fc2ブログ

<憑依>雨水①

雨の音が聞こえるー。

傘も差さず、濡れた女子高生が慌てて走っているl。

少女は、何故逃げているのか。
少女を追うものは何なのかー。
-----------------------------

人類は、いつから”錯覚”しているのだろう。

自分たちの、考えられることが”この世の全て”だと。

人類は予想もできないようなことに直面したその時、
それを「科学的にはあり得ない」だとか
「超常現象」で片づけてしまう。

それは、何故だろう。

人間たちが
”自分たちが地球の中心”だと考えているからだろう。

人類が知らないことなど、地球には山ほどある。
”知ったつもり”になっているだけでー。


世の中には、突然豹変して
犯罪行為を行ったり、
人が変わったかのように素行不良になる人間がいる。

そんなとき、周囲の人間は口をそろえる。

「あの子がそんなことをするようには思えなかった」 -と。

本当にそれは、その子の意思なのか。
本当にそれは、その子なのか。

もしも、
”人類の知らない”何かがこの世にあったとしたらー。

人の知らない、
”常闇”がこの世にあったとしたならば…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

強い雨が降っている。

窓の外を見つめながら、
女子高生の村西 亜彩菜(むらにし あさな)は思う。

”帰り、面倒だなぁ…”と。


「亜彩菜、そう言えばさっきの映画、怖かったよね~」

友達の女子生徒、真知子(まちこ)が笑いながら
話しかけてくる。

彼女の笑顔は、こんな大雨の日でも、
明るい太陽のようだった。

「さっきの映画…?
 あ、あの憑依の?」

亜彩菜が思い出したようにして言う。

3時間目と4時間目の英語の授業では、
字幕映画を観た。

期末テストも終わっていたし、もう授業でやることがないから、
ということで、先生が映画を見せてくれたのだ。

内容はー
意思を持った、謎の気体に、女性が憑依されてしまい、
意のままに操られた女子高生が、
同級生を次々と消し去っていくという映画だった。

最後には、特殊能力を持つ男が、憑依された女子高生と対峙。
激闘の末に憑依している機体を消し去ることに成功するも、
女子高生の思考は既に塗り替えられていて、
目を覚ました女子高生は狂ったように笑いながら、全ての破壊を
始める…というものだった。

「--あんなことあるわけないよ」
亜彩菜が笑う。

彼女は、ポニーテールとメガネが特徴の女子で、
控えめな性格で、いつも周囲への気配りを忘れないことから
男女ともに慕われている。

いつも冷静でクールなところも、男子たちにとっては
高ポイントのようだ。

「ははっ、亜彩菜は現実主義だね~」
真知子が笑う。

「でもさー、
 もし本当にああいうのがいたら、どうする?」

意地悪そうに笑みを浮かべる真知子。

いつも冷静な亜彩菜の驚くところもたまには見てみたい。
そんな風に真知子は思っている。


「いないいない。
 現実には起こりえないことを描けるのが
 フィクションの楽しいところでしょ?」

亜彩菜はそう言いながら、
外を見つめた。

何故だろう。
今日の雨はいつもよりも寂しげに見える。

何故だろう。
今日の雨を見ていると、何故か心が不安になる。

あんな、変な映画を観たからだろうか。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

放課後。

亜彩菜は、昇降口で傘を広げる。

雨の日はこれだから面倒くさい。
濡れるしー。
びしょびしょになるし…。

帰ったらすぐにシャワー浴びよっと…。

そんな風に亜彩菜は思いながら、
外へと出る。

雨水が傘にぶつかって、音を立てる。
傘から滴り落ちる雨粒。

「さむい…」

季節は冬。

遠くを歩く、男子生徒を見ながら
”こういうとき、ズボンっていいよね…”と
心の中で呟く。

亜彩菜は、一部の女子生徒のように、
スカート丈を短くはしていない。
平均的な長さだ。

けれども、やっぱり寒い。

足が寒い。

風が吹くと、スカートの中まで冷え切ってしまうような感じだ。


男子たちは、スカートを見て喜ぶけど、
女子からすれば、全然良い事なんてない。

寒いし、イヤらしい目で見られるし。

私の足なんか見て、何が楽しいんだろう?

亜彩菜はそんな風に思いながら、
見なれた通学路を歩く。

もう何回目だろうか。
1年生の時だから、
もう400回ぐらいは歩いているのだろうか。


ズル・・・

ズル・・・

ずるり・・・

背後から不気味な音が聞こえて、
亜彩菜は立ち止まった。

「・・・今の音は?」

そう思いながら、背後を振りかえるが、
そこには誰も居ない。

雨粒が、路面を濡らしているだけだ。

たまたまだろうか。
下校中の他の生徒もいなかった。

「--気のせいかな」
亜彩菜はそう呟くと、再び歩き始めた。


ずるりーーー

ずるりーーーーー

ずるっ・・・

ずるっ・・・


やっぱり何か音がする。

亜彩菜はそう思った。

さっきの映画を観て、自分では分からないうちに怖くなって
しまったんのだろうか。

意地悪そうに笑う真知子の顔を思い出す。


「---わかった」

亜彩菜は立ち止まって笑う。

そう。

誰も居ない背後から音がするなんてことは
”ありえない”

なら、答えは決まっている。

「ふふっ…真知子でしょ?」
亜彩菜は冷静にほほ笑みながら言った。

「わたしを驚かそうとしても、
 わたしはそう簡単には驚かないからね」

そう言って振り向く。

しかしーー
そこに真知子の姿はない。

「---どこに隠れてるの?」
亜彩菜がほほ笑みながら、メガネについた雨水を拭き、
視界を確保する。

しかし、
やはりーー

誰も居ない。


ずる・・・

ずる・・・

ずるるる・・・

音がどんどん近づいている。

「-----」
亜彩菜は表情を少しだけこわばらせた。

ずる…

ずるるる…

「----!?」
亜彩菜は気づいた。

自分の足元ーーー
水たまりだと思っていたものが、少しずつこちらに移動していることに。

「---な、、、なに…これ・・・」
唖然とした亜彩菜が言う。

ずる・・・

亜彩菜の前にやってきた”それ”は動きを止めた。

そして…

周囲の水を吸い寄せて…
赤ちゃんぐらいのサイズに固まると、
”それ”はドロドロした状態のまま、
立ち上がった…。l

「---ずるるるる…」

”スライム”のようなその物体は
亜彩菜の方を見ている。

”目”は無い。

ただ、亜彩菜には分かる―。

こいつは自分を見ている…と。


「---ひっ!」
亜彩菜は慌てて走り出した。

風でスカートがなびく。
亜彩菜は片手で傘を、片手でなびくスカートを抑えながら走った。

「今のは、何ー?」

亜彩菜は水しぶきをあげて走りながら思う。

見間違えかもしれない。

でも、あんなスライムみたいな生き物いたっけ…??

それにーーー。


亜彩菜は心を落ち着かせて、走るのをやめる。

水たまりを踏んだ際に、スカートや下着が濡れてしまった。

「あぁ…もう最悪…」
亜彩菜は毒づきながら、背後を振り返った。

すると、そこにはーーー
30センチぐらいの人型になったスライムが
猛ダッシュで亜彩菜めがけて走ってきていたーーー


「ひっ…!きゃああああああっ!」

亜彩菜は絶叫して、
傘を放り投げて走り出した。

整えられたポニーテールが、
顔が、
制服が濡れていく。

信じられない光景を目の当たりにした亜彩菜の思考は壊れた。


”不気味なスライムが人型になって、
 亜彩菜の方に走ってきているー”


「---い、、、いやっ…いやぁ」
びしょ濡れになりながら走る亜彩菜。

公園までたどり着いたところで、
亜彩菜は水たまりでつまずいて、転んでしまう。

顔から水たまりに突っ込んでしまう亜彩菜。

「---もう、、、最悪っ!」
亜彩菜は叫ぶ。
ポニーテールがほどけてしまい、乱れた髪型になった亜彩菜。

制服もびしょ濡れで、下着が透けてしまっている。

「はぁ…はぁ…」
目に涙をためながら亜彩菜は周囲を見渡す。

濡れたメガネを慌ててかけて、
周囲を見るー。

だがーー
そこに人型のスライムはいなかった。


「---あれ?何してるの?」

真知子がいたー。


「ま…真知子!」
亜彩菜は目に涙をためてその名を叫んだ。


恐怖の中の、安心感。
亜彩菜は、一気に安堵して、真知子に近づこうとした。

その時だったー。


猛ダッシュでスライムが走ってくるのが見えた。


「ひーーーーっ!」

真知子の背後からこっちに走ってくるスライム。
マラソンランナーのような速度で、こちらに向かってくる。


「ど…どうしたの?」
真知子が状況を理解できず、
首をかしげる。

亜彩菜は背後を指さしたーーー

だが…。
スライムは真知子に近づくと、突然、体を集合させ、小さな団子状になった。

そして、そのまま真知子のスカートの中に飛び込む。

「え?なに、なにこれ!?」
真知子が叫ぶ。

だが、真知子の体が膨張するー。

スライムがどこを通っているのか分かる。

お腹から胃へ。
胃から喉へ…

そして頬に…

最後に、、頭に…


「な…なに… ひぃあっ・・・!?」

真知子がぶるっと痙攣する。

頬や腕の筋肉がピクピクと動いている。


「ま…まちこ…??」
亜彩菜が言うと、真知子は突然、喉をごぼごぼ鳴らしながら笑った。

「この子じゃ…だ…めだ…
 好み…と合わない…」

カタコトのように話す真知子。


「---ひっ…ま、、真知子!どうしたの!」
亜彩菜が叫ぶと、
真知子は、目から液体を流しながら笑った。

「---きみがいいな」

目から流れているのは、涙なのか、
それとも、、、、


そしてーー
その直後、
真知子のお腹が、頬が、、、体のあらゆる場所が
膨張し始めた。


「ぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼ」
笑いながら、液体を口や目、耳、鼻から
垂れ流しにしている真知子。


「いやああああああっ!」
あまりの恐怖にずぶ濡れのまま、亜彩菜は走り出す。


背後で―――
何かが”破裂”する音が聞こえたー。


「ニンゲンのガラダ…ホジい~~~!」

背後を振り返る…

そこには、人型のスライムに、
破裂した真知子の顔の一部がくっついている”化け物”がいた。

真知子の口が叫んでいる。


「おまえのガラダが、ほしぃ~~~!」


奇声のような声で叫ぶ。

さっきよりも早いスピードでこちらに迫ってくる。


「きゃああああああっ!」

真知子のことなど、もう考える余裕はなかった。


”ただ、助かりたいー”

優しい子、なんて嘘。

みんなに嫌われたくなかっただけ。

冷静なのも嘘。

本当はいつもビクビクしている…


周囲から、作られたイメージと、
本当の自分でいつも葛藤していた。


亜彩菜は、現実を受け入れられなかったー。


”これはきっと、夢なのよー”

そうも思った。


けれどー。

”豹変する人間”

それは、本当に自分の意思なのだろうか。


もしも、
人類が知らない”何か”がそこにあるのだとしたらーーーーー


亜彩菜は今、
人が知らない”未知”に追いかけられていたーー


②へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

次回はドロドロ ねちょねちょ ズブ濡れ…
になります(意味不明 笑)

人型スライムがマラソンランナーのように走ってくる…
想像するとなんだかホラーですね^^

コメント

非公開コメント

プロフィール

無名

Author:無名
憑依小説好きです!
TSF/憑依系メイン
の小説を公開していきます!

基本的に毎日更新しています!

無断転載はご遠慮下さい。。

ツイッターやってます!

カテゴリ

検索フォーム