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<入れ替わり>一番おかしなプロポーズ③~真相~(完)

プロポーズの瞬間に入れ替わってしまったふたりの
”真相”は…?

そして、未来への決断は…?
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「ねぇねぇ、プロポーズ、お母さんからしたって本当?」
娘の美鈴が笑いながら言うー

父親の幸久は「え?俺からじゃなかったっけ?」と
答えるー。

母親の加里奈(幸久)は”プロポーズした日”のことを
思い出しながら、少しだけ笑うー

最初、幸久がプロポーズをしたー
でも、その瞬間に入れ替わってしまったー。

だからー
プロポーズをしたのは、わたしでもあり、あなたでもあるー。

「---まぁ、そういうことにしておこっか!」
加里奈(幸久)は、少しだけさみしそうに笑うー

娘にもー
夫にもー
わざわざ、言う必要はないー

俺はーー
加里奈として、生きていくと決めたのだからー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

18年前ー
プロポーズの瞬間に入れ替わってしまった
幸久と加里奈ー

しかしながら、加里奈の中身が幸久であるのに対して
幸久の中身も幸久であると自称し、
振る舞いも記憶も幸久そのものだったー。

戸惑いながらも、加里奈になった幸久は、
自分がしたはずのプロポーズを受けてー
幸久と結婚したー

”いつか元に戻るだろう”
”いつか何かわかるだろう”

そう思いながらも
元に戻ることもなくー
何も分かることもなくー
月日ばかりが経過していったー

加里奈としてー
女としての初めてのエッチを経験した際には、
あまりのゾクゾクに身体がはち切れそうになってしまったー

”女ってこんなに…”などと思いながらも
”大好きな彼女の身体で自分とエッチする”ということには
激しい嫌悪、、というか、違和感を覚えていたー。

それでも、幸久(幸久?)に悪い、と考えながら、
生活を続けー
結婚して少しして、子供を授かったー

それが、美鈴だー

「まさか、俺が加里奈として妊娠するなんて…」
加里奈(幸久)は思うー

こんなこと、勝手にして、
元に戻った時、加里奈に怒られてしまうのではないかー、と
非常に強い不安を覚えるー

”子供を産むのはさすがにまずいか?”と
加里奈(幸久)は思い悩んでしまうー

そもそも、幸久(幸久?)が誰なのかー
自分は本当に幸久なのかー
加里奈の意識はどこに行ってしまったのかー

様々な不安が自分の中で交錯してー
言いようのない不安に、襲われるー。

あまりの不安とー
妊娠による不安ー
精神的に加里奈(幸久)は追い詰められていき、
子供を諦めたい、と幸久(幸久?)に打ち明けるー

だがー
幸久(幸久?)はとても悲しそうに、加里奈(幸久)に対して土下座したー

”俺が全力で支えるから”
とー。

せっかく授かった加里奈との子供を、育てていきたいー、と。

出産を代わってあげることはできないけど、
俺に出来ることならなんでもするから、
辛い思いさせて、本当にごめんー、と
幸久(幸久?)は涙ぐみながら、そう、嘆願してきたー

加里奈(幸久)は戸惑うー
”俺がもしも、加里奈から子供を諦めたいと言われたら”やはり
同じ行動をするだろうー

と。

目の前にいる幸久(幸久?)は誰なのかー
本当に幸久なのか?それもと…

そう思いながらもー
加里奈になった幸久は
加里奈として、出産したー。
娘の美鈴をー

それからはーー
あっという間だったー
母性本能に目覚めたー
とでも、言うべきだろうか。

娘の美鈴を心から愛してー
いつしか、加里奈になった幸久は、
母親として、真剣になっていたー

幸久の身体の中にいるのは、誰なのかー
自分は本当に幸久なのかー
加里奈はどこに行ってしまったのかー

そんなこと、どうでもよくなってしまうぐらいに、
娘は、加里奈(幸久)にとってー
そして、幸久(幸久?)にとって、宝となったー

幸久(幸久?)も
約束通りー
熱心に子育てに参加して
加里奈(幸久)を、そして、美鈴を支えてくれたー

”自分は、加里奈として、母として生きていく”
その運命を受け入れてー

10年以上の月日が流れたー

そしてーーー
1年前ーーー

突然”彼女”は現れたのだー

夫の幸久(幸久?)が仕事中のある日ー
突然、見知らぬ女子大生がやってきたー

はるばると、地方からやってきたのだと言うー。
”ようやく見つけた”
とほほ笑むその女子大生ー

加里奈(幸久)は、面識がなかったため、
首をかしげるー

そして、その女子大生は、信じられない言葉を口にしたー

「--幸久、でしょ?」
とー。

加里奈の身体になった幸久を、幸久と呼んだー

「---!?」
加里奈(幸久)は戸惑う-

「ま、、まさか…か…加里奈なのか?」
信じられないー

そんな気持ちで”ものすごく久しぶりに男口調”で話した加里奈(幸久)-

目の前にいる女子大生は、優しく頷いたー

・・・・・・・・・・・・・・・

「--今の身体は、広坂 麻利絵(ひろさか まりえ)って言うんだけどー」
女子大生・麻利絵(加里奈)が、そう呟くー

仕草が、どことなく加里奈だー。
間違いないー

この女子大生ー
広坂 麻利絵の中には、加里奈がいるー

麻利絵(加里奈)は、加里奈しか知らないような思い出を
たくさん口にしたー

加里奈(幸久)は、目の前にいるのが、加里奈だと確信したー

「でも…どうして?」
加里奈(幸久)が不思議そうに言うとー
「--」
麻利絵(加里奈)は悲しそうに呟いたー

「あの日ー…
 遊園地で幸久からプロポーズされたときー
 ”わたしたち”は入れ替わっちゃったみたい」

麻利絵(加里奈)は呟いたー

「わたし…たち?」
加里奈(幸久)が呟くー。

「そう…わたしね…プロポーズを受けた瞬間ー
 近くにいた家族連れの赤ちゃんの身体になっちゃったの」
麻利絵(加里奈)が言うー。

「--え」
加里奈(幸久)が戸惑うー

「急に赤ちゃんの身体になっちゃったわたしは…
 言葉もしゃべれなくなっちゃって…
 泣くしかできなかったー」
麻利絵(加里奈)の言葉に、
加里奈(幸久)は当時の光景を思い出すー

あの時ー

呆然としながら周囲を見渡すー

カップルやー
家族連れー
泣きわめく子供を乗せたベビーカー…

色々な人たちが、
”何事もなかったかのように”通り過ぎていくー


”妙に泣きわめいていた赤ん坊を乗せたベビーカー”が
いたのは、覚えているー

あの赤ん坊に、
加里奈がー?

「--でね、ようやく大学生になって、一人暮らしを始めて
 会いに来れる年齢になったから、こうして会いに来たの。
 連絡取ろうにも、連絡先も変えちゃったみたいだし、
 分からなくて」

麻利絵(加里奈)は笑ったー

17年前のプロポーズ…
あの時赤ん坊だった麻利絵は、大学生にまで成長した、
ということかー。

「--じゃ、、じゃ…俺の身体にいるのは?」
加里奈(幸久)が言うと、
麻利絵(加里奈)は呟いたー

「たぶんね…このコ」
麻利絵(加里奈)は自分の身体を触るー

当時、赤ん坊だった麻利絵が、幸久の身体の中にいるんだと思う、と
麻利絵(加里奈)は言ったー

幸久(幸久?)ではなく、
幸久(麻利絵)なのだと。

「で、、でも…俺の身体の中にいるのがその子だとして、
 俺そのものみたいな振る舞いをしてるけど…?」
加里奈(幸久)がそう言うと、
麻利絵(加里奈)は答えたー。

「--それは、この子が赤ん坊だったからー…だと思う。
 まだ自意識みたいのが無くて、
 そんな状態で幸久の身体になったから、
 たぶん、自我とかそういうものが全部、幸久の身体の側に
 飲み込まれて、幸久そのものになっちゃったんだと思うー」

麻利絵(加里奈)は言ったー

あの時ー
幸久と加里奈が入れ替わったのではなくー
”3人”

幸久→加里奈
加里奈→麻利絵
麻利絵→幸久

と入れ替わっていたー

そして、
既に成人していて、ちゃんとした自我を持つ
幸久と加里奈は、別の身体になっても
自我と自分の記憶を保ったままー
身体側の記憶を上書きするような感じになったもののー

赤ん坊で、明確な自我のなかった麻利絵は、
幸久の身体側の記憶に飲み込まれて
幸久そのもののような振る舞いをするように
なってしまったー

そういうことなのだと、麻利絵(加里奈)は言ったー

「…そっか」
加里奈(幸久)は、頷くー

幸久(幸久?)ではなく
幸久(麻利絵)だったー

「---3人で入れ替わっちゃった理由はー?」

「---それは…」
麻利絵(加里奈)にも”答え”は分からないー

でも”仮説”としてはー
婚約指輪だと、麻利絵(加里奈)は呟いたー

幸久が用意していた婚約指輪は海外から取り寄せた
不思議な光を放つ婚約指輪だったー

麻利絵になった加里奈が調べた結果ー
”錬金術がどうこう”だとか、不思議ないわくつきの
品であったことが分かったのだと言うー

その指輪の放つ光を見た
幸久と加里奈ー

そして、偶然、ベビーカーに乗った赤ん坊・麻利絵が、
その光を同時に見つめたことでー
3人が入れ替わってしまったーーー

「--と、いうことだと、わたしは思うケド…
 でもまぁ、、わかんないけどね」

麻利絵(加里奈)は笑ったー

久しぶりの雑談に花を咲かせるふたりー

「ーーこのコが、わたしと幸久の子供なんだね~」
麻利絵(加里奈)は、幸久・加里奈と、娘の美鈴が写った写真を
見つめるー。

「--すごく、いい子に育ってるよ」
加里奈(幸久)が笑うー。

「---そっか」
麻利絵(加里奈)は安心した様子でほほ笑んだー。

夕方になると、麻利絵(加里奈)は呟くー

「じゃ…頑張ってね」
とー

「----」
加里奈(幸久)は
「また一緒に…」と、声を掛けるー

だが、麻利絵(加里奈)は首を振ったー

「---幸久にはもう、家庭があるでしょ?
 それを、大事にしなくちゃ、だめ」
麻利絵(加里奈)が笑うー

今の加里奈(幸久)には家庭があるー

夫ー
そして、娘ー

中身が誰であろうと、もう、家庭があるー

そして、麻利絵になった加里奈にもー
色々な人間関係があるー。

幸久が加里奈になって17年ー
加里奈が麻利絵になって17年ー

もう、元の関係に戻ることは、できないー

「--わたし…っていうか、このコ…麻利絵ちゃんの両親、
 病気でね…
 一人暮らしを始めたけど、実家と行き来しながら暮らしてるの。

 …入れ替わってから、17年ー…
 もう、わたしにとっては、本当のお母さんとお父さんみたいなものだからー

 それに…麻利絵としての友達もたくさんいるー…」

加里奈になった幸久ー
麻利絵になった加里奈ー

17年ぶりに再会した二人はー
もう、それぞれの人生ー
それぞれの人間関係が出来上がっていたー

「ーーーそっか…」
加里奈(幸久)は呟いたー

麻利絵(加里奈)が玄関に向かうー

「---あ、そうだ」
去り際に麻利絵(加里奈)がほほ笑むー

「--プロポーズ…嬉しかったよ」
麻利絵(加里奈)の笑顔ー

「--え…」
加里奈(幸久)が顔を赤らめるー

「----本当に、ありがとうー」

プロポーズの返事は”Yes”だと、
麻利絵(加里奈)はイタズラっぽく笑うと、
そのまま立ち去って行ったー

「-----…」
加里奈(幸久)は少しだけ目に涙を浮かべたー

やっとー

やっと、返事を聞けたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

麻利絵になった加里奈が訪ねてきてから1年ー

あれから、麻利絵(加里奈)からの連絡は一切ないー

連絡すればするほどー
あの時の思い出に浸れば浸るほどー
辛くなってしまうからー…

そういうことだと思うー。

加里奈(幸久)も、麻利絵(加里奈)に連絡をしようとはしなかったー

もう、二度と結ばれることのできない関係ー
でも、ずっとずっと忘れることのできない、大切なヒトー

「---どうした?何かあったのか?」
幸久(麻利絵)が、不思議そうに尋ねて来るー

「ううん。なんでもない」
加里奈(幸久)はほほ笑むー

加里奈が無事でよかったー
加里奈は加里奈で、新しい身体で新しい人生を送っているー

お互いの道が交わることは、もうないかもしれないけれどー…
きっと、心はどこかで通じているー。


わたしたちが、経験したのは、この世で一番おかしなプロポーズ

プロポーズした瞬間に、身体が入れ替わってしまってー

返事を伝えるのにー
返事を聞くのにー

17年もかかってしまったのだからー

しかもー
返事は”Yes”だったのに、
結ばれることはできなかったプロポーズ…

「おかしなプロポーズ…」
加里奈(幸久)は少しだけさみしそうにー
けれども前向きにほほ笑みながら
静かにそう呟いたー


おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

プロポーズの瞬間に入れ替わり…の完結でした~!
お読み下さりありがとうございました!!

今月のお話はあと一つ(明日~3日間)デス!
ぜひお楽しみくださいネ~

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無名

Author:無名
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