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<憑依>また、逢いたくて③ ~約束~(完)

雪の中、
ついに彼女の麻美と再会を果たした治。

幼馴染の体に憑依した麻美は、口を開いた。

「あなたとはもう行けないー」 と…。
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山奥の朽ち果てた神社。

雪が積もっていく中、二人だけの静かな
空間で、治は口を開いた。

「行けない…?どうして…」
治が悲しそうに言う。

そして、治は麻美が生前、最後に
自分に送ろうとしたメッセージを思い出す。

水に濡れて、それでもなんとか起動できた
スマホには、入力途中と思われる麻美の
メッセージが残されていた。

”ごめん、もうー”

治には分かっていた。

ごめん、もう無理。

自分は愛想を尽かされたのだと。

そんなことは分かっていた。
でも、それでも、ただ、謝りたかった。

「ーーーそっか…いいんだ…」
治が悲しそうにつぶやく。

「俺は、愛想尽かされても
 当然だよな…

 麻美は俺を心配してくれていたのに
 俺は勝手にイライラして…
 八つ当たりして…
 雨の中、麻美を追い出して・・・
 そして、あんなことに…」

美野里に憑依した麻美は、
切ない表情で、治を見つめている。

「--あの時、追いかければ良かった…
 麻美に拒まれても、無理やりにでも…
 車で送っていけばよかった…」

後悔してももう遅い事は分かっているけど…
悔やんでも悔やみきれない。

何度も、何度もあの日のことを思い出す。

もしも、あの時 車に乗せていれば。。
もしも、あの時 喧嘩していなかったのならば…。

夢で、何度も何度も見た。

怒る麻美を抱きしめて車で送って行って、
無事に家についた夢―。

病院に運ばれた麻美が、奇跡的に意識を取り戻した夢。

喧嘩起きず、二人で楽しく誕生日を祝った夢ー。


「ーーーごめん、もう”怒ってないよ”」

美野里の口から声が発された。

治は、
目を潤ませながら顔を上げた。

「--私、あの時、そう送ろうとしたのー」

治は、その言葉に「え?」とつぶやく。


”ごめん、もうー”

その先を入力する直前に、麻美は雷に打たれてこの世を去った。

治はずっと、
よく口癖で言っていた「ごめん、もう無理ー」だと思っていた。

でも、、

「---私ね…治が疲れているのに気付けずに、
 いつものように文句ばっかり言っちゃって…
 治のこと何にも考えてなかった。

 あの日、
 雨の中で、私、そう思ったの…。

 だから、治に謝ろうとしたの…」

治が「麻美…」とつぶやきながらその表情を見る。

「でも…私、、肝心なところ抜けてるから…
 ”早く謝らないと…愛想つかされるかも”って、頭の中、そればっかりに
 なっちゃって…

 雷の日…木陰はいけないなんてこと、、
 わかってたのに…」

そこまで言うと、美野里に憑依している麻美は顔を上げた。

「---私、馬鹿だよね… ごめんね
 まさか…雷に打たれちゃうなんて思わなかった」

悲しそうに微笑む美野里。

「…麻美は悪くない。。
 悪いのは全部おれだよ…だからもう一度…」

「--それはできないよ・・・」

美野里がもう一度否定の言葉を口にした。


「--どうして…」
治が泣きだしそうになりながら呟く。

せっかくここまで来たのに。
せっかく美野里の体を麻美に差し出すことができたのに。
あとは、麻美がその気になってくれれば全て解決なのに…。


「…だって、、」
美野里が自分の体を見つめる。
麻美にとっては慣れない体。

自分より、小柄で、胸の雰囲気や手の感じも違う。
髪の感触も違う。

同じ女子大生同士でも、
その感覚は全く違った。

「この体…美野里ちゃんのじゃない?」

美野里…その中に居る麻美がそう言った。

「--で、、でも、、
 大丈夫だって、誰にもー」

治が必死に言いかけると、
美野里がその言葉を遮った。

「ダメだよー。
 美野里ちゃんの人生は美野里ちゃんのもの。
 私のものじゃないー」

彼女は、そう言って首を振った。

「---で…でも…俺…
 もう一度…もう一度麻美に…」

そう言って、雪の上に膝をつく。

「--私はもう死んじゃったの…」
自分の頬を触りながら悲しそうに彼女は言った。

「--俺がサポートするから!大丈夫だから…!」
治は、麻美を引き留めようと必死に叫ぶ。

そんな治の様子を見た美野里は
ため息をついた。

「--美野里ちゃんの身になって考えたことあるの!?
 このままじゃ、美野里ちゃん、急に私に憑依されて
 そのまま人生おわりなんだよ!?
 酷過ぎると思わない?」

美野里が少しだけ強い口調で言う。
強い口調で話すと、いつもの美野里と話しているような錯覚に陥る。

「---そ、、それは…」
治は言い返す言葉もなく、その場に立ち尽くした。

もちろん、そんなことは分かっている。

そんなことはー。


「…わかってるよ!でも、それでも俺は麻美が!」

「---バカ!!」
美野里が叫んだ。

「---麻美…」
強い口調で叫んだ麻美を前に、治は言葉を止めた。

そして、美野里は治に近づいてくると、
微笑んだ。

「--いつまで経っても、世話が焼けるんだから…」
優しい表情に戻った彼女は、
治の頬に手を触れた。

「治にだって分かるでしょ。
 このまま私が美野里ちゃんの体を使うことが
 どんなに酷いことか…」

諭すように、ほほ笑みながら言う彼女。

治は、涙をこぼしながら頷いた。

「わかってるー。
 わかってるけど…
 俺は…ただ、麻美に逢いたくて…」

その言葉に彼女は微笑んだ。

「---治の気持ちはもう十分に分かったから…
 会いに来てくれて…ありがとう」

彼女の言葉に、治はただ、涙を流しながら頷いた。

彼女が、治の方を見て笑う。

「美野里ちゃんの体だと…
 治のほうが、背が高いんだね…」

麻美は、治より背が高く、いつも見下ろす感じで治と話していた。
だからー、
今の、見上げて話す感覚は不思議だった。

その言葉に、治は涙を拭いてほほ笑んだ。

「本当だ…これでもう、俺、弟って言われないな…」

そう言うと、彼女も優しく微笑んだ。


そして、彼女は真剣な表情に戻って続けた。

「わたしーー、もう行くね」
短い言葉で、そう呟いて、彼女は向きを変えた。

あまりに短い再会ー。
まだほとんど、何も話せていない。

祠の方に歩いていく美野里。
それはー
麻美の魂が再び、死者の世界に戻ることを意味しているー。

「--ま、待ってくれ!」
治が叫ぶと、彼女は足を止めた。

「---呼び止めないで…」
彼女は辛そうな声で呟いた。


「--私だって、本当は生きたい…
 …治とこれ以上話していたら・・・わたし…」

その場で手を震わせて立ち止まる彼女。

そうだ。
彼女にとってはー
自分以上に辛い事なんだ。

治はそう思った。

もしかしたら、彼女をこうして呼び出してしまったことで、
彼女を余計に苦しめることになってしまったのかもしれない。

「--ごめん麻美…
 俺のせいで、もっと苦しませちゃって…」

治がそう言うと、
彼女は振り返った。

雪がさらに強くなってくる。

「--大丈夫。私もずっと治に逢いたかったー。
 だから、逢いに来てくれて嬉しかったー。」

彼女は、いつもの麻美が浮かべていたような
優しい笑顔を浮かべた。

そして、言った。

「---私はいつまでも治のこと、大好きだよー」 と。


治はその言葉を聞いて、すぐに叫んだ。

「麻美!俺もいつか必ずそっちに行くから…
 だから…!向こうで他の男に目移りしないで…
 俺のこと待っててほしい!」

治の言葉を聞いて彼女は微笑んだ。

「---わたしを、何年彼氏なしにさせるつもりなの?」

そう言って、彼女はさらに続けた。

「でも、、わかった。
 わたし、待ってる。」

そう言うと、彼女は頷いて、再び祠の方に向かって歩き始めた。

「俺、、、麻美のところに行くまでに
 麻美がびっくりするぐらい、立派な男になるから!」

その言葉に彼女は
振り返らずに「楽しみにしてるね」と囁いた。

ふと、彼女の手が震えているのが見えた。

怖いんだー。

治には分かった。

”もう一度、消える”ことに対する恐怖。


誰だって死ぬのは怖い。
麻美は、それをもう一度味わおうとしている。


そして彼女は、祠の前に立った。

「ーーー」
自分の写真の方を見つめる。

祠がどのような仕組なのかは麻美には分からない。
けれども、何となく、この写真を破り捨てれば…
美野里に体を返せる気がした。


背後にいる治の方を振り返って
走って行ってそのまま抱き着きたい。

でもー

彼女は”生前の自分の写真”を見る。

そして、悲しそうに微笑んだ。

「--私の体の方が…可愛いもん」

美野里への嫌味ではないー。

ーーもう一度訪れる死への恐怖。
ーー治と一緒にこのまま生きていきたいという欲望。

それを押さえつけるために、
彼女は、そう呟いた。

この世への未練を断ち切る為。

「----」
”弟”のように世話のやける治を次に抱きしめるのは
”向こうの世界”でー。
そして、”自分の体”でー。

「治・・・・・・」
彼女はその名を呟いて、目から涙をこぼした。

死にたくないー

消えたくないー。


でも…
この体は自分のじゃない。


自分の写真を手にして
彼女は、その写真をひと思いに、
破り捨てた。

自分の笑顔がーーー
塵となって雪の中に沈んでいく。


そしてー

「----ありがとう」
麻美は薄れゆく意識の中、最後にそう呟いた。。

背後でその様子を見ていた治は
歯を食いしばって泣き声をあげないように、
必死にその様子を見守っていた。

これ以上、言葉をかければ、
麻美をより苦しめることになってしまう。

だからー。
”言葉をかけない”ことが、
今、彼女にできる最後のことだと、治は思っていた。


写真を破り終えた美野里がフラッとする。

そして、美野里はその場に崩れ落ちたー。

最後の瞬間、
一瞬 目があったー。

彼女は、ほほ笑んでいたー。

治は目からあふれ出そうな涙を懸命に
こらえながら呟いた。

「---俺、、、、麻美にふさわしい男になるから…」

呟き終えた時にはー
美野里は、祠の前で意識を失っていた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「おい!美野里!起きろよ」

騒がしい声で、彼女は目を覚ました。

雪は、だいぶ止んできている。

「--あれ…わたし…」
美野里がもうろうとした状態で身を起こす。

「良かった…
 祠にお祈りしたと思ったら、急にさ…」
治が言うと、
美野里が不思議そうな表情で「そう…」とつぶやいた。

治は少しだけ安心した。
憑依される直前のことは記憶から飛んでいるようだった。

これなら、何も言われる心配もないだろう。

「…良かった…さ、帰ろう」

治がそう言うと、
美野里は「ん」とだけ言って立ち上がった。

元気そうで治は安心した。

美野里に微笑みかけると、
治は前を歩き出した。

治の背中を見ながら美野里は少しだけ微笑む。

「---まったく、、小学生のころから不器用なんだから…」

美野里にはわかっていたー。
最初に誘われた時から「何か企んでいる」ことはー。

小学生、中学生、そして再会した大学。

治のことはよく分かっている。


「----でも、まさか…
 麻美ちゃんの魂を私に憑依させるなんてね…」

美野里はそう呟いて、意識を取り戻す直前のことを思い出した。


光のような空間で、
麻美とすれ違った。

「麻美!?」と美野里が叫ぶと
麻美は振り返って微笑んだ。

「--治のこと、よろしくね…美野里ちゃん」

ーーーと。

彼女はそう言った。



「---よろしく…って…言われてもなぁ…」
美野里が一人呟く。

美野里も治に少なからず好意を抱いていた。

けれどー。
あそこまで麻美に入れ込んでいる治を見たら、
自分の出る幕ではないことぐらい、よく分かる。


「…ま、、、麻美ちゃんの代わりに
 私がアイツのお姉さんになってあげようかな」

そう呟くと、美野里は、
治の方に向かって歩き出した。

ふと、足を止めて祠の方を向いて
美野里は微笑む。

「アイツのことは任せてー。
 麻美ちゃんのところに行くまで、
 ビシバシ鍛えるからー。 ね?」

返事はないー。
けれども美野里は、その言葉が麻美に伝わったと信じて、
治の方に走って行った。


「治ーーーーー!」

背後から美野里の叫び声が聞こえて、
治は振り返る。

「スイーツおごってくれるって約束したよね!!
 今日はたっぷりおごってもらうから!」

意地悪そうに笑う美野里を見て、
治は苦笑いするー

確かにここに来る前にそんなことを
言った気がする。


治は、最後に祠の方を見て、静かにほほ笑むと、
美野里と共に、山の出口の方に向かって歩き始めた。


・・・・。

・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


祠の言い伝えには、
治の知らない部分もあった。

死者と再会できる祠。

なぜ、そんな祠がありながら
この神社は朽ち果てていたのか。

その答えを知っていれば―。
治はここには来なかったかも知れないー。


おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

ホワイト作品、完結です。
今回はあえて最後に含みを持たせてみました!
どういう意味なのかはご想像にお任せします!(え?)

ご覧いただきありがとうございました!


コメント

No title

闇の部分があるかもしれない感じの終わり方でもあったな……
ある意味その人の心理状態がそのまま出ますね

Re: No title

> 闇の部分があるかもしれない感じの終わり方でもあったな……
> ある意味その人の心理状態がそのまま出ますね

信じる人にとってはハッピーエンドです!
ですが…闇を持つ人が読めば…深読みシテシマウノデ・・・!?
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プロフィール

無名

Author:無名
憑依小説好きです!
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