪」
優海が嬉しそうに控えめな手ぶりでポーズをするー。

「次はわたしね」
美代が、ポニーテールをなびかせながら
ボールを手にするー

その時だったー

「うっ…」
美代がビクンと震えて
ボーリングの球を床に落とすー

床に落とした球が、
音を立てて転がっていくー

「美代?大丈夫か?」
彼氏の啓介が言うと、
美代は「ふふ…」と笑いながら顔をあげたー

「ボーリングの球ってさ…
 可哀そうだよね?」
美代が突然、他の3人の方を見ながら言う。

「え…?」
「は?」
遼太郎と啓介が首をかしげる。

「だってさ、そう思わない?
 毎日毎日投げられて
 痛い痛いって悲鳴をあげてる」

美代の言葉に、
啓介は「はは!何言ってるんだよ美代~」と笑う。

「--」
美代が啓介の方を無言で睨むー

「お、、、…?え?」
啓介は戸惑う。

「可哀そうだと思わないのか!」
美代が大声で叫ぶ。

「--お、、おい、何言ってるんだよ?美代!」
美代に近づいていく啓介。

遼太郎と優海が、不思議そうに美代の
方を見ているー

「ヘラヘラヘラヘラ笑いながら
 ボールを投げやがって」
美代が怒りに震えながら呟くー

様子がおかしいー。

「--わたしが、本当のボーリングを教えてあげる」
そう言うと、五郎に憑依された美代が、
ボールを手に掴むー

美代は笑うことなく
静かに目を閉じて、
深呼吸してからー
”ありがとうございます”と呟いてー
それから、ボールを投げたー

”ストライク”

美代は、静かにその場でお辞儀をしたー

「---…ぷっ…」
啓介が笑う。

「はははははは!
 もしかして…」
啓介はそこまで言うと小声で
「あのおっさんの真似してるの?」と呟くー

その言葉に、美代が舌打ちをするー

啓介は、2つ隣の五郎の様子を横目で見る。
居眠りしているように見えるー

まさか、美代がその五郎に憑依されているとは知らずに
啓介が笑う。

「--ボーリングってそんなもんじゃないだろ?
 もっと気軽に楽しもうぜ!」
啓介が美代の肩を叩くと、
突然、美代が啓介の腕を力強く握りしめたー

「え…?」
驚く啓介。

「--球への感謝の気持ちは?」
美代が怒りの声で呟く。

「は???な、、何言ってんの!?意味がわからないけど!」
啓介が慌てて叫ぶ。

遼太郎が「美代ちゃん、落ち着けよ」と呟くー

優海も「ど、どうしたの急に?」と戸惑っているー

「---球への感謝の気持ちは?」
美代がもう一度呟く。

「そ、そんなもんねぇよ」
啓介が必死に呟くと、
美代は「ふ~ん…」と呟いた。

「--ど、どうしちまったんだよ!?美代!?」
啓介は困り果てた表情を浮かべているー

美代の豹変の理由が分からないー

「--ならお前がボールの気持ちになってみろよ!」
大声で叫んだ美代は、
信じられない行動に出た。

眼鏡男子の遼太郎と
華奢な女子・優海も、驚くー。

美代が、彼氏の啓介を突き飛ばし、
突き飛ばされた啓介が、足を滑らせてボーリングのレーンを
球のように転がっていくー

「うわあああああああああ!」

奥のピンに激突して、
そのまま痛そうに悲鳴をあげる啓介。

「ちょ!?何やってるんだよ?」
眼鏡男子の遼太郎が戸惑いながら
立ち上がるー。

「--ふん。ボーリングの球の味わってる痛みを
 思い知ったか!」
美代が叫ぶ。

「この女にも思い知らせてやるか」
そう言うと、美代はポニーテールの髪を崩して、
髪がぼさぼさになるまで掻きむしるー

異様な雰囲気に他の二人は言葉を失っているー。

ボーリング場のスタッフたちが、
騒ぎを聞きつけて駆けつけてくる。

「ど、どうかしましたか?」
スタッフの女性の言葉に、
眼鏡男子の遼太郎は、
「な、、なんか、あの子が彼氏を急に突き飛ばして」、と
戸惑いながら報告したー。

「--え、、」
戸惑う女性スタッフ。

「--こいつらが、軽い気持ちでボーリングと
 向き合ってるからいけないんだよ」
美代はそう言いながら、
「今、この女にも思い知らせてやるぜ!」と叫ぶと、
突然、服を脱ぎ始めたー

「--な、、何してるの!?」
優海が叫ぶー。

「--ボーリングの球が服を着てるのか?え??」
服を脱ぎ捨てた美代が、他の2人とスタッフに向かって叫ぶ。

「あ…あの…落ち着いてください!」
スタッフが叫ぶ。

だが、美代は「これがボーリングの球の痛みだ~!」と
叫ぶと、裸のまま、ボーリングのピンの方に向かって走り、
途中で滑って転んで、そのままの態勢で、ピンの方に
激突したー

先に激突していた彼氏の啓介にも、激突するー

画面には”スペア”のマークが表示されている。

啓介と美代でスペアを取ったようだー。

「--ど、、どうしちゃったの急に…?」
優海が戸惑っているー。

「---さ…さぁ」
眼鏡男子の遼太郎も言葉を失っていたー

啓介がうめき声をあげているー
美代は、倒れたピンの側でピクピクと痙攣しているー。

「--……だ、、大丈夫かよ…?」
眼鏡男子の遼太郎が、倒れている啓介と美代の方に、
転倒しないように、慎重に歩きながら近づいていくー


「---!」

美代は、白目を剥いた状態で痙攣していたー。

「い、、いったい…?」
遼太郎が戸惑っていると、
次の瞬間、頭にこれまでに感じたことのない強い衝撃を感じたー


②へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

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何故か唐突にボーリング場のお話デス…!

続きはまた明日デス~!


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