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<憑依>憑依の代償①~謎の力~

何も変わらぬ日々をただ、漠然と過ごす彼の前にー
突然、謎の女が現れたー

女は言うー
”憑依の力をあげる”
とー。

ただし、その力を使うたびに、自分の寿命は縮んでいくという
”代償”があったー。
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井島 一平(いじま いっぺい)-
彼は、漠然と、ただ、日々を過ごしていたー

特に楽しいこともなくー
特に変わり映えする毎日でもなくー
毎日、毎日、同じようなことの繰り返しー

30代独身の一平は、
コンビニのバイトとして働きながら、
お金にもあまり余裕のない生活を送っていたー

趣味に費やすお金もないー
そんな生活をしているうちに、
趣味なんて言葉、忘れてしまったー

お金が無くて、
趣味を十分に堪能できず、
我慢・我慢・また我慢を繰り返しているうちに、
趣味など、どうでも良くなってしまったのだー

コンビニのバイト仲間には、若い子もたくさんいるー
だが、当然、年齢差があるためか、
本当の意味での友達になることはできないし、
当然、恋愛感情なども生まれないー

今日も、コンビニバイトを終え、
帰り道のスーパーに入り、
安い酒と、値引きされた、幕の内弁当を購入して、
そのまま家に帰るー

家は、築年数30年以上のぼろいアパートだ。

廊下の蛍光灯には、
蛾が止まっている-
そんな蛾を見つめながら
玄関の扉を開けて、家の中に入るー

家の中に入ると、
100円ショップで購入した芳香剤のニオイだけが、
彼を出迎えてくれたー。

当然、おかえりを言う人もいないー

彼は家の中に入ると、
薄暗い電気をつけて、そのままパソコンの電源を入れたー

手を洗い、うがいをするー
今朝、バイトに行く前に使っていたお皿とコップを
台所に見つけて、それを洗うと、
机に座り、値引きされた幕の内弁当と、
安い酒を袋から取り出し、
それを口にしたー

「----ふ~~~~~」
特にーー
特に、感動もないー

ただの消費活動ー。
ノートパソコンを目の前に持ってきて、
今まで何百回と食べたであろう幕の内弁当を食べるー。

「---」
ネットを見つめ、なんとなく、時間を消費しー、
そして、お風呂に入るー。

今日も、何も変わらぬ
一平の1日だったー。

明日も朝からバイトー
その次もー

彼はー
別に、自分を不幸だとは思っていないー

面白くもないが、
別に、辛くもないー
何のために生きているのだ?と言われてしまうと
仕事終わりの酒を飲むため、と答えてしまいそうなぐらいに
何もないのは事実だが、
かと言って、自分は地獄にいるわけでもない。

独身であることにも、別に何も感じないー
生涯未婚率などと言われる数字も、今では
だいぶ高くなったし、
彼自身、自分が”モテない”ことをよく理解している。

挑戦するだけ、無駄なのだ。
無駄なことには、ハナから手を出す必要などない。

恋愛をする”リスク”を考えればー
行動せずに、幕の内弁当を食っていたほうがいい。

彼は、そんな風に考えていたー。

両親はもう高齢だし、
友達とも、だんだんと疎遠になってきたが、
それはそれで、自分の人生なのだと、一平はあきらめていたー

お風呂から出てくると、
ネットで明日の天気予報を確認するー。

歯を磨きー
少しだけテレビを見て、
眠気を感じて、
そのまま寝るー。

カレーライスにカレールーを入れ忘れたかのような
味気のない人生だが、
一平は、それを受け入れていた。

カレールーのないカレーライスにだって、
ライスはある。
悲観する必要なんて、どこにもないのだ。

ルーだけではない、ライスすらない人生もある。
それに比べれば、自分は恵まれているほうだー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー

スマホのアラーム音で目を覚ますと、
一平は、朝ごはんに、
カロリーメイトを食べる。
手早く済ませられるし、食器を汚す必要もない。

カロリーメイトは、最高の友だー。

適当に準備を進め、
誰も興味を持っていないツイッターアカウントにログインすると
「いってきます」とツイートした。

誰得でもない、いってきますツイートをする意味は分からない。
自分の生きた証を、電子の海に、刻みたかったのかもしれないー

「おはよーございますー」
一平は、コンビニにつくと、自分より若いバイトリーダーに挨拶して、
バイトを始めるー

「--井島さんがいてくれて本当に助かるよ」
オーナー夫婦が言うー

「井島さんって本当に優秀ですよね!」
女子大生バイトの月美(つきみ)が言うー

「---井島さんとのシフトは楽で最高っすよ!」
男子高校生バイトの順太郎(じゅんたろう)が言うー。

漠然と仕事をこなしー
漠然と仕事を終えるー。

昼休みに、廃棄直前のおにぎりを1個食べて、
紙パックの野菜ジュースを飲み干すー。

”井島さんがいてくれてよかった”
みんな、口々にそう言うー

だが、”人間としての井島”には誰も興味なんてない。
”働くロボットとしての井島”にみんな感謝しているのだー

「--おつかれさまでしたー」
一平は、バイトのシフトを終えて、コンビニから外に出たー

駅前のモニターに
ニュースが流れているー

芸能人の結婚ー
美味しい食べ物特集ー
少子高齢化がどうこうー

一平にとっては、あまりにもどうでも良いニュースであり、
何の感情も湧かなかったー

芸能人の結婚。
ーで? としか思えないー

美味しい食べ物特集。
ー値引きされた幕の内弁当で十分だ。

少子高齢化がどうこうー。
自分が死んだ後のことなんて知らん。

彼は”感情”を失っていたー

「----」
家に向かって歩く一平ー

夜になり、
この辺りは、人通りも少なく、物騒な感じではあるものの、
一平にはあまり関係ないー
一平を襲ったところで、イケメンでも美女でもないし、
金もロクに持ってないー

襲われて死んだら死んだで、それもまた人生だ。

警戒する必要性など、まったく感じなかったー

「----!」
一平は立ち止る。
目の前に、夜道には不釣り合いな美少女が立っていたー

「----…」
一平は、一瞬驚いたが、無視して、美少女の横を通って行こうとするー

もう、30代中盤も過ぎたし、
女の子に対してどうこう思うこともなくなってきたー
自分は一生独身だと思うし、
恋愛をすることもないだろう。
興味を持つだけ意味がない。

「---…他人の身体への憑依…興味はない?」
女の横を通ろうとした一平に、女は声を掛けてきたー

「---?」
一平は、一瞬立ち止ったが、すぐにー
「宗教の勧誘なら結構ですので」と呟いて、
そのまま立ち去って行こうとするー

「あなたにー
 あなたに”他人に憑依できる力”をあげる」
美少女は一平の方を見て、そう呟いたー

無視して立ち去ろうとしていた一平が
苦笑いをして立ち止ったー

「--他人に憑依?なんのことだか…?
 そういうのは、他所でやってくれ」

それだけ言うと、再び立ち去ろうとする一平ー

だがー
その美少女は、さらに声を掛けてきたー

「--何の味気もない人生ー
 変えてみたいとは思わない?
 他人の身体を奪って好き放題することのできる力を手に入れてー
 ルーのないカレーライスに、ルーを添えてみない?」
美少女の言葉に、
一平は「ルーのないカレーライス?はは、それはそれで美味しいからね」と、
”子供相手”のような口調で言ったー

”いつも頭の中で考えていることを、何故この子が知っているのか?”と
少し疑問に思いながら、
一平は呟く

「他人に憑依なんて、できるわけないー。」

「できると言ったら?」
美少女は引き下がらないー。

「---仮に出来るとしても、どうして俺のような
 冴えないおっさんに?」
一平の言葉に、美少女は不気味な笑みを浮かべたー

「--あなたの人生に”色”がなかったからー」
とー。

「色…ねぇ」
一平は、そう言われて考え込むー

確かに、自分の人生には色がない。
まるで、生まれて来る前に、着色するのを
忘れてしまったかのような、そんな気分だー

「---本当か、どうか信じるのは、あなた次第ー」
手を不気味に光らせる謎の美少女ー

「----…」
一平は戸惑うー

だが、目の前の美少女は、手を不気味に光らせているー。
それは、事実だー。
ふつうの人間の手は、いきなり光ったりはしないー。

まぁ…何か細工をしていれば、話は別だが。

「----代償は?」
一平が尋ねる。

仮に、憑依の力が本当だとしても、
何か”代償”があるはずだ。
ノーリスクでそんな力を使えるはずなど、ない。

「--使えば使うほど、あなたの命が縮む」

「--なんだって?」
一平が声を少し荒げるー

「--どのぐらい縮むんだ?」
一平はすぐに声のトーンを元に戻して
美少女に尋ねたー

「---1回の憑依ごとに、1日ー
 あなたの寿命が縮むー」

”1回の憑依で1日ー?”
一平は、その言葉の意味を考えるー

それなら、仮に300回以上憑依したとしても、
寿命は1年間も縮まないー。

「--へぇ。余裕じゃん」
一平は思わず口笛を吹いたー。

「--さぁ、どうするの?
 嘘だと思うのも、信じるのも、あなた次第ー」
美少女の言葉に、一平は笑みを浮かべたー

「---実際にその力を使うまでは、信じないー。」
一平は”慎重”だったー

代わり映えのない毎日ー
たとえ、ルーのないカレーライスのような人生だとしても、
彼は、その人生を手放す気はない。
彼はとにかく、”リスクのない選択”を選び続けてきた。
その結果が、今の人生だ。

「-----でも、貰えるなら、その力が貰いたい」
一平は、正直に隠さず、自分の意思を美少女に伝えたー

一瞬だけクスッと笑った美少女はー

「--じゃあ、この力、あなたにあげるー
 この力を使うか、使わないかはあなた次第ー。」

それだけ言うと、美少女の手が激しく光りー
その光が、一平を包み込んだー。

光が無くなったときー
既に美少女は、その場にはいなかったー

「---」
一平は自分の手を見つめるー

”って、どうやって力、使うんだよ”
そんな風に思いながら、
帰宅すると、一平は、いつも通り、
スーパーで購入した晩御飯を作り始めるー。

今日は半額になっていた冷凍食品のチキンライスだ。
なかなかの味で、こんなものが200円ちょっとで
食べられると考えると、まるで自分が高級レストランに
足を運んだような気分になれる。

発泡酒の缶を開け、
出来立てのチキンライスを目の前にー
一平は、それを無表情で食べ始めたー


ガチャー

「--!」
一平は、隣の部屋の住人が帰宅したことに気付いたー

”憑依”

隣の住人は、一人暮らしのおっさんだ。
まぁ、自分もおっさんなのだが。

「---まずは、おっさんで試すか」
一平は立ち上がった。
チキンライスに100円ショップで購入したラップをかけてー
憑依能力、発動!と心の中で念じてみるー

するとー
信じられないことに、一平は”幽体離脱”したー

「おぉ!?!?マジか!?」
一平は驚くー

美少女の憑依能力は本物だったー

と、なればやっぱりー
恋愛に興味のない一平と言えど、
美少女や美女に憑依してみたい気持ちが湧いてきたー

だが、その前にー

「--憑依されている間の記憶があるのか、とか
 どのぐらい憑依してられるのか、とか
 いろいろ分からないことだらけだー。」

一平はそう呟くと、
”まずは、やっぱ、おっさんで試すか”と、
隣の部屋に向かうのだったー


②へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

本当は、①で憑依し始める予定だったのですが、
一平の、変わり映えのない人生描写をしてたら、
なんだか楽しく(?)なってきてしまって、
憑依するまで時間がかかってしまいました笑

明日以降は、どんどん憑依していきますよ~!

今月もお読み下さり、ありがとうございました!!

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プロフィール

無名

Author:無名
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