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<入れ替わり>変幻自在の逃亡者①~悪魔~

逃亡中の凶悪犯罪者が、
人と体を入れ替える能力を手に入れてしまったー。

入れ替わりを駆使して逃亡を続ける凶悪犯。
果たして、その行く末はー
凶悪犯罪者の室井 哲也(むろい てつや)は、
何人もの命を奪った極悪非道の男だ。

そんな彼はー
逃亡中に”入れ替わり薬”というものを偶然、
手に入れてしまった。

入れ替わり薬を手に入れた彼は、
次々と入れ替わりながら、
時には潜伏し、時には逃亡しー
警察の追撃を振り切っていた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「--や、やめて!」

夜の街角ー。
女子高生が恐怖に満ちた表情で、
友人と思われる少女を見ている。

「---もう少し、この体で楽しみたかったんだけど・・・
 あんたの方が可愛いから・・・
 ”あんたに引っ越し”するねー」

微笑む少女は、
とても高校生とは思えない邪悪な笑みを浮かべている。

「こ、来ないで!」

もう一人の少女は怯えきっている。
そしてー

「代わりに、わたしの身体をあげるから・・・ネ?」

そう言うと、少女は怯えている少女にキスをして、
お互いが意識を失い、その場に倒れた。

しばらくしてー、
少女が目を覚ますー。

「---ふふふ、いい身体だぜ」
さっきまで憑依していた女子高生とはまた違う、
少し幼い雰囲気の顔立ち。

「--くくく、、、今日から俺は、
 この女になるぜ!くくく、あははははははは!」

入れ替わられる直前に流していた涙を
浮かべながら、少女は狂ったように笑い続けた。

「-もしもし」
早速、少女は、”自分の”ピンク色のスマホを手にして、
足を組んで近くの塀に座ると、
誰かに電話をし始めた。

「--あぁ、俺だよ。室井だ。
 え?声が可愛い??くくく、今度ヤラせてやるよ」

少女の身体で笑う室井。

そしてー
「ひとり、”処理”して欲しいんだ」

入れ替わり―。
もう少しで、さっきまで自分が使っていた少女の身体で、
この少女が目を覚ます。

だから、始末しなくてはならないー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「う・・・ ん・・・」
少女が目を覚ました。

「おはよう、江麻(えま)ちゃん」
アイドルのようなフリフリした衣装を着た少女が声をかける。

「---・・・!」
江麻と呼ばれた少女は目を覚ました。

「ーーーえ」
江麻は驚く。
”目の前に自分が居る”ことに。

「--ククク・・・どうだ、お前の身体・・・
 エロくていい体だなぁ!
 幼い顔立ちってのも高ポイントだよ!」

少女はミニスカートから覗く、自分の身体を
舐めまわすように見つめて顔を赤らめる。

「--や、やめて!わたしの身体を返して!」

江麻は叫んだ。

「--ククク、イヤだね。
 俺はこれから、お前として、菜月美(なつみ)として
 生きていくんだからよ!ははははははっ!」

入れ替わり薬によって、
菜月美は、凶悪犯罪者の室井によって体を奪われ、
元々室井が利用していた体ー、
クラスメイトの江麻と入れ替わらされてしまった。

「--お前、自分の喘ぐ声を聴いたことはあるか?」
菜月美が笑いながら言う。

”自分の姿”見ながら、
江麻になった菜月美は、自分の身体を睨む。

「---か、返して・・・!わたしの身体」

江麻が言うと、菜月美は笑った。

「嫌よ。
 明日からわたしはあんたとして学校に通うの!
 こ~んな姿で、男子を誘惑したらどうなっちゃうかな♡
 ふふ、楽しみ!」

自分じゃ絶対にしないような、男を誘うような格好を
している自分の身体を魅せつけられて、江麻は
泣き叫ぶ。

「---お前も”その体”の子と同じ運命にしてやるよ」

「----!!」

江麻の身体になった菜月美は、恐怖の表情を浮かべた。

そう言えばー
この体ー
元々の江麻はどこに行ったのか。

自分のように入れ替わらされたならー

「---1か月前の、ホームレスの失踪事件、知ってるか?」
菜月美は煙草を吸いながら笑った。

自分の身体がタバコを吸っているー。
やめさせたい、
けれど、恐怖から声が出ない。

「---あのホームレス・・・
 どこ行っちゃったんだろうな」

菜月美がイヤらしく笑うー。

「---ーーまさか・・」

室井は、1か月前まではホームレスの身体で
活動していた。
しかし、通りすがりの女子高生、江麻を見かけて
江麻と入れ替わりをしたー。

ホームレスの体になってしまった江麻本人は、
失意のうちに、失踪した。
恐らくはもう、この世に居ないだろう。

「ーーお前も失踪するんだよ」
菜月美が笑うと、
江麻は「いや!体を返して!」と叫んだ。

「--ふふ、おいお前ら!
 こいつは好きにしていいぞ!」

菜月美は協力者たちにそう叫ぶと、
協力者の男たちは、江麻の方に向かって、
イヤらしい笑みを浮かべて歩き出したー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

とある家庭。

凶悪犯の室井哲也を追う
警察官、生田 光輝(いくた みつてる)が家族に
対して苦笑いしながら言った。

「----上層部から呼び出されちゃってさ…
 明日は遅くなるよ」

「へぇ、そうなんだ・・・お父さんも大変だね!」

一人娘の高校2年生、
可奈恵(かなえ)が言う。

「--お父さんいつも頑張ってるから、
 出世話じゃない?」

可奈恵が言うと、
父の光輝は微笑んだ。

「だといいけど、たぶん違うんだよなぁ」

光輝は、現在、逃亡中の凶悪犯罪者、
室井哲也を追っていた。

きっと、そのことに関する話だろう。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日。

「--今日来てもらったのは、
 例の犯罪者、室井のことについてだ」

上層部の男が言った。

「--先日、富士の樹海で、
 パトロール中だった地元の団体が、
 ホームレスの男を発見した

 だが、そいつの様子がおかしいんだ」

上層部の男が、光輝に向けて映像を見せた。

「--わたし、里木 江麻なんです!
 こ、この男に…体を入れ替えられて・・・」

ホームレスの男が風貌に似合わず、女言葉で
泣き叫ぶ様子が映し出されていた。

「---室井だ」

上層部の男が言った。
光輝は険しい表情でモニターを見ている。

「--室井が入れ替わり薬をとある研究施設から
 盗み出したことは分かっている。

 恐らく奴は、次々と体を入れ替えて逃亡を続けている」

ーー逃亡中の凶悪犯、室井哲也が入れ替わり薬を
手に入れたことは世間には公表していない。
むろん、マスコミにもだ。

警察内部で極秘にチームを結成し、
内密にこの件を処理しようとしている。

何故なら、入れ替わり薬の存在が世間に知れたら、
恐らくは大パニックを起こし、収拾がつかなくなるからだ。

「---それで…そのホームレスの言っている
 里木江麻という子は・・・」

光輝が言うと、
上層部の男はうなずいた。

「里木江麻という子は実在する。
 恐らく、ホームレスの身体の中に今居るのが
 里木江麻本人で間違えないだろう。」

上訴部の男はさらに続けた。

「--里木江麻は、君の娘さんが通ってる高校の生徒だ。
 娘さんを通じて、何か異変がないか、調べてくれ。」

上層部の男の言葉に、光輝はうなずいた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「おはよ~!」
いつもより短いスカート丈で登校した菜月美が笑う。

「--あれ?菜月美ちゃん、今日はなんだか・・・
 派手だね?」

警察官の父を持つ可奈恵が言うと、
「ふふん…可愛いでしょ?」と言って
菜月美がクルッと回って見せた。

少しスカートの中が見えたかもしれない。
でも、これでいい。

「---そういえば、今日は江麻ちゃんは来てないね」

その言葉を聞いて、菜月美はニヤリとした。

当たり前だ。
菜月美は今、凶悪犯罪者の室井に体を乗っ取られている。

そしてその室井は、昨日まで、江麻の身体に居た。

昨夜、江麻より菜月美の方が可愛いと判断した
室井は、菜月美を拉致して”入れ替わり”したのだ。


今頃、江麻の身体になった菜月美は、
室井が金と女の身体で集めた部下たちに
好き放題されているだろう。

あるいはー
もう廃人になっているかもしれない。

「--なんか、家にも帰ってないらしいよ」
他のクラスメイトが言う。

「--ふぅん。大丈夫かな?江麻・・・」
可奈恵が心配そうに言う。

「--わたしのお父さんも最近、
 事件だ事件だ!って忙しそうだし」
可奈恵の呟きに、菜月美が敏感に反応した。

「--ー事件?」
菜月美が問いかけると、可奈恵は笑った。

「ほら、わたしのお父さん、警察官でしょ?
 最近、室井とか言う人を追ってるらしくて
 忙しいみたいなの」

その言葉を聞いて
菜月美は思わず邪悪な笑みを浮かべてしまった。

「警察官の娘ー」
菜月美の中に居る室井は、笑いをこらえるのに必死だった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

放課後ー。

「--話って?」
菜月美に呼び出された、警察官の娘・可奈恵は
校舎裏に来ていた。

「---あなたの身体…ちょうだい!」
菜月美が言うと、可奈恵は「え?」と戸惑いの表情を浮かべる。

次の瞬間、菜月美が可奈恵にキスをするとー
二人はその場に倒れた。

「---うふふ♡ わたし、警察官の娘になっちゃった♡」
起き上がった可奈恵が嬉しそうにポーズを決める。

そしてーー
部下を呼び出して菜月美の身体を、アジトに運び込ませたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「おはよう菜月美ちゃん」
ゴスロリ風の衣装を着た可奈恵が、菜月美を起こす。

「え・・・わ・・・わたし・・・」
戸惑う菜月美。

目の前にはーーー”自分”の姿がある。

「---えっ…な、なんでわたしが・・・?」
戸惑う菜月美。

そんな菜月美に、可奈恵は鏡を見せた。

「---入れ替わりって知ってる?
 わたしと、あなたと体を入れ替えたの。

 これからわたしは可奈恵として、
 あんたは、菜月美として生きていくの」

菜月美は拘束された手足を動かしながら言う。

「な・・・何なの?わたしのからだ、返して!」
叫ぶ菜月美。

「---くくく・・・イヤだね」
可奈恵は、タバコに火をつけてそれを吸い始めた。

「や、、やめてよ!わたしの身体で、
 そんなことしないで!!」
菜月美になった可奈恵が叫ぶ。

「--ふふ」
可奈恵を乗っ取った室井は、別にタバコ好きではない。

けれどー
入れ替わりの醍醐味は、
本人の目の前で、本人が絶対にしないことをさせて、
それを見せつけてやることにある。

「--どうだ?この衣装?ふふふ、可愛いでしょ?」
可奈恵が嬉しそうに言う。

「---や、、やめて!
 わたしに恥ずかしい事させないで!
 わたしの身体、返してよ!菜月美!」

その言葉を聞いて、
可奈恵は笑った。

「菜月美…ねぇ・・・
 わたし・・・いや、俺はさ…
 今まで、何人もの体を転々としてきたんだ。

 今は可奈恵ー、そう、お前の身体で、
 そして、その前は今、お前の身体になっている菜月美、
 その前はお前らのクラスメイト、江麻。
 そしてその前はホームレス」

そう言うと、可奈恵はある薬を取り出した。
「入れ替わり薬ー。
 ヒトにキスをすることで、体を入れ替えることのできる薬だ」

その言葉に、拘束されている菜月美は驚きを隠せない。

「--この薬を使えば、次々と体を入れ替えて、
 逃げることができる」

その言葉に、菜月美は呟く「・・・逃げる…ま、まさか・・・」

「そう!俺が今巷で話題の凶悪犯罪者、室井さんだよ!
 はははははは!」

可奈恵は表情をゆがめて笑った。

「入れ替わりは最高だぜ!
 逃げることができるし、そして何よりー
 入れ替えさせられた子の”絶望”を見ることができる!」

可奈恵になった室井は、
可奈恵が絶対に出さない様な大きな声で笑った。

「--お前にも、絶望を見せてやるよ」

そう言うと、可奈恵になった室井は笑った。

そして、テレビを目の前に置く。

「今から俺は、お前として…可奈恵として
 家に帰る。

 お前には、その俺の生活を見せてやるよ。

 ふふふ・・・今日からわたし、
 お父さんを困らせる悪い娘になっちゃうの♡」

可奈恵の言葉に菜月美になった可奈恵が
反応した

「や・・・やめて・・・やめてよ!」
目からは涙がこぼれていく。

「--自分の身体が、悪い子になっていく様子…
 溺愛していた娘が、非行少女に変わっていき、
 困り果てる父親の様子。
 最後に待つ家庭崩壊

 それを、お前に見せてやるよ」

可奈恵は菜月美に顔を近づけながら不気味にほほ笑む。

「--自分が優等生から悪い子に転落していく姿を見れる…
 最高のドキュメンタリーだぜ!はははは!」

可奈恵は大笑いしながらアジトから外に出て行った。

「待って!やめて!ねぇ!」
拘束されたままの菜月美は、叫ぶことしかできなかった・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

夜。

「ただいま」
可奈恵が帰宅した。

父の光輝が「おかえり」と返事をして、
目を疑った。

「---なに?」

可奈恵が、ピアスの穴をあけて、
ピアスをしていたのだ

「か、、可奈恵…それは…?」
父が戸惑う。

「--これ?別にわたしの勝手でしょ?」
そう言うと、可奈恵は愛想なく、自分の部屋へと入って行った。

”くくく・・・俺を追う刑事の娘の身体を奪えるなんてラッキーだぜ。
 さぁ、、お前らを地獄に落としてやるぞ”

室井は心の中でそう囁いた。


「---違う!お父さん!それはわたしじゃない!!!」
アジトのテレビに流れてくる、映像を見ながら菜月美になった
可奈恵は叫んだ。

「---お父さん!気づいて!!!」

そう叫ぶ娘の想いは、父に届くのだろうか…。



②へ続く

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コメント

入れ替わりモノ…
普段は憑依モノメインなのですが、たまには…!

逃亡するなら憑依の方が絶対に楽だと思いますが、
この室井さんは、入れ替わり後に、相手が見せる絶望を見たくて
入れ替わり薬を手に入れたようです。

ちなみに、読んでなくても、全然問題ナシですが、
この室井さんは、
「凶悪犯罪者・室井」に登場した室井さんと同一人物です^^

あの時は憑依薬を使ってましたが、
奪われた側の相手の絶望を見たい室井さんは、
入れ替わり薬に手を染めたようです!


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無名

Author:無名
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