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<憑依>潜ム者②~不安~

3日以内に、
憑依されている人間を見つけ出して、
その命を奪うことー。

それが”かくれんぼ”の勝利条件ー。

けれどー
親友、幼馴染、後輩、3人ともー
彼女にとっては大事な存在ー
命を奪うことなど、できないー。
----------------------

「--血液型はA型、好きな食べ物はデザートで、
 嫌いな食べ物はピーマン、ナス、にんじん、かぼちゃ、あとほうれん草とか、そういうのも!」

後輩の茜がツインテールを揺らしながら
そう答えるー

「---ありがとう」
真桜が呟く。

親友・由紀菜の提案で、
それぞれの個人情報を言ってもらおうよ、ということになり、
4人はそれを言い合っていた。

もしも、男に憑依されている人間がいるのであれば、
いくらその本人のフリをしても、細かいことまでは
答えられないだろうー

と。

おかしなことを言っていれば他の3人のうちの誰かが
気付くだろう、と。

けれどー

「--う~ん…」
真桜は頭を抱えた。

「--みんな、おかしなところはないよね」
真桜が言うと、
幼馴染の彩智が「うん…」と答えた。

誰一人として、
おかしなことは言っていないー

本人、そして本人と親しい人間でなければ
知らないはずの個人情報をペラペラと喋って見せた。

”第3者”が、事前にストーカー並みに調べたとしても
ここまで知ることは困難だろう。

「ってか、誰も憑依されてないんじゃない?」
親友・由紀菜がうんざりした様子で言う。

「う~ん…でも確かにそう言ってたし」
真桜が戸惑いながら言う。

だがー男は”かくれんぼ”と言っていた。
確かに、男が誰かに憑依しているとは限らない。
本当のことを言っているとは限らないのだー。

真桜は、”本当にここから逃がしてもらえるのかな”と
不安になったものの、
それでも今は、男の言う通りにするしかなかった。

この、ごく普通の一軒家のような建物の外には、
宇宙空間のようなところが広がっていて
外に逃げ出せるとは思えない。

「---記憶を、読めるのかな…?」
幼馴染で大人しい彩智が呟く。

「え?まっさか~!」
後輩の茜が笑う。

だがー親友の由紀菜と真桜は、不安そうな表情を浮かべたー。

もしも、誰かの身体を乗っ取って、
”その身体の記憶を読めるとしたら”

そしたらー
さっき、質問したことは無意味だし、
行動も、”いつも通り”を振舞うことはたやすいー。

「--まだ時間はあるから
 とりあえず、まずは家の中全体を探してみよっか」
真桜は、暗い雰囲気を払拭するためにそう呟くー

親友・由紀菜の言う通り、”憑依”が
カモフラージュの可能性もあるし、
この家の中に何か手掛かりがあるかもしれない。

普通の家と同じぐらいの広さで
別に豪邸でもなんでもないから、
隅々まで探しても1時間はかからないだろう。

「---広くはないけど、一応二人一組で行動したほうが良くない?」
親友・由紀菜が言う。

真桜は、考えるー。
確かに4人バラバラに行動して、一人ずつ襲われたりしたらまずいー

だがー
2:2になる、ということは、
もしも、あの男が憑依してるなら、事実上は、2:1だー。
しかも”憑依されてる子”と組んでしまった人間の身に
危険が生じるー

それでもーーー
バラバラよりは良いかもしれないー。

「--じゃあ、わたしは茜ちゃんと」
真桜は、後輩の茜と組むことにしたー

と、いうのも、茜だけ1年生で
真桜の親友・由紀菜や、真桜の幼馴染・彩智とは
あんまり面識がなかったからだ。

「やった~!先輩といっしょ~!」
真桜に抱き着く茜。

「なんかその子、かわいいね~」
親友・由紀菜がそう呟きながら微笑ましく
真桜たちの方を見るー

由紀菜は、大人しい彩智に声をかけると
「いざとなったらわたしが守ってあげるから!」と頼もしい雰囲気で声をかけたー

「ありがとう」
彩智が嬉しそうに言う。

1階と2階に分かれて、
”男”を探す4人ー

男が、本当に誰かに憑依しているのかは分からない。
もしかしたら、どこかに隠れているかもしれないー

それに、隠れていなかったとしても
何か手掛かりがあるかもしれない

「--先輩~!扉が2つ~!」
2階に上がると、さっき説明を受けた”僕の部屋”と書かれた扉と
何も書かれていない扉があったー。

「--そっちは、さっきわたしが、説明を受けた部屋ね…」
真桜が言う。

もう一つの扉ー

それを、茜をうしろに守るようにして下げると、
真桜はゆっくり開いた。

その先も小さな廊下で、3つの扉が並んでいたー

真桜は、順番に茜と共に扉を開けていくー

ひとつはーー
トイレ。ごく普通のトイレだ。
便器の中にでも入っていない限り、人間が隠れる場所はないし、
トイレの蓋は開いていたー

もうひとつはー
物置だろうか。
ここは、隠れるとしたら最適な場所で厄介そうだー

そして、最後の部屋は
寝室ーー
恐らく、大人が寝ている部屋ー
たぶん、この家の母親・父親が寝ていた部屋に見えるー。

”あの男は誰なんだろう”
真桜は、そんな風に思う。
この家の主だろうかー
それとも全く関係ない男なのだろうかー。

この家の部屋の構成を見る限りー
3人家族に思えるー

父と母と、そして息子ー。

”父”か”息子”のどちらかだろうか。

けれどー
そんなことを知っても、意味がないー

まずはとにかくー

「------」
茜は、先輩である真桜を見つめながら
笑みを浮かべていたー

「--!」
それに気づく真桜。
一瞬、本能的に身の危険を感じた。

「--わ!そんなにわたしの方を見つめて、
 どうしたんですか~~?」
茜がニヤニヤしながら言う。

「--え、、あ、、うん。なんでニヤニヤしてるのかなぁ~って」
真桜が苦笑いしながら言うと、
茜は、「一生懸命な先輩、なんだかかっこいいなぁ~って思っちゃって」と
照れ臭そうに言った。

「何よそれ~」
真桜は苦笑いしながら、物置の中を調べるー

2階の探索は続くー
だが、男が隠れている様子はなかったー

30分が経過したー

”収穫なし”
真桜は、そう判断して、後輩の茜と共に1階に戻るー

親友・由紀菜と
幼馴染・彩智も無事だったー

1階には、トイレ、お風呂、真桜たちが目覚めたリビング、
洗面所、玄関、それとーーー

由紀菜が呟く。

「--その部屋が、問題なのよね」
とー

由紀菜に案内されて
真桜たちが由紀菜が見つけた”問題の部屋”に向かうー

「---!!」
その部屋に入って、真桜は思わず少し声をあげたー

そこにはーー
”武器”が大量に置かれていたのだー

剣ー
槍ー
銃ー
鎌ー
鎖分銅ー

あらゆるものが、そこにはあった。

そしてー
剣を持つ甲冑が置かれていて、
そこに、時間んがデジタル表示されていたー

その時間はーー

「これ……わたしたちの残り時間ってことかな…?」
気弱な幼馴染の彩智が言う。

甲冑の時間表示は、
2: 17: 34 : 22 と表示されている。

「22」の部分は、21、20、19と減っていき、
それが0になったタイミングで、22だった部分は59になり、
そして、34だった部分が33になる。

これはー

「--あと、2日と17時間33分55秒…」
今表示されている数字をそう読み上げた真桜ー

「--そう。わたしもそう思う」
親友の由紀菜はそう呟いたー

これはー
”GAME OVER”までの時間を示しているー

ゲームオーバーになったら、全員 死ぬー

男が言っていた言葉を思い出す。

「これ、動き出したりしないよね?」
彩智の言葉に
真桜は嫌な予感を感じるー

残り時間が無くなった時、この甲冑が動き出して
その剣でー。

「--ここの武器  なにに使うのかな~!?」
ツインテールの後輩・茜が言う。

「---憑依された子を、殺すためー… かな?」
真桜が深刻な表情で呟くー

それしか考えられないー
男は、ここにある武器で、”憑依された子を殺せ”と言っているのだー。

だがー
そんなことできないー

”その誰か”が、もしも間違いだったらー?
無駄に命を奪うことになるー

そしてー
”もし正解”でもー
その”憑依された子”は助からないー

「--みんな」
真桜が言う。

「この部屋の武器は、絶対使わないー」
真桜が呟く。

「--みんなで必ず、生きて帰ろ!」
真桜が言うと、
他の3人は頷いたー。

リビングを拠点にし、
定期的に2人一組で、2階や他の部屋を調査する4人ー

だが、状況は変わらないー

「-お風呂は普通に入れるみたいね」
由紀菜がそう呟くー

1日目が終わりそうだ。
正直、汗もかいたし、お風呂に入りたいー

「---そうね」
由紀菜の提案に真桜も納得し、
4人はそれぞれお風呂に入ることになったー

安全のため、お風呂にも二人一組で入るー

「やった~!先輩とおふろ~!」
茜は、真桜とのお風呂に興奮しながら
真桜の髪を触ったり、胸を触ったりしているー

真桜は「ちょっと~!」と苦笑いしながらも
茜のことを微笑ましく思うー

こんな状況でも、元気だなぁ~

とー。


一方ー

「--どこ行くの?」
リビングで待機していた由紀菜が言うと、
大人しい彩智は「ちょっと、トイレ」と
そのままリビングから出たー

リビングを出ると、彩智は、トイレには向かわずー
武器だらけの部屋に向かうー

そして、彩智は、武器を手にするー

「-----」
武器を手にした彩智は、一人で
何かをブツブツと呟いているー

そしてー
少しだけ笑みを浮かべたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「--ふ~」
お風呂を終えた真桜ー

後輩の茜は、先輩の真桜とお風呂に
入ることができて、とても嬉しそうだった。

「先輩の身体~!
 ふふふふ~
 ふふふふふふ~」
先輩である真桜の身体が予想以上に
スタイルが良かったので、茜は
とてもニヤニヤしていたー

「ちょっと~!そんなにニヤニヤしないで~!」
真桜は、服を着ながら
茜にそう呟くー

雑談しながら、部屋に戻るー。
今度は幼馴染・彩智と、親友・由紀菜の番ー。
二人がお風呂に向かって行くー

”なんだか、4人でお泊りしているみたい”
真桜は、一瞬そんな風に思った。

そんな状況ではないのにー。

最悪の場合、全員が命を落とすかもしれないー

誰かが憑依されているというのは、本当かもしれないー。

”4人全員で脱出する”
そんなことができるのだろうかー。

憑依されている誰かひとりを見つけ出してー、
その人間を殺さない限り、男が、出てこないのだとしたらー…

「----」
真桜は武器が置かれている部屋の時間の刻まれた甲冑を見つめるー

甲冑に刻まれたタイムリミットは
刻々と減っているー

「大丈夫…まだ、大丈夫」
真桜は、そう呟くと、部屋に戻った。

茜が「せんぱ~い!」とのんきに
部屋の中にあった、おいしそうなデザートの話をしている。

冷蔵庫には、たくさんの食材が入っていた。
”毒は含まれていない 安心しなよ!”と
メモ書きが最初から貼られていて、
真桜が毒見をしたが、確かに、大丈夫そうだったため、
4人は自由にこの中の食材を口にしているー。

3日間飲まず食わずでは、思考能力も奪われてしまうー

「--こういう状況じゃなきゃ、結構楽しいんだけどねぇ~」
親友の由紀菜がお風呂から戻ってきて呟く。

「----」
幼馴染の彩智も、お風呂から戻ってきたー

夜もー
”念のため”順番に寝ることにするー。

ここで、由紀菜の提案により、2人一組を交換することになったー

由紀菜が言うには
「--他の組み合わせになることで気づくこともあるかもしれないから」
とのことだった。

例えば、AがBの異変に気づけなくても、
CならBの異変に気付けるかもしれないー

そういうことだった。

真桜が、幼馴染の彩智と、
由紀菜は、真桜の後輩・茜と一緒に組み、
二人ずつ眠るー

夜もー
何事もなく過ぎ去りー
2日目の朝がやってきたー


”おはよう”
家の中に声が響き渡る。

”あははは!昨日は、楽しかったねぇ、
 僕も、女子会、楽しませてもらったよ”

男の声ー。

4人は今、この場にいるー。

「---わたしたちは今、みんなここにいるわ!
 ということは、あなたは、誰にも憑依していない!」
真桜が叫ぶ。

誰かに憑依している、ということは、
4人がこの場にいる状態で、男が喋っているというのはー
”おかしい”のだー

”果たしてそうかな?”
男が笑うー

「----!」
真桜が表情を歪めるー

”玄関の外の、宇宙空間、見ただろう?
 ここは”僕”の世界だー
 つまり、僕には、なんでもできるんだ。

 誰かを乗っ取ったまま、こうして、声を発することだってーー

 できるかもしれないだろう?”

男の言葉に、
真桜は玄関の外の宇宙空間を思い出すー。

「---……」
表情を暗くする真桜ー

確かに、男の言う通りかもしれないー

”さぁ…かくれんぼ続行だー”

男は、クスクスと笑うとー
そのまま語るのをやめたー。

4人の、地獄のような2日目が、始まったー。


③へ続く

・・・・・・・・・・・・・・

コメント

憑依されている人物が”謎”なので、
ただの日常回みたくなってますネ~笑

次回は急展開デス!!

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プロフィール

無名

Author:無名
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