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<憑依>フュジティブ~ロードオブポリス~③”解”(完)

憑依されてしまった部下の女性警官を前に、
警察官の孝彦は、確保を試みるー。

息子の龍平がのようには、できなくても、
自分なりのやり方で、彼は憑依薬に立ち向かおうとしていた。

一方の龍平は、由香里から問題のブツを受け取ることに・・・。
----------------------------

「---ごめんね」

由香里の家に辿り着いた龍平は、
由香里から、大きなボストンバックを手渡されていた。

「---お、、重たい」
龍平が苦しそうに声をあげる。

普段は、落ち着いた服装の由香里は、
座間に憑依されている間、
どんな格好をさせられていたのだろう。

龍平は、真面目な由香里を踏みにじった
座間のことを、今でも許せていなかった。

これからも、ずっと、許すことはできないだろう。

「---わたしも、自分で見てびっくりしちゃった・・・
 こんなに買い込んで、何させられてたんだろう・・・って」

由香里は、座間が消えたあとに、
憑依されていた間の記憶の一部を思い出していた。

けれど、記憶にない部分も多く、
自分が何をさせられていたのか、完全には分からない。

「---でも、おとうさんとおかあさんにも相談できないし・・・」

由香里が憑依されていたことは、由香里の両親は知らない。
”座間が由香里に成りすましていた”のは、
由香里にとっては幸いかもしれない。

恐らくは、座間は人目につかないところで、由香里の身体を
楽しんでいたのだろう。

「--大丈夫。僕に任せて」
龍平がボストンバックを持ちながら微笑んだ。

「--ごめんね。迷惑ばっかりかけて」
由香里が悲しそうにつぶやく。

”ごめん”
由香里は、憑依から解放されたあと、
以前よりもよく謝るようになった。

恐らくはー、
座間に憑依されていたときのことを気にしているのだろう。

芯の強い由香里は、一見完全に立ち直っているようにも見える。

けれどー
やっぱり、座間に憑依されていた、ということは
由香里の心に傷を残している。

龍平は、由香里の言動から、そう感じずには居られなかった。

「---気にしないで。
 ほら、父さんも事件のこと知ってるから、なんとか処分するよ」

龍平が笑うと、
由香里も優しく微笑んだ。

そしてー

「女装に目覚めちゃ、ダメだからね?」
と由香里が冗談を口にした。

「め、目覚めないよ!僕、そんな趣味ないし!」
龍平が顔を赤らめて言うと、
由香里は「本当にありがとう!今度、お礼もちゃんとするからね!」
と言って、龍平に対して優しく微笑みかけた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

廃工場に銃声が響く。

憑依された史恵が放った銃弾が、
孝彦の足を貫いていた。

「くっ・・・」
孝彦がよろめく。

「--先輩!」
床に倒れている後輩刑事の南が
床に落ちていた銃の方に向かって這いずりながら言った。

「---だ、大丈夫だ…」
孝彦がそう答える。

史恵が笑う。

「---どう?仲間に撃たれた気分は?
 そして、人殺しをさせられるわたしを見るのは!」

史恵が嬉しそうに叫ぶ。

「--この綺麗な手が、これから
 人殺しするの。
 うふふ・・・ゾクゾクするじゃない♡」

笑う史恵を見て、孝彦は言う。

「--君はそんなことをする子じゃない」
孝彦はそう言って、足を引きずりながら
史恵の方に向かっていく。

「---ふふっ・・・
 今のわたしは、何でもしちゃうのよ♪」

史恵は容赦なく、さらに銃を発砲した。

「---ぐっ…」
孝彦の左腕を貫き、そこから血が噴き出す。

「---君に、人殺しはできない」
孝彦が言うと、史恵が不愉快そうに表情をゆがめた。

「---君は、街の人たちを守りたい・・・
 いつも、そう言っていたじゃないか…
 その君が、人殺しを、できるはずがない」

孝彦はまっすぐな目で言う。

「--うるせぇよ」
史恵が言うー。

「こいつは、今や俺の思うが儘なんだよ!」
史恵が自分を指さしながら言う。

「--それ以上近づいたらテメェの頭を
 ぶちぬいてやる!」

史恵が歪んだ表情でそう叫んだ。

「--やれるものなら、やってみろ」
孝彦は足を引きずりながら、
史恵を確保するために、手錠を手に、近づいていく。

「---撃つぞコラァ!」
史恵が低い声で叫んだ。

背後に居た、刑事の南が銃を拾った。
そして史恵に向かって銃を向ける。

「撃つな!」
孝彦が南に向かって叫んだ。

南はその手を止める。

「--俺は・・・俺たちは
 仲間を射殺したりしない・・・!」

孝彦たちは、上層部の佐倉から
射殺の許可を出されている。
しかしながらー
孝彦は、それに応じる気はなかった。

「---うぜぇ!正義きどりのクソどもが!
 うぜぇ!!うぜぇ!」

史恵が怒りの形相で叫ぶ。

そして、
孝彦の頭に狙いを定めた。

「---死ね!」
史恵が叫ぶと同時に銃声が響き渡った。

しかしーーー
銃弾は孝彦の肩を掠めただけだった。

「---!?」
史恵が驚いた表情を浮かべる。

銃を握る手が微かに震えていた。

「ーーーくっ…くそっ・・・
 この女…」

史恵の意識が、わずかに銃の向きを
逸らしたのだった。

「----!」

気付けば、孝彦が目前まで迫っていた。

そして、孝彦の格闘術に倒され、
史恵は手錠をかけられた。

「くそっ…離せ!
 くそっ…ふざけやがって…」

史恵が激しい形相で、孝彦を罵倒する。

「---だいじょうぶか?」
孝彦が、後輩刑事の南に手を差し伸べる。

傷を負ってはいるものの、
命に別状は無さそうだ。

「---うっ…」
孝彦が撃たれた足を押さえて
蹲った。

「--先輩こそ、大丈夫ですか?」
南が笑いながらそう言った。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

由香里から、服を受け取った龍平の元に
連絡が入った。

父の孝彦が病院に搬送されたのだという。

「---父さん!」
龍平は慌てて病院に駆けつけた。

「--龍平」
孝彦は、龍平を笑顔で出迎えた。

「父さん?大丈夫?」
龍平が心配そうに駆け寄ると、
孝彦は微笑んだ。

「--龍平、お前は自慢の息子だ」

孝彦の言葉に、龍平は意図が分からず、
首をかしげた。

「へ?な、なんだよ急に…」
龍平が照れくさそうにする。

孝彦は思う。

自分も、憑依薬の恐怖を目の当たりにして分かった。
龍平の、苦しみがー。
憑依されたクラスメイトと向き合うことの、辛さが。

「ーーーところで龍平。その大きなボストンバックは何だ?」
孝彦が言う。

大きなボストンバックー。
由香里から受け取った洋服の数々だ。

「え…こ、これは」
龍平が咄嗟の言葉に戸惑っていると、
少しだけ開いているチャックから鞄の中身が見えた
孝彦は微笑んだ。

「お前に…女装の趣味があったとはな」

「ちがっ…違うよ!これは・・・!」

孝彦は、照れる龍平を見て、今一度微笑んだ。

「--あぁ、分かってるさ。
 優しいな、龍平は」

そう言うと、孝彦は”少し休む”と呟いて、
安心したかのように、眠り始めた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

後日ー。


「--おらぁ!出せ!出しやがれぇ!」
特別牢に幽閉された史恵が
怒りの声をあげている。

「---憑依から彼女を助け出す方法は?」
孝彦が言うと、
上層部の佐倉は首を振った。

「---まだだ。
 だが、彼女は必ず救い出す」

佐倉は、モニター越しに、特別牢に幽閉されている
史恵を見つめる。

「---」
孝彦も悲しそうにその映像を見る。

史恵は、牢の中で暴れている。

彼女を、救い出すには、まだ時間がかかる。

龍平が由香里を救い出したパターンは、
特別なパターンだ。
世の中、そう上手くは行かない。

特別牢には、特殊な電磁波を浴びせており、
憑依した男が、史恵から抜け出して
別の人物に憑依できないように対処してある。

あとは、憑依薬の効力を打ち消す手段さえ
見つかれば…。

「--結局、座間以外の人物には
 憑依薬は売買されていなかったようです」

孝彦は、そう報告した。

座間は、まだ未完成だった憑依薬を
ゆするようなカタチで手に入れたらしい。

それ故、座間が手にしていた憑依薬以外は、
出回っていないようだ。

あの廃工場にあった、記録が確かならー、の話ではあるが。

「--そうか」
佐倉は安心したように言った。

孝彦が、佐倉に会釈をして、
その部屋を後にする。

一人残された佐倉は呟いた。

「史恵…。
 必ず助け出すからな…」

親戚筋の史恵を、なんとか憑依から解放しようと、
佐倉は改めて決意するのだった。

たとえ、何年かかったとしても。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

憑依薬ー。

決して人類が到達してはならない”領域”

その禁忌が
座間という名の悪魔のような逃亡者(フュジティブ)を
生み出したー


あのような、悲劇は、もう2度と繰り返してはならない。
絶対にー。


「---俺にできるだけのことはした」
孝彦は、帰路の道を歩きながら、そう考えた。

龍平は、由香里を座間の手から救い出した。

けれど、父である孝彦に”今、できること”は
部下である史恵の身体を殺さずに
確保することだけだった。

孝彦は、警察官であるが故に、
どうしても”確実性”を求めてしまう。

犯人の逮捕には証拠が必要だ。
動かぬ証拠と、確実にコイツだと思える確証が。

龍平のように”賭け”に出ることもできる。
しかしー
龍平が、あのとき、由香里にキスをして
座間が自分の身体に移ってくるという”確証”は
なかったはずだ。

それでも、龍平は行動に出た。
クラスメイトである由香里を救うためー。

孝彦にはそれは出来ない。
年と共に勇気を失ったのかー
それとも、龍平の若さゆえの無謀かー。

けど、そんなことはどちらでもいい。
龍平は龍平の方法で、
そして、自分は自分の方法で。


「俺は、俺にできるやり方で、人々を救う-」

孝彦は、そう呟いて、
家に向かって歩き始めたー。


おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

フュジティブの番外編でした!
憑依薬の出所を、ちゃんと片付けておこう!ということで、
考えたお話です!

書くかどうかは迷っていましたが、
せっかく内容を思いついたので、書いてみました!

ここまでお読み下さってありがとうございました!




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コメント

No title

フュジティブは僕が気に入ってる作品のひとつなのですごく楽しめました!
毎日投稿大変だと思いますが無理をしない程度にがんばってください!

Re: No title

> フュジティブは僕が気に入ってる作品のひとつなのですごく楽しめました!
> 毎日投稿大変だと思いますが無理をしない程度にがんばってください!

ありがとうございます!
楽しんでもらえて何よりです!
体の方も大切にしながら頑張ります!
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プロフィール

無名

Author:無名
憑依小説好きです!
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