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<憑依>ホテルノシハイニン~霧の舞う夜~”イスミ・ミストの闇”

ホテル支配人 名倉俊之。
とあるホテルの女支配人、亜衣の体を乗っ取り、
ホテルの運営を続ける彼の前に、"恐怖”が訪れる。
(過去のホテルノシハイニンはこちら)

闇の霧”井澄ミスト”ー
ホテル支配人・名倉俊之。

めぐり合ってはいけない闇が巡り合ったとき…何が起こるのか。

霧のかかった坂の管理人様、
井澄ミスト様のご許可を頂き、実現した小説です!

作中に、井澄ミスト様がゲスト出演します。
※作中では敬称略です。
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「私の人生、終了させちゃうよぉ~あはははははっ!」

20代前半と思われる女性が、ホテルの駐車場で叫んでいる。
その女性の近くで、若い男が「やめろ!」と懸命に叫んでいる。

彼氏だろうか。
それとも、夫だろうか。

駐車場で、停車された車に、笑いながら自らの頭を力強く、
何度も何度も打ち付けている女性。

可愛らしい、まだあどけない表情の彼女の
顔面からは血が流れていく。

「---やめろって!どうしたんだよ!」
男が、女性を抑えるが、女性は顔に似合わない乱暴な口調で
「邪魔だ!」と叫んだ。

突き飛ばされる男。

そして、
「うふふふふふふっ♪
 わたしは、、私はもう、人生の幸せを使い果たしたの!
 あはははっ!

 だから私、人生終了させるの!」

目に涙を浮かべながら、
狂気の笑い声を周囲に響かせ、頭を力強く打ちつける女性。

そしてーーー
彼女は”壊れた”

ーーー真っ青になりながらも笑みを浮かべながら
最後に呟いた

「わたし・・・の・・・人生、、終了で・・・ございます」  と。

彼女はそのままその場に倒れて、動かなくなった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「---支配人 駐車場で自殺騒動が…」
受付係の一人が言う。

ホテル支配人の
波川亜衣。

着物姿が似合う、和を体現する若き女支配人。

しかし、彼女はーーー
別のホテルの支配人だった男、名倉俊之に憑依され、
もう半年近く、その肉体を名倉に操られている。

そしてーー
名倉は過去の経験から
”人生の幸せを使い果たした人間は、
 人生を終了させなければならない”という狂気の思想にかられ、
ホテルにやってきた幸せそうなカップルや、夫婦の人生を
”終了”させ続けている。

たった今、
駐車場で犠牲になった女性もー
名倉が憑依して、自ら人生を破壊してやったのだ。

「--人の幸福には上限値がある。
 彼女はそれを早く使い果たしただけだー。」

名倉は心の中で、そう呟き、笑みを浮かべた・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日。

夜のロビーで、亜衣(名倉)は点検作業を行っていた。

元々、名倉は優秀なホテルマンだった。
すっかり歪んでしまった今も、ホテルマンとしての仕事、接客は
超一流だった。

"人の人生を終了させる”という点を除いては。


「--お、、おい、急にどうしたんだよ」

ロビーの休憩所で、大学生の男がうろたえている。

「ねぇ…私…、、急に興奮してきたの・・・
 狂っちゃいそう…

 なんだか分らないけど…・・・」

女子大生が甘い声でささやく。

「------」
亜衣(名倉)は手を止めて、その声に耳をかたむける。


「---わたし…私を今すぐ抱いて!
 滅茶苦茶にして!」
女子大生が叫んだ。

「-----」
亜衣(名倉)は、カップルとおぼしき男女のほうを見つめる。


”そうか、そうか…幸せそうだな。”

名倉にとっては不愉快きわまりない光景。
こんな、夜中のホテルのロビーで、堂々と行為を始めようとしている。

”人生終了に値するー”

名倉はそう思った。

ロビーから、フロントのほうに向かい、
支配人室に入ろうとする。

いつも、この部屋に鍵をかけて、名倉は亜衣の体から抜け出し、
他の利用客に憑依して、人生を終了させているのだ

「---?」
亜衣(名倉)は首を傾げる。
女子大生の背後に"黒い霧”のようなものが見えた気がした。

「---ふん、気のせいか」
亜衣(名倉)は呟くと”支配人室”に入り、
女子大生に憑依する準備を始めた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「--初穂(はつほ)!やめろ!誰が見てるかわから・・・」

初穂と呼ばれた女子大生は、彼氏を睨む。

「私はミスト…」
初穂の目は正気を失っていた。


ここのところー
突然、女子高生や女子大生が
"井澄ミスト”と名乗り、暴走したり、欲望のまま喘ぎ狂ったりする
怪奇現象が多発している。

意識を取り戻した何人かは「記憶が無い」と言う。

関係者の調査により、
とあるTSF小説サイトの管理人に"井澄ミスト”という人物が
存在することが判明している。

ただし、因果関係は全く不明な上、
井澄ミストなる人物の所在地も分っていない。

ただ、一つ。
女子が"井澄ミスト”を名乗り出す直前には、黒い霧のようなものが
目撃されていることが多い。

”本体”が何らかの方法で各地に黒い霧を放ち、
その霧で”井澄ミスト化”させているのだー。

黒い霧に憑依された少女は豹変するー。

この世のどこかに存在する本体の意思とは関係なく、
井澄ミストを名乗り、井澄ミストの欲望と本能に従い
行動する操り人形ー、
”井澄ミストの眷属”としてーー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

霊体と化した名倉は不気味にほほ笑む。

「さぁ…お前の人生、終了させてやるぞ!」
名倉が叫び、初穂の体に霊体を突入させた。

意識がーーー
元々の意識を抑え込みーーー

初穂の視界が見えてくるーーーーー

”はずだった”


「------!?」

名倉俊之は、
謎の空間に居た。

「ここはーー?」
名倉は怪訝そうな表情を浮かべる。

霊体で居る間は名倉も、自分本来の姿を
取り戻している。

「---私は、初穂とかいう女子大生に
 憑依したはずだが…」

名倉は首をかしげる。

いつもなら、初穂の体の感覚や、
記憶の一部、そして女の香りや感覚が、
自らに流れ込んでくるのだ。

しかし、これは…

闇の空間に
突然”黒い霧”が現れた。

「---ーー」
名倉は臆することなく、堂々と立ち、
その霧を見つめた。

そしてニヤリと笑みを浮かべた

「そういうことかーー」

名倉は瞬時に理解した。

既に初穂という女には
”先客”が居たのだと。

その先客が居る初穂に憑依したゆえに、
初穂の深層心理内で、もう一人の”先客”と自分で
主導権の奪い合いが始まるのだと。

「これはこれは、お邪魔しますよ」
名倉は笑いながら言う。

うさん臭い赤渕メガネに
紳士的な蝶ネクタイ。

一介のホテルマンだった名倉は、
陰謀にはめられ、殺され、そして復讐の怨霊と化し、
現世に舞い戻った。


黒い霧が文字を文字を形成していく。

”私は井澄ミスト” と。

「---ほぅ、井澄ミスト。
 聞いたことのない名前だな」

名倉が余裕の笑みを浮かべて笑う。


”黒い霧”はこの世のどこかに存在する、
井澄ミスト本体から放たれた”邪なる意思”

女性に憑依しては、
たちまち、その女性は”井澄ミスト”を名乗り
徘徊する、飢えた性の獣になってしまう。

以前、検死官のジョーは、大量に増殖した
井澄ミストを名乗る女性を前に、恐怖し、
撤収したことがある。

ジョーはあの後、
井澄ミストを名乗る女性たちをこう呼んだという。

”井澄ミストの使徒” とーーー。


黒い霧から、一人の女性の姿が生み出された。

「---」
名倉は黙ってその姿を見据える。

今、名倉が憑依した、初穂という少女の姿を模した
黒い霧が名倉の方に歩み寄ってきた。

「--邪魔をしないで…
 って言ってるよ…ミスト様が」

初穂がほほ笑む。

名倉も不気味にほほ笑んだ

「それは、私のセリフでございます」
ふざけた調子で言う名倉。

初穂の姿をした黒い霧が笑う。

名倉も笑う。

「ひとつ、聞きたい」
名倉が笑いながら呟いた。

初穂の姿をしたソレが不気味に笑みを浮かべる。

「---お前は、何者だ?」

名倉は初穂ではなく、
初穂の周囲に蠢く”黒い霧”に向かって問いかけた。

ーーーー黒い霧は返事をしない。

周囲が闇に包まれた不気味な空間ー
初穂の深層心理内で、名倉は笑う。

「--井澄ミストさん、だったかな?」
名倉の言葉に、初穂の姿をした「何か」が笑みを浮かべる。

「-ー今のうちに、私にこの初穂という少女に主導権を
 渡した方がいい」

名倉が自信満々に言う。

「でないとーーー
 ”あなたの人生、終了させることになるー”」

名倉は邪悪にほほ笑む。

憑依は一つの体に一人。
二人以上の憑依人が憑依を行った場合、
”意思の弱い方が”上書き”される。

名倉はそう考えていた。
実際に実例もあるー。

「----ふふふふふふふ」
初穂が笑う。

「----何がおかしいのかな?」
名倉が不愉快そうに尋ねると、
初穂は目を不気味に見開いて言った。

「ミスト様が怒ってる!
 アンタこそ早く引いた方がいいよ!

 ふふふふ、ふふふふふふふふ!
 邪悪な霧がやってくるーー!
 本当の闇がやってくるーーーー!」

初穂が発狂したように笑っている

名倉はニヤっとして呟いた。

「可哀想にー。中二病か」

しかしーー
次の瞬間、
大量の黒い霧が渦を巻くように出現した。

この世のどこかに存在する
井澄ミストの本体が、
自らの一部である黒い霧の怒りの感情を察知して
”増援”を送り込んだのだ。

「---実におもしろい」
名倉はそう囁くと、
自らの体を霊体化させてその黒い霧に立ち向かっていった…


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

現実世界では、突然 初穂が白目を剥いて
泡を吹きながら痙攣を始めていた。

「お、、、おい!初穂!しっかりしろ!」
彼氏が叫ぶ。

初穂の脳内でーー
井澄ミストの黒い霧ー
そして名倉俊之が激戦を繰り広げていた。

憑依者同士の対決は、
初穂の脳に多大な負担をかけていた

「あっ……あっ…」
初穂がビクン ビクンしながらうめき声をあげる。

「初穂!初穂!」
彼氏の叫びがー
虚しくロビーに響き渡る…


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

次々と黒い霧がかき消されていく。

名倉は笑うー

「誰だか知らないがー
 私の憑依歴を見縊ってもらっては困るな!」

霊体化した名倉は次々と井澄ミストの黒い霧を
かき消していく。

だが、空間の中心に立つ初穂の姿をした何かは
不気味に笑みを浮かべたままだった。


「---私が憑依するのは、
 ”この世の人間の幸せ”を調整するためだー。

 世の中は不公平だ。そうは思わないか?
 ”幸せを使い果たした”人間は、
 人生を終了させるべきだー」

そう言いながらも、黒い霧は次々と
名倉の光によりかき消されていく。

そしてついにーー
黒い霧の塊はーー残り一つになった。

名倉は笑った。

「---井澄ミストの人生、
 終了でございます―」

名倉が黒い霧に突入し、最後の霧をかき消した。

ーー実体を取り戻した名倉は、
初穂の方を見つめた。

だがーー
初穂のカタチをしたソレは笑っていた。

「---何がおかしい?」
名倉が訪ねると、初穂は笑った

「ミスト様の本体はここにはいらっしゃらないの…
 あなたが消したのは、ミスト様からあふれ出た
 黒い霧、つまり、分身…」

そして、初穂が不気味に笑うと、
先ほどの2倍の量の黒い霧が突如として湧き出た。

「-----」
名倉の表情から笑みが消える。

「舐められたものだ…」
名倉が呟く。

そして、黒い霧を見つめながら言う。

「・・・本体がここにいらっしゃらないと言ったな?」
名倉が初穂を見つめながら笑うー

「--では、本体に伝えておくといいーー
 分身ごときで私はーーー」


そこまで言いかけたときだったーーー。

黒い霧が、”推定年齢17歳の女子高生”の形へと
変わっていくーー。

「------!!」
名倉が目を見開いて動きを止める。

そしてーーー
その”女子高生”が不気味にニヤリと笑った

「-----------!!!!」

凄まじい邪気が、その女子高生から放たれたーー


「-ーー…っ…!?」
名倉はたまらず、初穂の脳内から緊急離脱したーーー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「はぁっ…はぁっ…」
波川亜衣の体に戻った名倉は、
冷や汗をかいていた。

”最後に見た、あの女子高生は何だー?”

名倉が今までに経験したことのないような殺気が
彼女から放たれていたー

”このままここに居たら、消されるー”

名倉は直感的にそう思い、緊急離脱したのだ。

「あれがーーー
 井澄ミストとやらの本体…なのか?」

亜衣(名倉)は、そう呟く…。

黒い霧とは別格の恐怖を感じた。。。

あれが、本体だったのか、
それともアレも、井澄ミストの力の一部なのか…

名倉には分らない。


だが、少なくとも"今は”争うべきではなかった。

名倉には"奥の手”があるー。
だが、それを使えばーーー。

「---井澄ミスト…
 あなたの人生を終了させるのは、
 しばらく待って差し上げましょう」

名倉は悔しそうにそう、呟いた。


ホテルのロビーでは泡を吹いた女子大生の初穂が
緊急搬送されている。

2人の憑依人が脳内で争ったことにより、
彼女の脳に多大な影響を与えたかもしれない。

だが、名倉にはどうでも良いことだったーー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日。

「・・・・・・・ん?これはこれは」
亜衣(名倉)が不気味に微笑む。

ホテルの利用客として、
悪の魂を人に投げ入れる男ー、検死官ジョーがやってきたのだった。

「--私に何かようかな?」
亜衣(名倉)が微笑むと、
ジョーは少しだけ笑う。

「--私は以前からこっちでの仕事のときには、
 このホテルを利用していてね。

 別にアンタに会いにきたわけじゃない」

ジョーはそれだけ言うと、
部屋の鍵を受け取り、その部屋に向かう。

亜衣(名倉)はふとジョーを呼び止めた。

「--ん?」
ジョーが振り返る。

「---井澄ミストって、、知ってるか?」
名倉が問いかける。

"井澄ミスト”

ジョーにとっても聞きたくない名前だった。

以前、ジョーは
”井澄ミスト”の悪の魂を人に投げ入れて
酷い目にあっている。

「・・・・・・・聞きたくない名前だな」
ジョーが言うと、
亜衣(名倉)が不気味に笑う。

「何だ、お前もあの黒い霧に…?」
亜衣(名倉)がバカにしたように言うと、
ジョーは口元をゆがめて笑った。


「---最後に勝つのは正義(ジャスティス)だ」
ジョーはそれだけ言うと、自分の部屋に向かっていった・・・。


「・・・・・・」
亜衣(名倉)が支配人室に入る・・・。


「-----!!」
亜衣が足を止めるー

支配人室に
"黒い霧”が文字を作っていたーーー

”邪魔者 死”  と。

亜衣(名倉)が気配を感じて振り向くと、
そこには黒い霧に包まれて「わたしは井澄ミスト」とうわごとのように
呟く受付嬢が、亜衣(名倉)に向かって鈍器を振り下ろそうとしていたーーー


メキッ・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

夜ーーー。

検死官ジョーは、ロビーに
ぶどうジュースを買うため、降りてきていた。

人だかりが出来ているーー。

「---なんだ?」
ジョーが人だかりをどかしながら、
その場所に行くとーーー。

ホテルの女支配人ーー
波川亜衣が惨死体となっていたーーー。

「---!?名倉?」
検死官ジョーが驚きの表情を浮かべるーーー。

そして、すぐに口元をゆがめた。


「クククッ…誰にやられたかは知らないが、
 間抜けなやつだな!」

そういうと、ジョーは、興味なさげに、振り返り
ぶどうジュースを自販機で購入した。

「--心よりご冥福をお祈りいたします」
ジョーはバカにしたように、亜衣(名倉)の死体の
転がっている方向を見て呟いた・・・。

そして…自販機がつり銭を詰まらせて出てこないことに
気づき、ジョーは自販機に右ストレートを打ち込んだ…


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

半月後ーーー

西日本のとあるホテルー。

そこで、大学生カップルが、
狂ったようにロビーでHをはじめ、
最後には二人揃って笑いながら、飛び降りるーーという
狂気の事件が発生したーーー



そうーーーー
名倉は滅んでいなかったーーー

あの日、黒い霧ーー井澄ミストに操られた受付嬢に殴打される直前、
名倉は亜衣の体から抜け出したーーー

死んだのは、波川亜衣だけ。

名倉はまた、別のホテルの支配人の体に憑依して、
今日もー"誰かの人生を終了させている”


名倉は思う。

いつか必ず井澄ミストなる人物の居所を突き止めてやるーー と。

そして、
”人生を終了させてやる"  とーー


名倉は不気味に微笑んだ。

そして、呟いたーーー

「ーーーチェックアウトの日は
 着々と近づいている…」


とーーー。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

某所。

謎の空間に、
黒い霧が集結していたーーー

そこにはーーー
井澄ミストの”本体"が居るーーー


けれども、、、
その"領域”には誰もたどり着けない。


そう、、、
誰一人・・・



おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

凄まじい闇の憑依人ですね・・・
本体は一切関与していないのに、この恐怖…。
私では到底太刀打ちできません!!

井澄ミスト様、ご出演(?)ありがとうございました。。

コメント

No title

三つ巴の争いが今始まる

Re: No title

> 三つ巴の争いが今始まる

名倉もジョーも、心の中ではもうミスト様に関わりたくなかったり…(笑)
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プロフィール

無名

Author:無名
憑依小説好きです!
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基本的に毎日更新しています!

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