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<他者変身>奇跡の再会①~あの人ともう一度~

”あの人にもう一度会いたい”

そんな願いを自身の”他人に変身する能力”で
叶えている男がいたー。
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「---会いたかったー」
若い男が、涙をこぼしながら言うー。

相手の若い女性は、”あの時のまま”の姿ー。

「--…本当に、ごめん…
 俺が…俺が…」
男は、涙をこぼしながら、その彼女に語り掛けるー。

彼女は、既に”この世に”いない女性だー。
2年前、彼女は事故で死亡しているー。

原因は、”煽り運転”だー。
煽り運転と言っても、この男がしたわけではなくー、
別の車が仕掛けてきて、その結果、事故が起きてしまい
助手席に乗っていた彼女が死んでしまったのだー。

「---ううん。龍介(りゅうすけ)は別に悪くないよ」
2年前に死んだ彼女・幸恵(ゆきえ)が優しくほほ笑むー。

龍介は、この2年間、ずっと後悔していたー。
幸恵が死んでから、毎日、毎日後悔していたー。

あの日ー
もし自分がドライブに誘っていなければー

あの日ー
途中で立ち寄ったファミレスで、幸恵の言う通り
”もう少しゆっくり”していればー

あの日ー
もっと自分が上手く、煽り運転の車を避けていればー

何度も何度も
”別の運命はなかったのか”と、自問自答したー。

「ーー龍介は、わたしを守ろうとしてくれただけー。
 龍介が、そんな風にずっと悩んだままだと、
 わたし、悲しくなっちゃうー」

幸恵が寂しそうに言うー。

度を越した煽り運転を仕掛けてくる車に対して、
幸恵が過呼吸を起こしかけたのに気づいてー
煽り運転を車を必死にやり過ごそうと運転していた龍介が、
一瞬、幸恵の方に気を取られたその瞬間にー
事故は起きてしまったのだー。

「---でもー」
龍介の目から涙が溢れるー。

どうすれば良かったのかー

既に、煽り運転をしていた男は逮捕されているが、
それでも、幸恵は戻ってこないー。

「--……わたし、ずっと龍介のこと見てるからー…
 だから、もう元気出してー」

幸恵が寂しそうに微笑むー。

「---もう、行かなくちゃ」
幸恵が笑うー。

龍介は「待ってくれ…!」と叫ぶー。

”奇跡の再会”
死者ともう一度会えるのは、限られた時間のみー。

「---……わたし、怒ってなんかないし、
 龍介のこと、恨んでなんかないー。
 
 龍介に伝えたいことは”ありがとう”って気持ちだよー。

 だからー
 元気出してー

 ね?」

幸恵はそれだけ言うと、周囲に煙のようなものが現れるー。

”幸恵があの世に戻る”のだー。

「---…」
龍介は、もう幸恵を呼び止めなかったー。
幸恵は既に死んでいるー。
どんなに呼び止めても、たぶんあの世に帰ってしまうー。

その代わりにー
龍介は涙を拭いて叫んだー

「--わかった!幸恵!
 幸恵が安心できるように、俺、頑張るからー!
 だから、そんな寂しそうな顔、しないでくれー!

 約束するー。
 俺、前を向いて生きるってー」

龍介が叫ぶと、幸恵はにこっと微笑んでー
そのまま、煙に包まれて、姿を消したー

「---幸恵…」
龍介は、ずっとずっと”自分のせいで幸恵を死なせてしまった”と
自責の念に駆られていたー。
この2年間、ずっと…。

けれどー
こうして幸恵と再会したことで、
龍介の心は、晴れていたー。

”幸恵…俺、前向きに生きるからー。
 この2年間、心配かけて、ごめんなー”

そう呟くと、龍介はそのままその場所を後にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

後日ー

「本当に、ありがとうございました」
龍介が頭を下げるー。

「--彼女さんとちゃんと、お話できましたか?」
優しそうな雰囲気の男が、笑みを浮かべながら言うー。

まるで、世の中のすべてを見通しているかのような
雰囲気を持つ不思議な男だー。

「はいー。
 彼女と話して、前向きに生きていく決意ができましたー」

龍介が言うー。

ここはー
”死者との再会を望む人々が足を運ぶ場所”-

”現世とあの世を繋ぐ仲介人”を名乗る男・板倉(いたくら)は、
”あの人ともう一度会いたい”という人々の願いを叶えているー。

「--それは良かった」
板倉は笑うー。

「--本当に、ありがとうございました」
龍介は、支払いを終えると、そのまま頭を下げて立ち去っていくー。

”死者との再会”ビジネスを行っている
現世とあの世を繋ぐ仲介人・板倉は、ため息をついたー。

「----…これで、彼もきっと、前向きに生きていけるだろうー」
とー。

彼は、実際に”死者との再会”を実現させているわけではないー。
死者は、生き返らないー。

死後の世界があるのかどうかは、
実際に自分がこの世を去るときにならないと分からないけれどー、
少なくとも、一度死んだ人間は、この世界に戻って来ることはできないー。

けれどー
それでも、今の客・龍介のように
”心が晴れるのであれば”
それはそれで、良いことだと、板倉は考えていたー。


彼はー
”他人に変身する力”を生まれつき持っていたー。
理由は分からないー。

中学時代にその力に気づいた彼はー
”この力を何か人助けに利用できないかどうか”を考えたー。

家族にも、友達にも、誰にも教えていないこの力ー
それを、役立てる方法はないか、とー。

その結果、たどり着いたのが
”現世とあの世の仲介人”だったー。

死んでしまった大切な人にもう一度会いたいー。
そう願う人は多いー。

この”変身能力”によって、板倉はそれを叶えているー。

そうー
龍介が再会した”2年前に死んだ彼女・幸恵”は、
この板倉が変身した姿であり、
本物の幸恵ではなかったー。

けれどー

龍介にとっては、板倉が変身した偽の幸恵を
本物だと信じ、
そして、彼女を失ったショックから立ち直るきっかけとなったー。

板倉は、”仲介料”として報酬を受け取っているー。
もちろん、法外な金額ではなく、常識的な金額だー。
お金がなければ、板倉とて、生活することはできないー

そしてー
”本物の幸恵”にとっても、きっとそれは
喜ばしいことのはずだったー。
本物の幸恵だって、話を聞いた限り、
龍介のことを恨んでなんかいないだろうし、
もしもあの世から、龍介のことを見ていたら
同じようなことを言っただろうー。


”現世とあの世を繋ぐ仲介人”・板倉の
”死者との再会”のシステムはー

”依頼”
”再会”
”支払い”

で成り立っているー。

”依頼”-
まずは、客から依頼を受け、その際に「再会したい相手の写真」と
「性格」「どのように亡くなってしまったのか」
そういう情報を依頼人から聞き取るー。
そして、再会の日時と場所を話し合い、決めるー。

”再会”
当日に、板倉は依頼人が望む相手に変身した上で
依頼人と会うー。
予め”依頼”の際に聞き取った情報を元に、板倉は本人として振舞う。
そして、制限時間つきの会話を行ったうえで、
板倉は特殊な煙幕を使い、”死者があの世に帰って行った”ことを
演出し、その場を離れる。

最後に”支払い”
後日、依頼人から報酬を受け取り、終了、
という流れになっているー。


「ふぅ…」

昔からお人よしの板倉は
この”変身”能力に気づいたときも、
一切悪用することはなかったー。

他人の姿で悪さをすることもなかったし、
下心を満たすために使ったこともないー。

数日前のように、幸恵のような女性に変身したときも、
身体を必要外で触ったりすることは、一切しないー。

彼は、とても真面目な性格だったー。

”変身能力”に気づいたときも、
真っ先に考えたのが
”この力があれば、誰かを救うことができるのではないか”と
いうことだったー。

だがー
真面目すぎる故の”悩み”もあったー。

さっきの龍介のように
依頼人はいつも、とても喜んでくれるー。

本人が、”本当に死んだあの人と再会できた”と思っていて、
幸せに感じているのだから、それで良いのかもしれないー。

それでもー
”騙している”ことには違いないー。

龍介と会ったのは
”本物の幸恵”ではなく”板倉が変身した幸恵”であり、
幸恵でないことも、また、事実なのだー。

今までの依頼人たちの嬉しそうな顔ー
悩みを払拭して前に進む依頼人たちの顔を
思い浮かべると同時にー

”騙している”という罪悪感が、板倉を苦しめていたー。

「--!」
その時だったー。

自分と同年齢ー
20代後半ぐらいのスーツ姿の男が入って来たー

「---!!」
その顔に、板倉は見覚えがあったー。

「-風原(かざはら)-」
高校と大学時代の親友・風原 誠太郎(かざはら せいたろう)-

「---いやぁ、久しぶりだな!
 ここ数年、連絡もとってなかったから、
 どうしてるかな?って心配してたんだよ」
板倉が言うと、誠太郎は「お互い忙しくなったからな」と笑ったー。

少し軽そうに見えるものの、人は良さそうな雰囲気を
醸し出している誠太郎は、板倉の事務所を見渡しながら、
「しっかし、こんなところで仕事してるってのは、本当だったんだな」と笑うー。

板倉の仕事は”あまり大々的に言うもの”ではない。
”知る人ぞ知る”という状態で、
ネットなどでの情報拡散は、控えるように”依頼人”にも伝えてあるー。

それでも、もちろんネットで口走ってしまう人間もいるのだが、
こうして細々と”現世とあの世を繋ぐ仲介人”として
仕事を続けることが出来ている。

ネットの世界には”偽り”の情報もたくさんあるー。
少数の人間が板倉の話題を出しても、
”死者との再会”
”仲介人”
というワードは、あまりにも現実離れしすぎていて、
鵜呑みにする人間は、少ないー。

そして、板倉は、そんな”限られた人間相手”の商売をする場所として、
寂れた街の裏路地に事務所を構えていたー。

「--に、しても、こんな人の気配のないような場所で
 何やってるんだよ?
 何かイケない取引でもしてるのか?」

誠太郎が言うと、
板倉は少しだけ表情を曇らせたー。

「---ここに来たってことはー…
 ”分かってて”来たんじゃないのか?」

とー。

板倉のこの事務所を訪れる人間は、
ネット上でわずかに流れている”現世とあの世を繋ぐ仲介人”の噂を
信じて、藁にもすがるような思いでやってくる人々がほとんどだー。

”たとえ嘘でもいい”
”たとえ都市伝説でもいい”

”大切なあの人にもう一度出会える可能性が
 たとえ0.1%でもあるのであればー”

そんな思いから、やってくる人たちだー。

「---…」
誠太郎は「ははは」と、笑ったー
寂しそうな、表情ー。

誠太郎には、”病気の妹”がいたー。
誠太郎と板倉が高校時代の時から病弱で、
大学時代には”多少は回復した”と聞いたー

だがー

「--まさか」
板倉が言うと、
誠太郎は「---…そうだよ」と、悲しそうに頷いたー。

写真を板倉のデスクに置くと、
誠太郎はまっすぐと板倉の方を見つめたー

「----板倉…
 いいや、”現世とあの世を繋ぐ仲介人”かー?

 頼むー。
 俺をー俺を、妹ともう一度会わせてくれー」

誠太郎の言葉に、
板倉は激しく動揺したー。

誠太郎の妹・美里(みさと)-
板倉も、誠太郎の親友として面識はあったし、
誠太郎を含む3人で遊んだこともあるー。

最近はどうしてるかな?と思いつつも、
誠太郎も板倉も社会人になったことでー、
なんとなく連絡する機会がないまま、
ここまで来てしまったー

「---俺の妹ー美里ー。

 風原 美里にもう一度、会わせてくれー」

土下座する誠太郎ー

板倉は、そんな誠太郎を見つめながらー
”俺はーーー
 親友を、騙すのかー?”

”それで、いいのかー?”

と、自問自答したー。

”妹と再会”
それを実現することはできるー。

だが、それはー”表向き”のみー。

板倉が「美里」に変身して、
誠太郎に会うだけなのだー。

これまでの客と同じように、
板倉はきっと満足してくれるだろうー。

だがー。

”俺は…どうすればー”
板倉は、そう思いながら、土下座する親友を見つめたー。


②へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

今回は変身能力を”善”の方向に利用している
男の物語ですネ~!

”悪”を望む人には物足りないかもしれませんが、
たまにはこういものも~…!
(と、言いつつ、2話で急にダークになったりする可能性も…?笑
 ※なるとは言ってません)

続きはまた明日デス!

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無名

Author:無名
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