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<憑依>あるかも知れない未来・外伝~蠢く闇~

憑依薬が当たり前のように存在する近未来ー。

世の中は、憑依により、混沌としていたー。

※リクエスト頂きました
 「あるかも知れない未来」に登場した憑依されている女性議員に
 スポットを当てたお話です。

 過去の「あるかも知れない未来」は
 こちらからご覧下さい!
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憑依薬が市販薬として出回った世界ー。
2064年に御室博士なる人物が憑依薬を開発、
憑依薬は世界中に広がり、
世界のライフスタイルを根底から覆した。

憑依薬に対する予防接種が始まったものの、
そんなものは無意味だったー。

2080年台、
政府の野党第1党を率いる30歳の若き女性が居た。

彼女の名前はー、
いや、"身体”の名前は
角野 詠美(すみの えいみ)。

彼女はこの世界で”ポゼッション”と分類される人間だ。

この世界の人間は、既に多くが憑依されている。

憑依されていない人間を"ナチュラル”と呼び、
憑依されている人間を"ポゼッション”と呼ぶ。

詠美・・・
彼女は3歳でその生涯を終えた。

3歳のときに、とある男に憑依されたからだ。

そしてー
彼女は、高校時代のとき、さらに別の男に憑依された。

最初に憑依していた男は、
単純に"女の子として生きてみたい”という考えの持ち主だった。

だから、詠美は高校時代までは純粋に
女の子として生きた。

周囲から見れば、
ごくごく普通の女の子。

ナチュラルなのかポゼッションなのかも分からないぐらいのー。

しかし、高校時代に詠美に憑依した男は違った。

モテることない人生を歩み、
最後は女の色仕掛けにはまり、人生を破滅させてしまった男だった。

彼は、自ら命を絶つことも考えていたある日ー、
憑依薬を手に入れた。
そしてー、当時高校生だった
詠美に憑依したのだった。

それから、詠美は豹変した。

”女子高生”として生きていた詠美は、
突如として色仕掛けで男を惑わすようになった。

先生を惑わし、不正に成績を上げてもらい、
先輩を惑わし、部活内での地位を確立した。
同級生の不良から、身体を使ってお金を巻き上げた。

その豹変ぶりに、周囲はすぐに気付いた。

詠美は、誰かに憑依されたー、と。

もっとも、そのとき、既に学校のクラスメイトの6割が
誰かしらに憑依されている人間だったため、
周囲は「あ~あ」ぐらいにしか思わなかったし、
むしろ喜んでいる人も居た。


それからー、
詠美は政治家を目指すようになった。

自分の美貌と、甘い声を使って、
次々と男たちを誘惑し、政治家への道を
切り開いた。

憑依薬が、当たり前のように広がっているこの世界では、
それが、できるー。

詠美のー、
いや、詠美に憑依している男の目的は単純明快だった。

"惨めな独身人生を送った自分のような人間を
 少しでも減らすため、憑依薬をさらに推進するー”

そう、憑依薬に満ちた世界を作り出すこと。

それが、今の詠美の目標だった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「---しかし、角野さんは綺麗ですよね」

報道関係者の若い男が言う。

「ふふ、そう?ありがと。」
詠美が、甘い声で微笑む。

「---」
若い男は顔を赤らめた。

「ねぇ、あなたは”憑依薬”をどう思う?」
詠美が顔を近づけながら言うと、
「え…あ、、す、、素晴らしい薬だと思います!」
と若い男は言った。

「あなたも、”してるの”?」
詠美が尋ねると、若い男は言った。

「わ、私はナチュラルなので…」
若い男は言うー。

”ナチュラル”とは憑依されていない人間のことだ。

「ふぅん…そ。」

詠美は密かに笑みを浮かべた。

”憑依されていない男”は、扱いやすい。
女の色気でどんな風にも利用することができるからだ。

反対に、憑依されている男は、扱いにくい。
何故なら、憑依されている男の中身が、男とは
限らないからだ。

”男”が”女”に惑わされるー
そんな時代は終わった。

中身によっては女の方が、
色香で惑わし安いー。

今は、そんな時代なのだ。

だが、目の前に居るこの若い男は、
ナチュラルだという。

つまり、中身も男だということ。

「わたしはねー。
 憑依されてるのー」

詠美は言った。

「今、瀬川総理大臣が
 尊厳維持法という法律を制定しようとしているの。
 それが制定されれば、 
 憑依薬は厳しく取り締まられる。

 確かに、人の人生を奪うことは良くないことかもしれない。
 けれど、それで救われている人はたくさん居るの。

 だからわたしは、瀬川総理大臣を叩き潰す」

”尊厳維持法”
現在総理大臣である瀬川総理大臣が打ち出している法律で、
憑依薬を全面的に取り締まる法律だ。

野党第一党を率いる詠美が、それを許すことはできなかった。

「あなたも、わたしに協力してくれる?」

詠美が甘い声で囁くと、若い男は頷いた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

1週間後ー
若き男性記者と結託した詠美は、
瀬川総理大臣のスキャンダルを作り出した。

憑依された人間を使えば、
捏造などたやすいことだ。

その情報が、今日、若き男性記者によって、
世間に発表される。

「瀬川も、今日で終りよ」
詠美は足を組みながら事務所のテレビをつけた。

詠美は思う。
”この身体”も既に30歳。
そろそろ”乗り換え”をしたい。

だが、政治家に上り詰めた立場を利用して、
憑依薬反対派の瀬川だけは叩き潰しておかなくてはならない。

しかしーーー
男性記者は、突然裏切った。

詠美のスキャンダルを大々的に発表したのだった。

詠美が、プライベートで男を誘惑して
遊んだときの写真がニュースに流されてしまうー。

「ど、どういうこと…?」

詠美は慌てて男性記者に電話をした。

すると、男性記者は先週までとまるで違う態度で
笑った。

「ははは…残念でしたねーー
 私も"ポゼッション”になっちゃいました」

若い男性記者が笑いながら言う。

ポゼッション…。

つまり、詠美と結託したあの日以降に、
誰か別の人間に憑依されてしまったことを意味する。

「---くそっ!」
詠美はイラついてスマホを壁に投げつけた。

この世はもはや、誰も信用できない。
人を騙しまくってきた詠美が言えた事ではないが、
この世界での約束は、簡単に上塗りされる。

いつ、誰が、どのタイミングで
憑依されるか分からないからだ。


詠美は一転して、公務中にラブホに言ったことを
責められる立場となってしまい、記者会見を開くことになった。

議員とは思えないような派手な格好で記者会計に望む詠美。

美貌を武器にしてきた詠美の、いつものやり方だったー。

記者たちが詠美のほうを見つめる。
憑依薬反対を唱える瀬川総理大臣を叩き潰すはずだったのに、
自分が追い詰められる立場になるなんて。

”この世界では、何が起きるか分からない”

それは、自分がよく分かっていたはずなのに…。


なんとか、記者会見を終えた詠美は、
立場を失った。

野党の力は失われて、
瀬川総理大臣は2090年、尊厳維持法を制定させたー。

がーー奇跡は起きた。
尊厳維持法を制定させた瀬川総理が何者かに
憑依されて、突然自ら命を絶ったのだ。

憑依推進派による報復。

「--予防接種してなかったなんて、バカね」

詠美は呟いた。
この世には憑依薬に対する”予防接種”がある。

瀬川総理が憑依されて死んだということは、
それをしていなかったのだろう。

詠美はーー
今の詠美は、女子高生時代に、詠美に憑依してすぐに
予防接種を受けた。
そうすることで、この身体はもう、誰にも憑依されないからだ。

この身体は、永遠に自分のものなのだー。

”この身体をそろそろ捨てよう”
そう思っていた詠美にも転機が訪れた。

瀬川総理が命を絶ったことで、
再び自分の求心力を取り戻すチャンスが訪れた。

そしてーー

詠美は女性総理として、演説をしていたー。

「--ー憑依は我々国民の夢です!」

「人類の新しい扉を閉ざしてはならない。
 私は、人類の夢を、守ります!」

色っぽい姿で叫ぶ新総理。

野党第1党の党首だった、角野 詠美が、
新総理に就任していた。

彼女も、女子高生だったころに、体を奪われている。

今、彼女の中に居るのはー。

「---国民の皆様の夢を、
 私は守ります」

詠美は自信に満ち溢れた表情で、そう高らかに宣言したー。

それから1年間、
詠美は憑依を推進するため、全力で働いた。

しかしーー、
とある街頭演説を終えたある日。

「そう、じゃあお願いね」
秘書に指示を出した詠美に
突然悪寒が走った。

「----!?」
詠美は動きを止める。

身体の自由が利かなくなる。
思考が鈍り出す。

「(こ…これは…)」
詠美は混乱しながら思うー。

”すべてが奪われていくような感覚”

詠美は悟る。
”誰かがわたしに憑依しようとしている”と。

「(そんな…高校のときに予防接種したはずー?)」

そう考えて、詠美はハッとした。


予防接種を受けに行ったときの女医ーーー。


この世における予防接種はもはや機能していない。
何故なら、予防接種をする側の医師も、憑依されていることが
あるからだー。

予防接種を受けに言っても、
"本当に予防接種できているとは限らない”

詠美に予防接種をした女医もー
男に憑依されていたー。
”もっと憑依を広げるべき”
そう思っていた女医は、憑依薬の予防接種を受けに来た人たちに、
予防接種の薬ではなく、ただのビタミン剤を投与していた。

詠美は、予防接種を受けた”つもり”になっていただけだった。


そ ん なーー

詠美が女子高生の時代から憑依していた男は、
新たに詠美の身体に憑依した男に、かき消された。

「ひ ひ ひ♡」

該当で、詠美は突然胸をもみ始めた。

もう、政治家としてのプライドも何もなかった。
あるのはただ、欲望のみ。

「うひゃははははははは!あはははははははは~~♡」

該当で服を脱ぎ捨てて狂ったように
エッチをし始めた彼女を見て、
街の人々は、そして秘書たちは驚きの表情を浮かべた。

お構いなしに、詠美は喘ぎ続けた。


そしてー即日、詠美は"解任”された。
憑依が当たり前のように存在する世界では、
会社や組織の人間が”憑依”された場合に
即日解雇できる法律、

”強制解任法”が制定されている。

詠美は、その法律に基づき、その日のうちに
解任され、野党第1党はまた、新しい代表を選定したのだった。


数日後ー
詠美は、町外れのゴミ置き場で発見された。

憑依していた男が抜け出したため、
3歳の時点から支配され続けていた、彼女本来の意識が
表に出てきていた。

「ふぁぁ… ま ま~」

何も分からず、詠美はゴミ置き場で
"既にいない母親”を呼び続けたー。

3歳のあの日の、記憶のままにー。


おわり


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コメント

リクエストを頂いたので、
あるかも知れない未来に登場した登場人物の物語を
書いてみました!

リクエストありがとうございましたー!

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無名

Author:無名
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