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<MC>お前は鳥だ①~洗脳~

他人を洗脳して、
”お前は鳥だ”と吹き込み、
飛び降りさせている謎の男がいた。

彼の目的とは…?
----------------

屋上ー

とある、建物の屋上で、男と少女が立っていたー

男は、黒っぽい服装で、片方の手には、手袋をはめているー。

もう一人の少女は、高校生だろうか。
制服姿だ。

「--お前は、鳥だ」
男が言う。

「--わたしは…鳥?」
男の言葉に、少女が反応するー

だが、その目は、とろーんとしていて、
どこか虚ろな感じだ。
そして、その少女から発される声も
感情がこもっていないー。

そう、彼女は今、”洗脳”されていた。
男にー

「そう。きみは、鳥だ」
男が言う。

「---わたしは…鳥」
洗脳されている彼女は、男の言葉を受け入れて、
何の違和感も感じず、頷く。

「--大空を、羽ばたいてごらん」
男の言葉に、少女は両手を鳥の羽のように
ゆっくりと振り始めるー。

「そうだ。お前は鳥だ」
その様子を見て、男が言うと、
少女は頷く。

「--さぁ、飛べ!大空をー---
 きみは、自由だ」

そう叫ぶと、男は、屋上から立ち去っていくー

少女は、男がいなくなっても、両手を
羽のように羽ばたかせてー
そして、そのまま屋上の端の方に走っていくー。

「わたしは、鳥ー」
少女は、何の迷いもなく、屋上の端から飛び跳ねたー

スカートがふわっと広がりー

通行人たちが、少女が空中に飛び出したことを驚くー

自殺だと瞬時に理解する者ー
何が起きたのか全く理解できる困惑する者ー
飛び跳ねた少女のスカートの中が見えることに興奮する者ー

反応は、人それぞれだったー

そしてー

「----」
少女は、両手を羽ばたかせたーー


がーーー
飛べるはずもなく、そのまま少女の身体は、地球の法則に従って
そのまま真っ逆さまに落っこちてー
地面に激突したー

当然ー
少女は、助からなかった。
無残な姿を晒しているー

「-----」
その姿を野次馬たちの背後から見つめながらー
男は笑みを浮かべたー

「あの世で羽ばたくんだな」

ーーと。

・・・・・・・・・・・・・・・・

「---ったく、なんだってんだ」
刑事・達本 義明(たつもと よしあき)は、現場を調べながら困惑していた。

「--もう、これで何件目でしょうか…」
戸惑う女性刑事・原沢 美津代(はらさわ みつよ)

「--さぁなぁ、最近多すぎて忘れちまうよ」
義明は、ため息交じりにそう答えたー。

「--しかし、これだけ年頃のコの自殺が続くなんてなぁ…
 よほど、最近のコは、悩みが多いのか、
 それとも…」

義明の言葉に、
もう一人、現場を調べていた刑事・堤 源五郎(つつみ げんごろう)が、呟く。

「--扇動しているやつが、いるんじゃないのか?」
とー。

「--扇動か」
義明は、”確かにそれもあるかもな”と考える。

源五郎は
「--この周辺だけだからな…自殺が続いてるのは」と、言うと
「-この近辺に”何か原因”があるに違いねぇ」と、鋭い目つきで
現場を見つめるー。

「---ふむ」
義明は考えるー

義明と源五郎は、同期の刑事ー。
源五郎の洞察力や、犯人を落とすー自白させる能力には
義明も一目置いていた。

「---まぁ、確かにそうかもしれないな。
 地元にとんでもねぇ悪いやつがいるとか、
 自殺を扇動するサイトとか、そういうのがあるのかもしれないな」
義明の言葉に、源五郎や美津代も頷くー

とにかく、少女たちの連続ともいえる自殺の連鎖を、止めなくてはならないー

・・・・・・・・・・・・・・・

「---ーひっ…助けて…」
活発そうなポニーテールの少女が路地裏に追い詰められるー

先日、飛び降りた少女とは別の高校ー
近くの高校の女子生徒だ。

「--お前は、鳥だ」
男が言う。

「--え、、、な、、なに…?」
少女がおびえながらも、
その目がだんだんと、とろーん、としていく。

「----お前は、鳥だ」

「--わたしは、、鳥…」

少女から、恐怖の感情が消えていくー

「そうだ、お前は、鳥だ」
男が叫ぶー

「--わたしは…鳥です」
少女の言葉に、男は満足そうにうなずくと、
そのまま少女と共に、近くの高台へと、向かったー

少女を、羽ばたかせるためにー

・・・・・・・・・・・・・・・

「ただいま~」
刑事・義明が帰宅する。

「おかえり~お父さん!」
高校2年生の娘・千里(ちさと)が、父親を出迎えるー

思春期な年齢ではあるものの、
父・義明と娘・千里の関係は、悪くはない。
普通に、何でも話すことのできる間柄だ。

「---そういえばさ」
義明が、千里の方を見る。

「ん?なぁに?」
千里が、持っていたスマホを置くと、
義明の方を見るー。

「-いや、最近、千里と同じぐらいのコが
 自殺する事件、多いだろ?
 なんか、ほら、そういうの、流行ってんのかな?ってさ」
義明は言う。

同じ年頃の娘に聞けば
何か分かるかもしれない、と、
かすかな希望を抱きながらー。

「--あ~、怖いよね~」
千里はそこまで言うと
「流行ってるとか、そういうのはないと思うよ」と呟いたー

少し間を置いてから、千里が、何かを思い出したかのように
口を開くー。

「---あ~~でもね、
 2週間前に自殺した子、わたしの後輩の、別の高校の友達
 だったみたいなんだけどね…」

千里は少し戸惑いながら話を始める。

千里が所属している部活の後輩の友達が、
連続飛び降り事件で命を落とした女子高生のひとりなのだという。

千里とは、直接面識のない子なのだが、
後輩から間接的にそのことを聞いていた。

「--直前まで、何も悩んでいる様子もなかったし、
 むしろ、今月発売のゆうやのアルバム、
 すっごく楽しみにしてたんだって!

 なのに急に自殺するなんて、って後輩の子も
 驚いてたよ!」

千里の言葉に、
義明は「ゆうや?」と首を傾げた。

「--ちょっと~!
 ゆうやくん、知らないの~?」

千里が苦笑いするー

ゆうやは、人気アイドルグループから
独立した超人気アイドルで、
若い子には特に人気のある、スターとも
言える存在だ。

「---はは、知らなかった」
義明が言うと、
千里は「お父さん、な~んにも、知らないだから~」と
笑いながら、自分の部屋の方に向かって行く。

「ははは、もう俺も年だからな」
笑う義明ー

千里が立ち去っていくと、
義明の表情から笑顔が消えて
鋭い刑事の顔になるー

「--直前まで、何も悩んでいる様子もなかったし、
 むしろ、今月発売のゆうやのアルバム、
 すっごく楽しみにしてたんだって!

 なのに急に自殺するなんて、って後輩の子も
 驚いてたよ!」


「--直前まで、何の変化もなかった子がー…」
義明は、表情を歪めるー

”第3者”の力が働いているのかー。
自殺ではなく、殺人なのかー?

「--いずれにせよー」
義明は、呟くー

”何か”が潜んでいる可能性は高いー

とー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日から、女性刑事の美津代と共に、
第3者の関与を前提に、捜査を始めた。

周辺の学校への聞き込みはもちろん、ネット上で
少女たちを誘って、自殺に追いやっているような
人物がいないかどうかも、徹底的に確認していくー

扇動している人間が、いるのであればー
それを、止めなくてはならないー

だがー…
ネット上でそれらしき人物は見当たらずー
周辺地域にそういう人物の影も見当たらなかったー

「---達本さん!上!」
美津代が叫んだ。

「--!」
義明が上を見るとーーー

ショートパンツ姿の少女がーー
屋上の淵に立ちー

そしてーー
両手を鳥のように羽ばたかせてー
そのまま、”飛んだ”

「やめろ!!!!!!!」
義明は自殺しようとしているその子に向かって叫んだがー
既に、手遅れだったー

・・・・・・・・・・・・・

「--……」
義明は、飛び降り自殺をした少女の亡骸を前に、
戸惑っていたー。

「--彼女が、屋上から飛び降りた時、屋上には
 彼女ひとりでした」
目撃者の証言を元に美津代が言う。

「-そうか」
義明は、考え込むー

この少女が飛び降りたとき、
確かに、誰かがいるような感じは
しなかったし、笑みを浮かべるような表情にさえ見えたー

やはり、誰かが扇動しているのかー?

そしてー
”鳥のように羽ばたく仕草”
それが、気になった。

だがー
扇動するにしても、
これほど立て続けに、自殺を引き起こすことなんて
できるだろうか。

こんなに大人数…
扇動することなどー…

一人や二人、三人ぐらいまでならわかる。
年頃の娘の悩みなどに付け込んで
誘導することはできるかもしれないし、
そういうサイトで人を集めることも
できるかもしれないー

だが、人数が多すぎる。
既に、ここ最近で、10人は確実に超えているー

こんなに大人数が、誰かに誘導されて
飛び降りるなんて、考えられにくいー。

美津代を中心に、ネット上でそういった扇動行為が
ないかどうかを確認しているがー
今回の件と関係ありそうなものも見つからないー。

義明は、頭を抱えていたー

「--鳥のような仕草……」

少女が飛び降りる直前に、鳥のように
羽ばたいていたのがー
義明の頭から離れなかったー

一連の事件は繋がっているー
義明は、そう考えているー
同じ地域で、こんなに立て続けに
同じ年齢の少女が、飛び降りるはずがないー

少女たちの間で、自殺が流行っているー
なんてことも考えられるのだろうかー。

それともやはり、誰かが扇動しているのかー

あるいは…?

義明は、現場を美津代に任せて、
そのまま歩き始めたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「------」
男は、部屋でワインを飲んでいたー

新聞を読みながらー。

新聞には、男が”洗脳”によって引き起こしている
事件のことが詳しく書かれているー。

「---羽ばたく子たちは美しいだろうー?」

そう呟くと、男は
部屋の隅にある写真を見つめたー

そこには、笑顔で写る同じぐらいの年齢の女性とー
笑顔で写る年頃の少女ー
そして、男自身が映っているー

「---」
写真を見つめながら少しだけ表情を緩めた男は立ち上がるー

「--羽ばたけ…そうだ、もっともっと羽ばたけ…」
男はそう呟くと、再び家の外へと出て行くー。

少女たちを、鳥にするためにー
少女たちを、羽ばたかせるためにー
少女たちをーーー

”お前は鳥だ”

今日もまた、少女がひとりー
洗脳されてー
そして、鳥になったー


②へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・

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MC(洗脳)モノのお話デス~!
恐ろしいですネ~!
続きは明日デス!

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無名

Author:無名
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