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<憑依>わたしは、消えてしまうから③~決断~(完)

愛美は、最後の一日を、雅幸とどう過ごすのか。

最後の一日が終わったその時、
愛美はどのような決断を下すのか。

雅幸との別れの時は、
近づいていた・・・。
----------------------

ファミレスから出た雅幸と、奈々枝は、
二人で楽しい時間を過ごした。

雅幸は、まるで愛美と居るようだと思った。
そして、愛美も、最後のひと時を、
今、自分が置かれている状況を忘れて、
楽しむことができたー。

けれど、
時間は無情にも過ぎたー。

ついに、別れの時間がやってきた。

まもなく、沈みそうな夕日が、二人を照らしている。

「--今日は楽しかったよ」
雅幸が言う。

「--うん、わたしも」
奈々枝はそう答えた。

「ーーーじゃ、じゃあ、また月曜日、学校でね」
奈々枝はそう言って、足早に立ち去ろうとした。

これ以上、ここにいたら、
この世への未練が残ってしまうからー。
奈々枝の身体を奪ってでも、生きたくなってしまうから・・・。

「ーー赤石さん」
雅幸が奈々枝のことを呼んだ。

「---」
奈々枝は立ち止まった。

「ありがとう」
雅幸がそう呟くようにして言った。

「---雅幸?」
奈々枝が振り返る。

「---」
雅幸が寂しそうに、奈々枝の方を見つめている。

「----・・・」
”どうして、そんなに寂しそうな目で
 私を見るの?”
奈々枝はそう思った。

「---僕さ」
雅幸は続ける。

「--愛美のこと、本当に大好きだから」
雅幸は、真剣な表情で言った。

「---え・・・」
奈々枝は戸惑って、
顔を逸らした。

雅幸の背後にある夕日が眩しいー。
いやー、
自分の涙を見られたくないから…。

「---ーーーー」
奈々枝は涙をこぼした。

雅幸は、わたしが愛美だって、
気づいているのー?


愛美はそう思った。

けど----。

駄目。そう思った。

この世への未練が絶ち切れなくなってしまうー
そして、雅幸もー

「---わ、、わたしに言われても、
 困っちゃうよ」

涙をぬぐうと、奈々枝は笑った。

「---そっか」
雅幸は悲しそうにつぶやいた。

夕日が反射して、雅幸の表情は見えない。

「--ごめん、そうだよね。
 赤石さんに言っても仕方ないよね。はは・・・」
雅幸の声が涙声に聞こえる。

「---そういうことは、愛美に直接伝えてあげてー」
奈々枝はそう言った。

もう、直接伝えることなんてー
”永遠”にできないのにー。

「---そうだ。
 わたしからも一つだけ」
奈々枝はそう言って、言葉を振り絞るようにして言った。

「--”わたし”に縛られずにー、
 幸せになって・・・。
 雅幸の幸せが、わたしの幸せだからー」

道端に涙が零れ落ちる。

「--ーーわかった」
雅幸が静かにそう答えた。

そしてー、
愛美は再び、雅幸に背を向けた。

「--愛美!」
雅幸が叫んだ。

「---僕は愛美のこと、大好きだから!
 ーーこの先、どんなになっても大好きだからー」

雅幸の言葉に、奈々枝は涙をこぼしながら笑った。

「---わたしは、赤石奈々枝だよ?」

ーー最後まで、言わないことに決めたー。

自分も、彼も、別れるのがつらくなってしまうから。


「---夕日に叫んだだけだよ」
雅幸が涙声でそう返事をしてきた。


「----ありがとう」
奈々枝はもう一度、そう呟いて、光の中、立ち去って行った。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「----愛美」
雅幸はその場で涙を拭った。

ーーー昨日、学校での奈々枝の仕草を見て
雅幸はとっくに気づいていたー。

”奈々枝の中に、愛美が居ることにー”

髪をいじる仕草がー
愛美そのものだったからー。

そしてー
今日のデートで、雅幸は悟った。

”愛美はもう、帰ってこれない”ことをー。

「-----」
雅幸は、愛美が、自分のために、
黙っていることに気づいた。

愛美だと告げられれば、
きっと、自分は、行かないでほしいと縋ってしまう。

そんなこと、あってはならないのにー

だからーー
雅幸もーー

「ーーー」
雅幸は去りゆく奈々枝の後姿を
いつまでも見つめていたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

日が沈み、月が出始めたー

「--ありがとう」
奈々枝に憑依している愛美は、奈々枝に語りかけた。

(いいの・・・?
 本当のこと言わなくて?)

奈々枝が言うと、
愛美は答えた。

「--うん。いい。
 これでいいの。

 私も、雅幸も、きっと・・・
 離れられなくなっちゃうから」

愛美は答えた。

気が付けば、二人は、
真っ白な空間に居た。

「ーーわたし・・・もう、行くね」
愛美が微笑む。

「--愛美」
奈々枝は、悲しそうにつぶやいた。

「ーーわたし・・・
 ちょっとだけだけど、
 奈々枝ちゃんの体を奪って、
 このまま雅幸と一緒に生きていきたい・・・って
 思っちゃった」

愛美が自虐的に笑いながら言う。

「ーーこのままわたしが消えたら、
 奈々枝に、雅幸を取られちゃうんじゃないかって」

愛美はため息をついて、続けた。

「-ーーわたし、最低だよね。
 奈々枝ちゃんに嫉妬して、体まで奪おうと
 しちゃうなんて

 こんなだから…」

遠くを見つめて、涙を流しながら続けるー

「--こんなだから、
 事故に遭って死んじゃうんだよね わたし」

悲しそうに―
自虐的に言う愛美を見て奈々枝は愛美を、静かに抱きしめた。

「ちょ・・・?わたし、そういう趣味はないなぁ」
愛美が焦った様子で笑う。

「--ふふ、わたしも無いよ」
奈々枝は笑って愛美の方を見た。

「--わたしが反対の立場だったら、
 きっと、わたしも愛美と同じことを思うよ。

 愛美だけじゃない。
 誰だって、死ぬのは怖いよ」

奈々枝が愛美から手を離して言う。

「---わたしの方こそごめんね」
奈々枝が悲しそうに続けた。

「ーー何もしてあげられなくて・・・」

その言葉に、愛美は微笑んだ。

「ううん。もう十分。
 だって、わたし、本当は事故にあった一昨日、
 消えてたはずだもの。

 例え2日間でも、
 たとえちょっとだけでも、
 雅幸と一緒に居れたのは、
 全部、奈々枝ちゃんのおかげ」

愛美が心からの笑みを浮かべた。

「---愛美は、強いね・・・」
とても、これから消える人の笑顔とは思えない。
自分だったら、泣いて、取り乱して・・・。

「--ううん、強がっているだけ」
愛美はそう言って、目に涙を浮かべて微笑んで見せた。

「--心配しないで。
 雅幸のことを奪ったりしないから。
 わたしは、愛美と雅幸のことを応援してるから」

奈々枝がそう言うと、
愛美は首を振った。

「--気にしないで。
 雅幸にも言ったけど、
 死んだわたしにいつまでも縛られちゃダメ。

 わたしのせいで、雅幸が生涯独身!なんてことに
 なっちゃぅたら、その方が、わたし、悲しいから」

愛美は、奈々枝に背を向けて、
呟いた。

「--雅幸のこと、お願いー」

奈々枝は「愛美・・・」とつぶやいた。

「ーーじゃ、そろそろいこっかな」
愛美がまるで、どこかに買い物に行くかのようにして言う。

「--愛美・・・そっちに行ったら・・・
 真っ先に愛美に会いに行くから!
 何年先になるかわからないけど・・・!」

奈々枝がそう言うと、愛美は振り返って笑った。

「じゃ・・・あっちの世界のおすすめ観光スポットでも
 先に見つけておこうかな?ふふっ」

愛美はそう言うと、
差しこむ光の方に向かって歩き始めたー。

「----ありがとう」

そう言ってー
愛美は振り返ることなく、光の方へと向かっていったー。


「---わたしのほうこそ、ありがとう」
奈々枝は、愛美の後姿を見ながら、そう呟いた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「・・・・・・・・・・・・・・」
気づくと、奈々枝は家の前に立っていた。

もうーー
愛美は居なかった。

「-----」
奈々枝は悲しそうに涙を拭いて、
そのまま家の中に向かった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

数日後。

担任から、海外に行った愛美が
事故死したことが告げられた。

「ーーーーー」
雅幸は、悲しそうな表情でその言葉を聞いていた。


昼休みー。

「--雅幸」
奈々枝が、一人寂しそうにしている雅幸に声をかけた。

「---赤石さん」
雅幸が無理に笑って返事をした。

「--ー大丈夫?」
大丈夫なハズが無い。奈々枝はそう思いながらも、
そう訪ねた。

「---うん・・・
 まぁ・・・大丈夫じゃ・・・ないかな」
雅幸がそう答えると、奈々枝は寂しそうにうなずいた。

「ーーーーー」
雅幸は、涙を流さなかった。

泣き出して、取り乱すかと思っていたけれど、
悲しそうにはしても、涙を流すことはしなかった。

「---僕さ・・・泣かないって決めたんだ・・・。
 愛美、心配性だから、
 僕が泣いてたら、安心してあっちに行けないから」

雅幸が寂しそうにそう呟くのを見て、
奈々枝は頷いた。

「---」
奈々枝は雅幸の様子を見て思うー。

雅幸は、あの日、奈々枝に愛美が憑依していることに
気づいていたのだと。

雅幸は、愛美が思っている以上に、
強く、しっかりとした青年に成長しているのだと。

「ーーふふ、そんなに想って貰えて、愛美は幸せだね」
奈々枝はそう言うと、微笑んで、雅幸に背を向けた。

「--赤石さん」
雅幸が奈々枝を呼び止める。

「---ありがとう」
愛美のことをありがとう、そういう意味で
雅幸がお礼の言葉を口にした。

「ーーーえ?あ、うん、どういたしまして」
奈々枝は少し照れながら返事をすると、
そのまま次の授業の教室に歩いて行った。


寂しそうに空を見つめながら雅幸は
呟いた。

「--愛美・・・10年後か・・・50年後かわからないけど、
 必ず、僕、愛美に会いに行くから」

雅幸はそう言うと、
寂しそうに笑って、
奈々枝の向かった方向に向かって歩き出したー。


おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

実は生きていた(奇跡的に助かった)バージョンも考えていたのですが
迷った末にこちらにしました!

雅幸と奈々枝が付き合うのかどうかは、ご想像にお任せします。


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