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<憑依>地獄の真実①~幸せな最期~

仲良しの大学生カップル。

その幸せは永遠に続くと思われたー。
けれど、病が彼氏を襲うー。
余命宣告された彼氏は、次第に弱っていき・・・

死を迎えたその時、彼は”地獄のような真実”を知り、
復讐に動き出す!
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「---もう、一緒に花火を見に行けないな」

病室―。
弱弱しい姿の男子大学生・福留 光保(ふくどめ みつやす)が
窓の外を見ながら呟く。

「---そんなこと言わないで・・・」

横に居た女子大生ー、
光保の彼女の星川 藍那(ほしかわ あいな)は、
悲しそうに、光保の手を握った。

光保と藍那は、去年の夏から付き合っているカップル。

しかし、去年の冬―。
彼氏の光保に大きな病気が見つかった。

余命は、半年ー

そして、今、その光保の命の灯は
尽きかけようとしていたのだった。

体調が日に日に悪くなっていく光保。
彼女である藍那は、毎日、毎日、
光保の居る病院を訪れた。

他愛のない話をしたり、
時には急に悲しくなって、涙を流したりー。

「---俺さ・・・」
光保が外を見つめながら呟く。

「--生まれ変わっても、もう一度、藍那と一緒に
 なりたい・・・」

光保の言葉に、藍那は涙を浮かべながら微笑んだ。

「---うん。わたしも」

二人は、お互いの手を握りながら、
病室の窓の外を見つめたー

綺麗な夕日が見える―。

「---もう、俺の手はあそこには届かないんだな」
光保がつぶやく。

彼は、小さい時からずっと真面目に生きてきた。
成績も、スポーツも万能だった。
これから、就職活動をしてー
というタイミングで、こんなことになるなんて・・・

「ーーーー」
藍那も、夕日の方を見つめる。

自分には、まだ手の届く世界ー
けれど、光保は、もうこの夕日に、手を伸ばすことはできない。

「---諦めないで」
藍那は泣きながら言う。

もう、だめだと分かっている。
見れば、分かる。

そしてー、
光保は、藍那以上に分かっている。
”もう、自分はダメだ”と。

病が、自分の身体を少しずつ、
けれども確実に、蝕んでいる。

「---わかった。諦めないよ。
 また、今年も花火を見に行こう」

光保は、そう答えた。

「約束だよー」
藍那が言うと、
「あぁ」
と、光保が答えたー

二人とも、分かっている。
この約束が”守られることはない”-と。

藍那のスマホに着信が入った。
「あ、ごめん、ちょっとお話ししてくるね」
そう言うと、藍那は病室の外へと立ち去っていく。

「---ごめんな・・・藍那」

藍那は、自分が死んだら、
どうなってしまうのだろうか?

やっぱり泣き崩れてしまうのだろうか。

藍那には、できる限り、辛い思いをさせたくない。
けれどー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

病室から出た藍那は、
笑みを浮かべて電話に出た。

「え?今?病院よ」
藍那が言う。

そして続けた

「大丈夫よ、
 あの”死にぞこない”
 もうすぐ死ぬから。

 うん・・・うん、ふふ、嬉しい♪」

相手は誰なのだろうか。
死にぞこないとは誰のことなのだろうか。

藍那はスマホの通話を終了させると、
優しい笑みを浮かべて、病室へと戻って行った。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

3日後―

光保の容態が急変した。
光保は、手に、藍那がくれたお守りを
握りしめていたー。

藍那が、徹夜で作ってくれた
特製のお守りー。

「---あ・・・あい・・・」
激しい苦しみの中、光保は藍那の名を
呟いた。

藍那も、すぐに知らせを聞いて
駆け付けた。

「--光保!」
藍那は、光保の手に寄り添う。

もう、彼にできる治療は無いー。
だから、医師と看護婦も、最後の処置を
行うだけだった。

藍那が手を握ると、
光保の表情から苦しみの表情が消えー
少し、穏やかな様子になった。

「----光保!」

藍那が叫ぶ。
光保はもう意識がもうろうとしている。
恐らくはこのままー。

しかし、奇跡が起きた。

苦しそうにうわごとを発するだけだった
光保が、穏やかな表情で目を開いた。

「藍那・・・」

ちゃんと、意識がある。

「--光保」
藍那は目から大粒の涙をこぼしながら、
最愛の彼氏の名前を呟いた。

「---藍那・・・先に逝って、
 向こうで花火大会の場所取りしてるよ・・・」

それだけ言うと、光保は微笑んだ。

「うん・・・何十年先かわからないけど、
 わたし、必ず光保のところに行くから・・・」

藍那が涙をこぼしながらそう言うと、
光保は満足そうに微笑んで、
そしてーーー穏やかに、目を閉じた。

医師が、瞳孔の確認を行う。
そして、日付と時刻を告げ、ご臨終を告げたー。

医師たちが藍那に礼をして、立ち去っていく。

藍那はーーー
泣いてーーーーー

いなかった。

いや、笑っていた。

「ふふ・・・ふふふふふふふ」
一人残された藍那が笑う。

「--ばいばい、光保」

そう言うと、藍那は立ち上がり、
冷たい目で光保を見つめた。

「--あんた、つまらなすぎなのよ
 真面目でスポーツもできて、勉強もできる。
 でも、それじゃ、刺激が足りない!
 女性を楽しませることはできない!

 だからーー」

藍那は、ほほ笑んだ。

「--死んでくれて、ちょうどよかったー」

藍那は、表向き、優しい女子大生。
素行不良も無ければ、浮いた噂もなく、
真面目で優しく、理想的な女子大生だった。

しかしーー

それは”表の姿”

裏では夜に遊びほうけたり、
陰険な事をしたり、
お世辞にも、良い女性ではないのだー

それでも、表向きは良い子で通っているのは、
藍那の演劇部としての経験ー
優れた演技力にあった。

「これであんたに別れを告げずに、
 別れることができるー」

藍那は、近くの大学の男と浮気をしていた。

だがー
光保に別れを告げて、その男と一緒になれば、
イメージが悪くなる。

どうするべきか。
そう思っていた時に、光保から余命宣告されたことを
告げられた。

だからー。
待った。

光保が死ぬのを。

彼氏に死なれた悲劇のヒロインとして、
自分が君臨する為に。

「--花火大会の席どり、よろしくネ。
 わたしは、行かないけど・・・
 ぷっ・・・ふふふふ」

面白そうに言うと、藍那はそのまま
病室から立ち去った。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

気づいたときには、
自分の葬式を見つめていたー。

光保は、
霊体となってこの世に残っていた。

ずっと、ここにとどまることはできない。

自分は、もう死んでしまったのだから。

そんなことは分かっている。

けど、見たかった。
自分の死に、どれぐらいの人が悲しんでくれるのかー。

母と父が、涙している。
大学に入って一人暮らしをしてからは
会う機会は減ったけど、
やっぱり、息子のことを想ってくれていたのだろうー。

大学の親しい友達たちが、悲しそうにしている。
いつも騒いでばかりの腐れ縁みたいなやつらだったけど、
やっぱりこういうときはちゃんと悲しんでくれるー。

大学の教授や関係者が何人か、参列してくれている。
自分に期待してくれていた教授には申し訳ないことをした。

ーそして、
「光保・・・」

彼女の藍那が涙を流しながら、礼儀正しく、一例して、
黙とうをささげた。

泣き崩れちゃうんじゃないかと
心配していたが、
藍那は強かった。
目に涙を浮かべながらも、しっかりと他の参列者たちにも
挨拶をして、自分の席へと戻るのだった。

「ごめんなー」
光保はそう呟いた。

参列者たちが、食事を始める中、
藍那は、一人、棺の前にやってきていた。

”そろそろ消えるか”
そんな風に思っていた光保は、
ふと、藍那の方を見た。

上空にうかびながら、生きている人たちを
見下ろすと言う経験は、
なかなかできるものじゃない。

「----!!」

光保は、驚いた。

藍那がーー”笑っている”

そして、呟いた。

「死んでくれて、ありがとう」
藍那はそう言った。


「えーー?」
光保は耳を疑った。

そして、その疑いはさらに深まった。

参列者の中に、見知らぬ金髪の男が居ると、
疑問に思っていた。
親戚筋の人間かと思っていたが、違った。

その男が、藍那の背後から現れると、
藍那を優しく抱きしめた。

「藍那・・・これでお前は俺の女だ」

「---うん・・・嬉しい」

藍那が嬉しそうな顔でーー、
光保には見せたことの内容な
”女の顔”で微笑んだ。

「--ど、どういうことだ!おい!藍那!」
光保は叫んだ。

しかし、光保の叫びは届かない。
自分は、もう死んでいるのだから。

そして、あろうことか二人はそのまま抱き合い、
ディープキスを始めてしまった。

「うふぅ♡、だ~め!ここでやったら
 見られちゃうかも、でしょ?幸之助くん?」

藍那が小悪魔みたいな笑みを浮かべると、
金髪男は頷いた。

眞城 幸之助(ましろ こうのすけ)-
近くの大学に通う男だが、
素行が悪く、夜の街でチンピラたちと
つるんだりしているとのうわさもある男だ。

そんな男と、
夜のゲーセンで遊んでいた藍那は出会った。

真面目すぎる光保に不満を感じていた藍那は、
眞城の持つ、危なっかしさに惹かれたー

既に、3、4回ほど体の関係も持っている。


「--う・・・嘘だ」
光保は、二人を見つめながら呟く。


「--あいつ、なかなか死なないから
 本当につらかった。
 毎日毎日健気な彼女演じてさぁ」

藍那が、イスの一つに座って
脚を組んで、舌打ちする。

「---いやぁ、でも、光保くんだったっけ?
 そいつも満足だろ?
 大好きなの女に看取られて死んだんだからさぁ・・・
 はははっ!」

眞城が笑う。

「--ふふふ、そうね!私に感謝しなさい!光保!」
棺に向かって、挑発的に叫ぶ藍那。


「--う、、、嘘だーーーーー!」
光保は叫んだ。


「--じゃ、いこっか!
 美味しい料理、食べましょ!」

「あぁ、俺たちの未来を祝福して、
 乾杯、だな!」

藍那と眞城は手をつなぎながら
宴会場の方へと向かった。

「--許せない」
光保は、棺の前で自分の遺体を見ながら言った。

「許せないーーーゆるせねぇ」
光保の目が、穏やかなものから悪魔のようなものに
変わっていくい。

「藍那ーーー
 あいな・・・
 アイナーーーー!」

怒鳴り声を上げる光保は、
怨霊に成り果ててしまった。

そしてーー

「全部、全部壊してやる・・・
 お前の人生、滅茶苦茶にしてやる・・・!」

光保は、憎しみのこもった口調で、そう、呟いた・・・


②へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

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今日はプロローグ部分でした!
明日から、藍那ちゃんの人生を壊していきますよ!(悪魔)

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無名

Author:無名
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