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<憑依>芝居のはずがホントに憑依されました②~劇~(完)

憑依シーンのある劇の最中に
ヒロイン役の女性が本当に憑依されてしまった…!

そんな状況でも、主人公役の弥一は、
劇を続けながら、立ち向かっていく…!
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「---人間如きがーーー!」
魔王ガロンを名乗る”何か”に憑依された由紀乃が
目を赤く光らせるー。

「うおおおおっ!」
騎士リチャード役の弥一が、由紀乃に向かっていくー

”由紀乃さんが、もし本当に憑依されているのならーー
 なんとかして、由紀乃さんの心を呼び戻さなくては”

弥一はそう思いながら、作り物の剣で、
ネール姫役の由紀乃に挑んでいくー。

何も知らない観客たちは
その戦いを、静かに見守っているー

先ほど、リチャード役の弥一が出血した際には
一時的にどよめいていたものの、
リチャード役の弥一が、あくまでも劇として
振る舞い続けたために、
観客たちは、”劇中の演出”と思いはじめ、
次第に混乱は落ち着いていたのだー

「---はははははっ!人間風情が!」
ネール姫役の由紀乃が笑うー。
まるで、悪の女王のようにー

「-人間を…!なめるなよっ!」
騎士リチャード役の弥一は、
由紀乃の手に握られている剣は
”本物”であることを理解しているー

先ほど斬られた傷の痛みに耐えながらー
弥一は必死に戦うー。

ネール姫役の由紀乃とは思えないぐらいに
”プロ”の剣捌きを見せる由紀乃ー

”由紀乃さんは、ここまでうまくないー”
弥一は思うー

由紀乃は、剣を振るシーンが苦手、と
いつも苦笑いしていたー。

だが、今回の劇の監督も、
”魔王に憑依されている姫様、だから
 剣の振り方がぎこちないぐらいのほうが、
 いいんじゃないかな”などと笑っていたしー
確かにその通りだったー。

けれどー
今の由紀乃は違うー

完全に、剣を使いこなしているー

それでもー
弥一はー

弥一は、高校時代に剣道を習っていたー。
多少の心得はあるー。

”俺の狙いは、由紀乃さんに攻撃することじゃねぇ!”

弥一は、カッと目を見開くと、
由紀乃の剣をはじいたー

剣が舞台の脇に吹き飛ぶー

「ひぃっ!?」
舞台脇で戦いを見守っていた
魔王サタン役の又原が悲鳴を上げるー。

「---魔王ガロン…ネール姫の身体から、出ていけ!」

騎士リチャード役の弥一は、あくまでも
”劇”を続けながら、ネール姫役の由紀乃の身体を
取り戻そうとしていたー。

「---クク…ク…クククク…あははははははははっ!」
ネール姫役の由紀乃が笑うー。

「--調子に乗るなよ…!人間ッ!」
由紀乃の目がカッと見開かれるー。

「---!!」
弥一が驚くー

由紀乃の顔に、紋様のようなものが現れて、
目が赤く光り出すー。

「--しゃああああああああ…」
由紀乃の口から牙が生えてー
角が生えるー。

やがて、爪が獰猛なものに代わりー
肌の色が、青みがかった不気味な色に変わっていくー

「うわあああああああああ!?なんだこれは!?」
「きゃああああああああああああああ!」

再び観客たちから悲鳴が聞こえ始めるー

弥一は「な、、、な…」と、驚きながら
怪物化した由紀乃の方を見つめるー

「ぐふふふぅ…我の真の力を見せてやるぞー」
ネール姫役の由紀乃が着ていたドレスが
紫色に染まっていくー。

「---な、……」
弥一は困惑していたー。

一体、何が起きているのか、さっぱり理解できないー

由紀乃さんは無事なのだろうか、と
心配になってしまうー

「---あぁぁあ…あぁっ」
観客から見えない位置の舞台脇から
状況を守っていた魔王サタン役の又原は、尻餅をついて、
あまりの恐怖にお漏らししてしまっているー

「----」
弥一は、頭を咄嗟にフル回転させたー

”こいつはいったいー…”

すぐに劇を中止して、
助けを呼ぶべきだろうかー。

いやー
しかしー

観客たちの方を横目で見つめる弥一ー
観客たちは悲鳴をあげたり、不安そうにしたり
これを劇と信じて目を輝かせている人もいるー。

もしーー
もし、”劇ではなく、本当にヒロイン役の女性が憑依された”と
観客たちが知ったらー
大パニックが起きるのは目に見えているー

当然、舞台という、せっかくの楽しみを台無しにされてしまうだけではなくー
舞台に対して恐怖心や悪いイメージを抱くかもしれないー

そして、由紀乃ー。
今ここで”憑依”を悟られれば
観客の誰かは必ず由紀乃が憑依されたことを
ネット上に晒したりするだろうー

由紀乃の人生は、それが原因で壊れてしまうかもしれないー

”ここはー”
リチャード役の弥一は決意するー。

「--俺は、姫様をお守りする騎士・リチャードだ!」

役になりきれー。
弥一は自分にそう言い聞かせながら、
禍々しい魔王のような姿に変貌した由紀乃の方に向かっていくー

「--虫けらがぁ!」
由紀乃とは思えないような不気味な声で叫ぶ由紀乃ー

弥一が思いきり吹き飛ばされるー。

「---ネール姫の身体を…返してもらうぞ!」
騎士リチャード役の弥一はそれでも引かないー。

ネール姫役の由紀乃の方に向かっていきー
必死に「ネール姫!目を覚ましてくれ!」と叫ぶー。

本当は”由紀乃さん”と呼ぶべきだろうがー
”劇”ではネール姫ー
あくまでも弥一はプロ意識を持って
なんとか劇を成功させようと、そう願っていたー。

・・・・・・・・・・・・・

「か、、か、、監督!」
魔王サタン役の又原が監督のいる部屋に駆け込むー

髭が特徴的な監督、堀田(ほりた)監督は
真剣な表情でモニターを見つめているー

「--やばいですよ!警察と救急車を呼びましょう!
 由紀乃さん、ホントに何かに憑かれてる!」

又原が叫ぶー

だがー
堀田監督は、まっすぐとモニターを見つめたままー

「--……弥一くんの思いを、我々が無駄にしてはいけない」

「え?」

堀田監督の言葉に、
又原は戸惑うー。

「-弥一くんは、なんとか”劇”を続けようとしているー
 我々が、それを邪魔するわけにはいかないー。

 もう少しー
 もう少し、様子を見ようー」

堀田監督たちも、当然異変には気づいていたー。
だが、弥一の”意地でも劇を続けよう”という意思を尊重してー
ギリギリまで、弥一の思う通りにさせよう、と考えていたー

「-----おい!照明と効果音、それにBGM!
 弥一くんを助けてやれ!」

堀田監督が叫んだー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

♪~~~

戦いのBGMが流れ始めるー

観客たちの混乱は、少しだけ落ち着くー

”まだ普通に劇をやっているってことはー?”
”トラブルじゃないってことかー”

そういう安堵が、伝わり始めたのだー


「---ーー!」
魔王ガロンに憑依された由紀乃が、天井を見つめるー

BGMが流れたことに驚いているようだー。


「--魔王ガロン!」
リチャード役の弥一が叫ぶー。

「ーーお前は、何者だ!?」
とー。

何者か聞くことは”劇”としても正しい。
”ポゼッションプリンセス”の物語内で戦っていた敵は
魔王・サタンー。

そのサタンではなく、別の魔王が憑依したのだから、
何者か聞くのは、物語としても間違っていないー

「我は魔界の魔王ー…
 魔界の真なる支配者…

 人間界に”接続”する方法を見つけー
 こうして、この姫の身体を乗っ取ったー」

長い爪を見つめながら、
由紀乃が笑みを浮かべるー

「--魔王サタンの他に、魔王がいたってことか」
弥一が言うー。

あえて”劇”っぽくー。

「魔王サタン?そのような魔王はーー」

「---うおおおおおおおお!!!」
魔王ガロンに憑依された由紀乃が余計なことを言う前に、
弥一は、由紀乃の方に突進するー

由紀乃が、爪で弥一を襲うー

弥一は、それをなんとか回避するー。

だがー
由紀乃がニヤリと笑みを浮かべたー。

もう片方の手から生えた
獰猛な爪が弥一を襲うー

「--!」
弥一は一瞬、死を覚悟したー。

しかしー

パッ!!!
舞台の照明が、由紀乃の目を照らすー

「ぐおおおおおおおおおおっ!」
由紀乃が悲鳴を上げるー

「---!」
弥一が、舞台裏の方を一瞬見つめるー

”監督たちかな…?ありがとう”

そう思いながらー
弥一は由紀乃の方を見たー

「覚悟しろ!魔王ガロン!」
由紀乃の額のあたりに赤く光る
クリスタルのようなものが見えるー

なんとなくー
弥一はそれが由紀乃を乗っ取っている
魔王ガロンの”コア”のような気がしたー。

「うおおおおおおおおおおお!」
弥一が飛び跳ねるー
そして、魔王ガロンに乗っ取られた由紀乃の額の
赤いクリスタルをー

攻撃、破壊したー

「ぐあああああああああああああっ!!!!」
ネール姫役の由紀乃が頭を抱えながら苦しみだすー

由紀乃の顔の紋様がー
皮膚の色がー
逆立った髪がー
爪が、牙が消えていきー
元通りになっていくー

「---あ」
由紀乃が舞台上に倒れるー

”由紀乃さん!”と叫びそうになるのをこらえて、
リチャード役の弥一は「ネール姫!」と叫ぶー

駆け寄った弥一。
ネール姫役の由紀乃は目を覚まして、
状況が分からぬまま、
「リチャード…」と答えたー。

「--姫様、もう大丈夫です。
 魔王は、滅びましたー」

その言葉に、
由紀乃は、弥一が助けてくれたのだと感謝するかのように、
嬉しそうに弥一に抱き着いたー。

幕が下りるー

観客席から拍手が響き渡るー


「--はぁ…はぁ…」
弥一が力尽きた様子で座り込むー

魔王サタン役の又原が、「今すぐ救急車を!」と叫んだー

由紀乃は、「わたし…」と戸惑っているー。

「--大丈夫…もう、大丈夫」
リチャード役の弥一は、由紀乃に対して、そう語り掛けたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

弥一は病院に運ばれ、治療を受けて
すっかり元気になったー

あの日、由紀乃が本当に乗っ取られたことはー
観客には悟られず、
あくまでも劇として演じ切ることができたー。

由紀乃は大事を取って降板し、
別のネール姫役が用意され、
弥一と又原は、今日もポゼッションプリンセスの公演を続けているー


・・・・・

ガチャー

「----」
堀田監督が顔を上げるー

そこには、由紀乃の姿ー

由紀乃が、まるで悪女のような格好をして、
堀田監督を見つめるー

堀田監督が、由紀乃の前に膝をついたー

「魔王ガロン様ー」
とー。

「---お前が、我をこの世界に呼んだのか?」

「--はい」
堀田監督が頭を下げるー

「ふん」
由紀乃が腰に手を当てながら、
偉そうな態度で呟くー

「まさか、異世界のものに召喚されるとはなー」

魔王ガロンは
異世界で勇者に追い詰められていた魔王ー

なりふり構わず、魔力でSOSを発していたところ、
異世界にまでその信号が届きー
スピリチュアルな研究を繰り返していた堀田監督が
その信号を受信したー。

魔王ガロンの避難先として”身体”を提供する見返りとして、
由紀乃の身体を乗っ取ることに成功した場合は、
その身体を抱かせてほしいー、と、堀田監督は要求していたー

「---魔王をお芝居に付き合わせるとはな」
由紀乃が笑うー

劇で、弥一に倒された”ふり”をしたー
だが、由紀乃は、解放などされていないー
ずっと、乗っ取られているー

「まぁ良い。貴様は我の恩人ー
 この女の身体で、これからは存分に楽しませてやろうー」
由紀乃の声で、魔王ガロンに乗っ取られた由紀乃が呟くとー
堀田監督はニヤニヤと笑みを浮かべたー

そして、妖艶な格好をした由紀乃と堀田監督は
抱き合い、激しいキスを始めるのだったー


おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

もしも劇中に憑依されてしまったら…?を
書いてみたお話でした~!

監督は、楽しい日々を送ることになりそうデス~!

お読み下さり、ありがとうございました!!

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無名

Author:無名
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