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<憑依>木漏れ日~こもれび~③”光”(完)

妹の体に憑依している兄・隆介は決意する。

妹を守るために、自分が消えると。


”お兄ちゃんが、、何かあっても必ず守るからなー”

その約束を果たすために。
--------------------------

日曜日。

いつものような朝日を見ながら目を覚ます千鶴。

千鶴に憑依した兄の隆介は、
眩しい朝日を見つめながら思う。

”これが最後の朝日になる” とー。

「はは・・・やっぱり・・・休みの日の朝っていいよな・・・」
千鶴(隆介)は呟いた。

小さいころ、家族でよく訪れた山奥の湖。
最後に、あそこに行きたいーーー。

あの湖はーー
思い出の場所だからー。

「-----おはよう」
父の秀蔵に挨拶をする。

「おう」
秀蔵が新聞を読みながら挨拶した。

手短に朝食を済ませる。
体調はかなり、悪くなっていた。

もう、あまり時間がない。

早く、自分が消えなくてはならない。

このことを妹の千鶴にはまだ伝えていない。
”自分が消えるつもりであることを”

「--ちょっと出かけて来るね」
千鶴(隆介)が言う。

あの思い出の場所で、
妹と最後のひと時を過ごしたら、
もう、自分に未練はないー。

いつもいつも、妹ばかり、、
そう思っていた。

けれどー
妹の千鶴は、家族には見せないだけで、
本当はとても苦労していた。

クラスの陰険女子、蘭子や、
DV男の裕彦―

「--千鶴も、苦労してたんだな・・・」

千鶴(隆介)は静かに呟いた。

「おい・・・本当に”行くのか”?」

父の言葉が背後から聞こえた。

千鶴は立ち止まる。

「---行くのか?」
父が新聞を畳んで、千鶴に近づく。

「---お父さん?」
千鶴のフリをして、振り返る。

父の目はーーー
優しさに満ち溢れていた。

「--俺、、お前が退院したときから、ずっとわかってたんだ・・・
 隆介、お前なんだろ?」

父が言う。

「---え、、、わたし・・・」

最初は千鶴の人生を奪おうとしたーー。
途中からは、、余計な心配をかけまいとしたーー。

「---そんな顔するな。
 千鶴も、隆介も、、俺にとっては大事な子供だ」

父が千鶴の肩をつかむ。

「---強くなったな」
父が、普段、隆介にはめったに見せない笑みを浮かべた。

「---父さん・・・」
千鶴(隆介)はそう呟いた。。


「---ごめんな・・・
 父さん、、お前にはいつも辛くあたってしまった…
 
 お前のことが嫌いだったんじゃないんだ・・・。
 お前も、千鶴も俺の宝だ・・・

 でもな・・・俺はバカだから・・・。
 お前を一人前にしようとするあまり、つい辛くあたってしまった…」

父が悲しそうに言う。

「---・・・・・・いいよ・・・
 父さんには感謝してる。
 ・・・ありがとう」

千鶴(隆介)はそう呟いた。

父は少しだけ笑った。

そしてーー
千鶴を抱きしめて言った。

「--ごめんな・・・・・・
 お前・・・・・・消えるつもりなんだろ・・・?

 本当は俺が代わってやりたい・・・
 でも・・・・・・」

父が声を震わせて言う。


「大丈夫だよ・・・父さん・・・
 俺、、小さいころ、千鶴と約束したからーー

 
”お兄ちゃんが、、何かあっても必ず守るからなー” ってーーー」

千鶴(隆介)が言うと、
父は手を離して頷いた。

そして、千鶴から目をそむけると、父は言った。

「お前はーー、俺の誇りだ」

それだけ言うと、父はもう何も言わなかった。

「---ありがとう。父さん」

千鶴(隆介)はそう言うと、
”最後”に住みなれた家を見渡して、
微笑んだ。

「いってきます」

千鶴は玄関をくぐり、
思い出の場所へと向かった。


父は、悲しそうに玄関を見つめる。

そしてーー
寝室で一人涙を流していた妻・月子の元へ向かう。

「------もう、、行ったの・・・?」
母の月子も、息子と娘のことに気づいていた。

「あぁ・・・」
秀蔵はそう呟くと、月子を優しく抱きしめた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ここは、昔から変わらない。

静かで、人の気配のあまり無い。
けれども小さな自然。

自宅から30分ほどの小さな山に足を踏み入れようとする
千鶴(隆介)

「最後は、、やっぱここだよな・・・」

ズキズキ痛む体にムチを入れ、
山を登る。。

そしてーー
隠れた場所にある思い出の場所
”湖”に辿り着いた。

いつも小さいころ、家族で訪れた場所。

静かな水面。

のどかな景色。

ここは、いつでも変わらないー。

「---」
千鶴(隆介)は、いつもの木陰に足を運んだ。

この木陰に差し込む、木漏れ日は、、
小さいころと全く変わらない。

”お前はあの、光のように、
 影をも照らす存在になれー”

父はよくこの木陰から木漏れ日を指さして
そう言っていた。

自分は、、影を照らせるような存在にはなれなかった。
けれどーー。

「---また、みんなで来たかったな・・・」
木漏れ日を見つめながらそう呟く。

「-----次に生まれ変わったら・・・
 また、みんなと会えるかな・・・」

そう呟いて、差し込む木漏れ日に
手をかざしたーー


「---隆介・・・」

木陰から、見覚えのある女子が姿を現した

「--みさ、、い、、、いえ、、厚谷先輩・・・」

隆介のクラスメイト、厚谷 操。
いつも口げんかの絶えない間柄だった。

「ーーーどうして、ここに・・・?」
千鶴(隆一)が訪ねると
操が笑った。

「それは、秘密。
 私、アンタの考えることなんて分かるんだからー」

「えーー?」

”アンタ”と呼ばれて、千鶴は首をかしげる。

「--千鶴ちゃんの体に憑依しちゃうなんて、、
 とんだ変態ね、、呆れた。。」

ため息をつきながらも、操は笑っている。

「ーーみ、、操・・・どうして?」
千鶴は正体がばれていることを悟り、言う。

「--ふふ、、秘密。」

操は続けた。

「--隆介・・・・・・
 消えるつもりなんでしょ?」

操の言葉に、千鶴(隆介)は
「はは、、全て御見通し・・・か」とつぶやいて、
木陰に腰をおろし、今までの経緯を説明した。

操は茶化すことなく、真剣に聞いて、
そして話を信じてくれた。

「---そう。。
 アンタにしては良く頑張ったわね・・・」

操がほほ笑む。

「アンタにしてはって何だよ!」

側からみれば女子高生二人の会話ー。
けれども・・・

「--どうせ最初は千鶴ちゃんの体で~
 とかいやらしいこと考えてたんじゃないの?」

操の言葉に、千鶴が顔を赤くする。

「--ふふ、図星ね」
呆れ笑いをして操が湖の方を見つめる。

「---寂しくなるなぁ・・・」
操がつぶやいた。

千鶴は操の方を見る。

「--もう、、アンタにグチグチ小言言えなくなっちゃうね・・・・・・」

操が目から涙をこぼしている。

「操・・・」
千鶴がつぶやくと、操は涙を拭いてほほ笑んだ。

「千鶴ちゃんを守る為なんだもんね!
 ・・・立派・・・、、本当に立派だよ・・・」

操が悲しそうに言う。

「ありがとう・・・。

 でも、俺・・・結局、彼女なしのまま、あの世に行くのか・・・」

千鶴(隆介)は呟く。

よく操に”彼女なし”をからかわれていた。

「---ふふ・・・そうね・・・  でも・・・」

そう言うと、操が長い髪を抑えながら、
千鶴にキスをした。

「えーーっ?」

唇を離し、操は笑う

「女の子にキスするって、、変な気分ね・・・」

そして続けた。

「--私が、、彼女になってあげる」

操の言葉に、千鶴(隆介)は呟いた。

「はは・・・速攻でお別れのカップルじゃんか・・・」
そう言いながらも千鶴は嬉しそうだった。

ビクン・・・

心臓が苦しくなる。

胸を押さえて、千鶴は言う。

「---もう、、きついな・・・
 そろそろ行かなきゃ」

そう言って、ほほ笑む千鶴。

操は悲しそうに千鶴を見つめる。

「--ー最初で、最後のデートね・・・」
木漏れ日を見つめながら言う操。

「---短すぎだろ・・・」
千鶴が自虐的に微笑むと、
操が言う。

「--ごめんね。。
 童貞卒業はさせてあげられないね?」

冗談めいて言う操。
千鶴も笑う。

そしてーー
千鶴は真顔で操の方を見て言った。

「ありがとうーーー。
 あの世に行ったら、自慢する。
 ”俺には最高の彼女が居た”ってー。」

千鶴(隆介)が言うと、
操がほほ笑んだ。

「じゃ、私はこっちで自慢するー。
 最高の彼氏が居たって」

そう言うと、二人とも微笑んで、
最後に二人でお互いを抱き合った。

「---ごめん 操」
千鶴がそう言うと、

操は涙を流しながら、
「いいの・・・・・・私こそ、、何もしてあげられなくてごめんねーー」
とつぶやいた。

そして、、
千鶴は操の肩を優しくたたいて、
木陰から湖の方に歩いて行く。

操は、、悲しそうな目で千鶴を見つめた。

湖の前に立つ千鶴。

「---もっと早く・・・大切なものに気付けていればーー」

湖を眺めながら呟く。

もっと早く、妹のことに気付けていれば、、、

もっと早く、父と母の愛情に気付けていれば、、、

もっと早く、操の想いに気付けていれば、、、

あんな風に妹を罵倒してーー
あんな事故を起こすことも無かったのかもしれないーー。

「バカだなーー俺・・・」

隆介には、自分が消える方法は
何故だか分かる気がした。

目をつぶって・・・


ーーーー!?

辺り一面が白い景色に包まれる。

「---お兄ちゃん」

隆介が振り返ると、そこには千鶴が居た。

「千鶴ーーー」
隆介がその名を呼ぶと、千鶴は微笑んだ。

「私が、気づかないとでも思ってた?
 何も言わずに、一人で逝こうとしたでしょ?」

千鶴が笑う。

「--やっぱ、、ばれてるよな・・・
 同じ体、使ってるんだもんな・・・」

千鶴は、、当然、兄が何をしようとしてるか御見通しだった。


「---厚谷先輩、私が呼んじゃった」
千鶴が笑う。

「ははー、、、おせっかいだなお前は」
隆介はそう言ったが、すぐにほほ笑んで続けた。
「でも、ありがとう」

千鶴が笑って頷く。

「ーーどうしても行かなくちゃいけないの?」
千鶴の言葉に隆介はうなずく。

「あぁ・・・千鶴だってわかってるだろ?
 体のこと。。
 ひとつの体に、2つの心は居ることができない」

隆介が言うと、千鶴が悲しそうにする。

「--だったら私が・・・!」

「ダメだ!」
隆介は叫んだ。

「--お前は、、父さんと母さんのところに居てやれ。
 ・・・・・・な?」

そう言って千鶴の肩を叩くと、
千鶴は目から涙を流しながら
「でも・・・でも・・・」と呟く。


「--泣くなよ。。
 俺、、約束しただろ?
 
 ”お兄ちゃんが、、何かあっても必ず守るからなー”って・・・

 最近、全然お兄ちゃんらしいことしてやれなかったけど・・・
 俺、、お前のこと大好きだから」

涙を流しながら頷く千鶴。

「それにーー
 もう女の体には飽きちゃったし」

隆介が言うと、

「全く、お兄ちゃんは失礼なんだから」
と泣きながら千鶴が笑う。


「-------」

隆介は千鶴の方を見つめた。

もう、行かなくてはならない。


「---じゃ、、、
 父さんと母さんのこと、頼むよ・・・」

そう言って、隆介は微笑んだ。

そしてーー
千鶴に背を向け、白い光の中を歩き出す。

自分の人生はーーー

「--お兄ちゃん!」
千鶴が背後から叫んだ。


”---お兄ちゃん、大好きだよ”

千鶴がそう叫んだ。

小さいころ、よく兄の隆介に言っていた言葉。。


「----千鶴」
隆介は振り返り、ほほ笑んだ。

「--俺も、、お前が大好きだよ」
優しくつぶやいて、別れの挨拶に手をあげたまま、
背を向けた。


「---最後の最後まで・・・
 かっこつけんな!バカ!!!!」

千鶴が泣きながら背後で叫んだ。

隆介はーーーー
もう振り返らなかった。

振り返ればーーー
また、”戻りたくなってしまうから”

大切な人たちのところにー。

「----みんな、ありがとうーーーーー」

隆介は静かに目を閉じながら、白い光の中を進んだーー
大切な妹を守るためにーーーー

・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・。

千鶴は湖の前で涙を流していた。

「ありがとうーー
 お兄ちゃん・・・」

そう呟く千鶴のそばに、、
操が寄り添い、静かに千鶴を慰めた。

ーーー湖を見つめて、操は静かにほほ笑んだ。

「---いいお兄ちゃんね・・・」 と。


隆介のお気に入りだった木陰には、
いつものように、木漏れ日が差し込んでいたーーー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

1年後。

「---」
千鶴が、”隆介”の好きだった場所を訪れた。

隆介の好きだった場所。
木漏れ日差し込む木陰に、、
小さな木の棒と、花が添えられていた。

隆介が死んだのは、交通事故に遭った場所。

でも、隆介の魂はここでー。

ここは、千鶴と、操だけの秘密の場所。
二人で作り上げた秘密の墓ー。

「---アイツ、今どうしてるかな?」
一緒に来ていた操が言う。

「---・・・お兄ちゃんはきっと、、
 あっちでまたバカやってると思います」
千鶴が悲しそうに、花を見つめながら微笑む。

「--そうね」
操も悲しそうに、そう呟いた。

花を見つめながら千鶴が言う。

「---私、ここに今でもお兄ちゃんがいる気がして、
 こうして時々、足を運んでるんです」

千鶴が言うと、操がほほ笑んだ。

「私もそんな気がするー。
 きっと、アイツ、喜んでるよ」


ーーー兄の隆介は、妹の千鶴をその身を持って守り抜いた。

”お兄ちゃんが、、何かあっても必ず守るからなー”

兄として、その約束を果たしたのだった。


「----お兄ちゃん・・・ありがとう。
 ・・・また来るね」

千鶴がそう呟き、
操と一緒にその場所を後にする。


風が吹くー

木々が”ありがとう”とでも言いたげに不自然に揺れたー。


「-----」
千鶴はその様子を見て微笑んだ。

「--お兄ちゃん・・・またね」  と。


おわり


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

彼も逝きたくはなかったでしょうけれど…。
最後は笑顔だったので少しは救われた、、ハズです。。

ダーク要素はほとんどありませんでしたが
お読み頂きありがとうございました!



コメント

No title

家族の愛が伝わってきました

Re: No title

> 家族の愛が伝わってきました

それは良かったです!
黒い小説ばかりではないということで…。
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無名

Author:無名
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