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<憑依>身勝手な道連れ②~未練X満足~(完)

この世に何の未練もない。

男は、自ら命を絶とうとしていたー

だが、一人ではなく、誰かを道連れにー。
男は、充実した人生を送る女子大生に憑依して
その身体で飛び降りしようとしていたー
----------------------

「---ん…」
朝日が差し込むー

女子大生・野々花が目を覚ますー

野々花は昨晩から
自殺を考えている男・慎一郎に乗っ取られているー

昨晩は楽しかったー
野々花の身体が動かなくなるまで
ひたすらエッチなことを繰り返したー

大声で喘ぎまくったから、周囲に聞こえていたかもしれないが
そんなことは、自分にとっては関係ないー、と
慎一郎は思うー

いいや、野々花にとっても関係ないー
今日、野々花は、俺と共に自殺するのだからー

「ふふ、さ~!死ににいきますか!」
野々花は鏡の前でほほ笑んだー

どんな服で死ぬかー?と
想いながら、野々花は乱暴に自分の服を
漁るー。

「-う~ん、どうせなら、なんか特殊な感じの」
野々花は、普通な服を次々と部屋の中に
放り投げていくー

部屋を見渡す野々花ー

「なにかないかな~?」
そんな風に思いながら、野々花が部屋を歩き回っているとー
あるものを見つけたー

「ん?」
野々花が、机の影に隠されるようなかたちで
置かれていた、それを手に取るー

「退学届…?」
大学の退学届。

「どうして?」
野々花が首を傾げるー

毎日、とても楽しそうな野々花。
そしてー
野々花の友達らしき人物が以前に
”野々花は成績も素行もいいから、教授にも気に入られてるもんね”
などと言っていたのも、偶然聞いたことがあるー

そんな野々花が退学とは
どういうことなのだろうか。

「ま、俺には関係ないけどな」
そんな風に思いながら、
再び服を漁り始めるー

そしてー
”野々花”の死ぬ衣装を
いくつかの候補に絞り込んだー

部屋に置かれていた
”野々花の高校時代のセーラー服”か
”ゴスロリっぽい衣装”か
それとも”ごく普通のショートパンツで生足を晒す”かー。

「ふふふ、どれもゾクゾクする」
野々花がニヤニヤしながら
並べた3つの衣装を見つめるー

”今日死ぬ”のは確定だ。
慎一郎にもはや未練はないー
あとは、野々花を道連れにして
自殺する。

この世は、たいして面白くなかったー

見始めたけど、たいして面白くなかった映画を
途中で見るのをやめるのと、同じようなことだ。

もう、人生と言う名の映画館にいる必要はない。

”死んだら何もない”とは
誰が決めたのだろうかー

死んだあとにこそ、
”見たことのない世界”が広がってるかもしれないじゃないか。

そう思っただけで、慎一郎に乗っ取られている野々花は
ワクワクしたー

この世界が、”牢獄”のような場所で、死んだら釈放、って可能性もあるし
生まれ変わる可能性もあるし、
天国や地獄が存在する可能性だってある。

死んだ後の世界のことなんて、
生きている人間には、分かりやしない。

「ふふふ、ワクワクしてきた」
野々花は興奮しながら、ゴスロリな衣装に着替えたー

そして、メイクをするー
”美しいお人形さん”みたいなスタイルになった野々花は、
断崖絶壁に向かおうとするー

「あの世に行くんだから、おしゃれしなきゃなぁ」
野々花はクスクスと笑うと、
自分の姿を鏡で見つめたー

どうしてゴスロリ系の衣装を持っていたのかは知らないが
去年のハロウィンらしき写真が飾られていて
その時の野々花がこの服を着ていることから
ハロウィン用だったのかもしれないー

まぁ、そんなことも、もうどうでもいい-

「さぁ、一緒に死のうぜ」
野々花はそう呟くと

「うん!」
と、一人二役をしながら、玄関の方に向かったー

「--ん?」
ふと、玄関の近くにある物置の上に
”ノート”が置かれているのが目に入ったー

昨日はあまり玄関付近に来なかったから
分からなかったのだー

「--何が書いてあるのかなぁ~?
 この子の日記か?」
そんな風に思いながら、そのノートを開き、
内容には興味なさそうにパラパラとめくるー
それは、予想通り、野々花の日記だったー

「--へ~じゃあ、最後の1ページに書いておいてやるか」
野々花は部屋に戻って、
あぐらをかきながら机の前に座ると、
近くのボールペンを手に、
ノートの最後のページに書き込んだー

下に何やら小さな文字だけ書かれているが
他の部分は空白だ。

そこに、書き込むー。

”わたし、今日死にま~す!”
と、嬉しそうにー

満足そうに日記を閉じようとする野々花ー

だがーー
「---!?!?!?」
野々花は、表情を歪めた。

”わたし、今日死にま~す!”と
書いた前のページに

”わたし、もうすぐ死にます
 さよなら”
と、書かれていたのだー

「--え?」
野々花が表情を歪めるー

”わたし、もうすぐ死にます
 さよなら”は、
野々花を乗っ取っている慎一郎が書いたモノではないー

”最初から、書かれていた”

「は?どういうことだ?」
野々花はそんな風に思いながらー
”乗っ取られる前の野々花”が書いた日記の
ページに目を通していくー

”この子も、俺と同じように自殺を考えていたってことか?”
そんな風に思いながらページをめくっていく野々花ー

しかし、野々花の日記の内容を読むにつれてー
”そうではない”ことを、慎一郎は知ったー。

日記の前半はー
幸せそうな野々花の日常ー
毎日書いているわけではなく、
定期的に、大学生になった頃から書いていたようだー

だがー
途中から、それは変わったー

野々花が、しきりに体調を気にしているー

そして、野々花は”今日、病院で検査”と、日記に
書き記していたー

そしてー
次のページは、
汚れていたー
濡れて、乾いたかのような、ページ

そこにはー
”余命半年だった びっくり笑”
と、書かれていたー

文字が歪んでいてー
ページに濡れた跡があるのは
きっと、これを書きながら
野々花が泣いていたのだろうー

なんて書いても良いか分からず、
やっとの思いで書いた言葉が
”余命半年だった びっくり笑”なのだろうー

そしてー
それから、既に5か月が経過していたー

野々花の日記には
自分の限界と、そろそろ入院しないといけないことが
書かれていたー

野々花は病院の先生に
”なるべくギリギリまで普通の生活を送っていたい”と
頼み込み、今日、ここまで”普通”の生活を送ってきていたのだったー

野々花の病気は、不治の病ー
治ることなく、確実に死に至るー。

野々花が入院する=もう帰って来れない

ことを意味するー

それで、野々花は
日記に

”わたし、もうすぐ死にます
 さよなら”

と、書き残していたのだー
自分の、最後の日記としてー

退学届も、入院前に出すつもりだったのだろうー

”わたし、誰にも言わないー
 余計な心配かけたくないしー”

日記には、そうも書かれていたー

そしてー

よく見ると、ノートの最後のページに小さくー
”死にたくない”と、書かれていたー

「-----」
野々花は、日記を閉じるー

「-------…」

慎一郎は思うー

死にたいと思っている自分と、
生きたいと思っている野々花ー

残りの命なんて必要ないと考えることができる人間がいる一方で
どんなに生きたいと願っても、命が尽きてしまう人間がいるー

「----はは…」
野々花は微笑んだー。

「--世の中って無情だな」
野々花はそう呟くと、
ゴスロリの衣装のまま立ち上がってー
そのまま”飛び降りるため”に、
断崖絶壁へと向かったー

山登りをするとは思えない服装で
険しい道を進みー
野々花は”その場所”にたどり着いたー

まさに断崖絶壁と表現するにふさわしいこの場所ー

この場所では、毎年何人かが、飛び降りているとも言われているー

そこに、野々花はやってきたー

「---さてと…死にますか」
野々花は呟くー。

もう、この世には飽きたー
慎一郎は、死にまるで恐怖を抱いていないー
だが、一人で死ぬのは寂しいー
だから、野々花のようなリア充を道連れに
憑依して死のうと考えたー

「-------」
野々花は深呼吸すると、静かに呟いたー

”死にたくない”
かー。

そしてー
慎一郎はー
野々花は叫んだー

”俺は死ぬ”
これは、もう決めたことだー

だがー

「---俺の命を、この子に分け与えることはできるか!?」
とー。

誰に向かって叫んでいるのかは分からないー
慎一郎自身も、”俺は何をしてるんだ”と、
首を傾げながらも、そう叫ばずにはいられなかったー

「--俺は死にたいー
 ーーこの子は生きたいー

 どうせ死ぬなら、俺は、この子に捨てる命をあげたい」

野々花は、一人、断崖絶壁でそう叫ぶー

野々花はただのリア充だと思っていたー
だが、自分の余命を知り、
なおも周囲に心配をかけまいと気丈に振る舞いー
そして、一人静かに、寂しく命を落とそうとしていたー

慎一郎はー
その姿に、”同情”したー

元々、勝手に乗っ取って道連れにしようとしていた自分が言うのは
おかしな話だが、
この”かわいそうな子”を助けてあげたいと思ったー

何もないまま、ただ死んで
一人であの世に行くのは嫌だー
そう思ったからこそ、野々花に憑依したのだ。

だがー
この子の”命の恩人”となって死ぬーー
ってのも、悪くはない。

一人で死ぬことになってしまうが、
”俺がこの子を助けた”という事実が残るし
何かを成し遂げた優越感にひたりながら、
自分はあの世に行くことができるー

「--って、誰も返事するわけなんかねぇよな」
野々花は乱暴な口調でそう呟くと、
激しく波打つ水の音を聞きながら
転落したら絶対に助からないであろう
断崖絶壁の上で、静かに座ったー

そして、持ってきていた憑依薬の説明書を開くと呟くー。

「----なにか、なにかないか」
とー。

野々花は、もうじき死ぬー
日記には”生きたいのに生きることができない”苦しみが
綴られていたー

なのに自分はー
”死にたいのに死ぬことができない”
人間だー。

これを、なんとかして、交換できないかどうかー

”生きたいから生きれる”
”死にたいから死ぬ”

交換できれば、そうすることができるー

「----------!!!」
野々花は目を見開いたー

”この憑依薬は、憑依自殺用です。
 長期間の憑依を行うことはできません。
 目安として、憑依してから24時間以内に、
 行動を行ってください”

そう書かれていたー

そしてー

”憑依してから長時間経過すると、
 憑依者の霊体が、憑依された身体に
 取り込まれて消滅します”

とも、書かれていたー

「消滅…」
野々花は呟くー

この憑依薬はあくまでも”道連れ”にするためのものだー
だから、長期間憑依できないようになっているのだろうー

「---この子の身体に取り込まれて…死ぬ…」
断崖絶壁を見つめながら野々花は呟くー

「それも…悪くねぇか」
野々花に憑依している慎一郎はそう思ったー

どうせ、死ぬことに変わりはない。
人生という名の映画を見るのをやめることができるのならー
別に、死に方にこだわりはないー

”吸収”されればー
自分の生命エネルギーを分け与えることがー
できたり…

するかもしれないー

少なくとも、飛び降りて死ぬよりはー
いいかもしれないー

そう考えて、野々花に憑依している慎一郎は、
そのまま、
その時を待ったー

人がめったに訪れることのない断崖絶壁で
”その時”を待つー

夕暮れ時ー

ついに、その時はやってきたー

言葉では言い表すことのできないー
自分が”消えていく”ような感覚を覚える慎一郎ー

長期憑依したことにより、自分の意識が野々花に
取り込まれようとしているー

「---……やっと…消えることができる」
慎一郎に、未練はないー
本島に、心底、この世に、飽きたのだー

それが良いことか、悪いことかはわからないー

だが、慎一郎にとっては、
それがゴールであり、それが一番の悲願。

「---生きろよ」
野々花はそう呟くと、少しだけほほ笑んでー
ゴスロリの衣装のまま、その場で意識を失ったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

光が見えるー

知らない男の人が何か語り掛けて来るー

わたしはー?
いったいー?

”俺の生命力…
 きみにーー
 やるよ”

「--え?」
わたしは、意味が分からないまま、その男の人に話しかけるー

あ…
この人、近くのアパートに住んでいた人ー。

わたしはそんな風に思いながら
その人に「どういう意味ですか!?」と話しかけるー

その人はー
笑いながら背中を向けたー

”ーー死にたい俺と、生きたい君ー
 俺には、命はいらないー
 だから、生きたい君にやるよ”

それだけ言うとー
その人は立ち去っていきーーー

わたしは、光に包まれたーー

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「-----!」
野々花が目を覚ますと、そこは病院だったー

「----よかった!」
心配そうに、友達がこちらを見ているー

「あれ…?わたしは…」
野々花はそう口にするとー
友達は、山奥の絶壁で意識を失っているところを
発見されて緊急搬送されたのだというー

「----」
野々花は首を傾げるー
そんなところに、行った記憶はー?

野々花は、自分の意識が飛んでいたことを疑問に思いつつも、
”驚きの事実”を医師から聞かされた。

搬送された病院はちょうど、余命宣告を受けた病院だったー

野々花の担当医が言うー

”あなたの病気ですが…”

野々花はー
”自分を死に至らしめるはずだった、モノ”が
消えかかっていることを知ったー

後日ー
野々花の病気は、”完全に”回復したー
医師は”あり得ない”話だと言っていたー

「----」

野々花は、すっかり日常生活に戻っていたー
夢で近所の男の人が出てきて
”命をやる”なんて言っていたー

そのことが気になって、野々花は、その男ー
慎一郎の家を訪れたー
実家からの野菜などをよくおすそわけしに行っていたから
面識はあるー

だがー
慎一郎は数日前ー
野々花が意識不明で搬送された日から、消息不明だったー

「----」
何が起きたのかは分からないー
野々花には、分からないー

でもー
野々花は、”この人が助けてくれた”-
と、そう感じたー

「----わたしを助けてくれて、ありがとうございましたー」
野々花は、消息不明になった慎一郎の家の玄関の前で
頭を下げたー

”どういたしましてー”

野々花には、そう、聞こえた気がしたー


おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

道連れに巻き込まれずに済みました~!

でも、慎一郎の霊体が野々花の中で
消滅しているので、
もしかしたら…?

な、こともあるかもしれませんネ~!
お読み下さりありがとうございました!!

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無名

Author:無名
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