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<憑依>くノ一完結編~現代(いま)を生きる者~①決意

ある男の陰謀で
現代の女子高生に憑依してしまったくノ一の魂。

現代に戸惑いながらも、くノ一は次第に、
この世界の生き方に慣れていく。

しかし、彼女はある決意をしていたー。
くノ一(過去作はこちら)の最終章です!
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春ー

桜舞う場所で、
女子高生の愛衣(めい)は
悲しそうに桜を見つめていた。

「---桜は、、いつの時代でも変わらないな」
愛衣は呟く。

”今の時代”
愛衣は今、戦国時代を生きたくノ一に憑依されている。

とある男の陰謀によって、この愛衣という女子高生に
憑依させられてしまったのだ。

しかしー
彼氏の圭吾(けいご)はは、そんなくノ一のことを
気に入り、あれから数か月が経った今でも、くノ一は
愛衣に憑依していた。

「--あれ?黄昏てるの?」
背後から彼氏の圭吾の声がした。

「バ…違う!、なんとなくボーっとしてただけだ!」
愛衣が叫ぶ。

くノ一としての言動が染みついていて、
どうしても女の子らしい行動をするのは苦手だった。

「--顔赤いけど~?」
圭吾はそんなくノ一のことを、よく茶化していた。

「う…うるさい!」
愛衣が顔をさらに赤らめる。

「--あ、それより僕のこと待っててくれたんだね。
 ありがと~」

放課後、愛衣は、わざわざ圭吾のことを待っていた。

「---お前を待っていたわけじゃない」
愛衣が顔を逸らして言う。

「--じゃあなんでここにいるのさ?」
圭吾が言うと、
愛衣は、「うるさい!刺すぞ!」と叫んだ。

「うわ~怖い怖い!」
笑いながら逃げる圭吾を、
愛衣は「逃げるな!」と叫んで追いかけていくのだった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

下校しながらも圭吾と愛衣は仲良く雑談
しながら、二人は歩いていた。

「でさ~そのとき愛衣はさ~」
圭吾は、今も憑依されたままの
自分の彼女、愛衣の話を嬉しそうに
くノ一に聞かせている。

愛衣は思う。

(本当に楽しそうだな、この女の話をするときは)

少し、嫉妬した。
自分も、数か月間、圭吾と一緒に居たことで
圭吾のことを女として好きになった。

戦うことしか知らなかった彼女に、
圭吾は、人生の楽しみ方を教えてくれた。

けれどー

「--好きなのだな、この子のこと」
愛衣が不貞腐れた様子で言う。

「--あ、あれ?
 ひょっとしてふて腐っちゃった?」
圭吾が笑う。

「--そんなんじゃない!
 私はお前のことなど…!」
顔を赤らめて言う愛衣。

「~~はは、可愛げないな~!
 愛衣だったら、にっこり微笑んでくれたのに…」
圭吾が冗談めいて言うと、

「ふん、もう知らぬ!」
と言って、愛衣はそのまま走り去ってしまった。

「---あらら、怒っちゃったかな」
圭吾は苦笑いしながら
空を見上げる。

「----」

くノ一のことは好きだ。
でも、愛衣のことも好きだ。

圭吾はこの数か月間、ずっと迷っていた。

愛衣のことを全く気にしていないー
そんな風に装ってきた。

それはー
くノ一に気遣いをさせないため。

自分が愛衣を想うようなそぶりを見せれば、
くノ一はきっと、それを気にする。
なんとかして、自分を消そうとするだろう。

「--なんとか、二人をこの世に残す方法は
 ないのかな」

圭吾は少し悲しそうにそう呟いた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

その日から、愛衣は
LINEを送っても返事を返してくれなくなった。

「なんだよ、本当に怒っちゃったのかな」
圭吾は思う。

このままじゃいけないーと。

だがしかし、
いったいどうすればいいのか。

愛衣を、元に戻してあげたい。
けれど、そうしたら、くノ一は消えてしまう。

そして、くノ一である彼女と別れたくないー
でも、それじゃ、愛衣が永遠に人生を奪われたままだ。

半分ずつ?
いや、愛衣が納得しないだろう。
当たり前だ。
自分の身体にズカズカと入ってきた他人が
身体を半分ずつ、なんて誰だって認められないだろう。


翌日。

「ねぇ!ちょっと!どうして無視するんだよ!」
圭吾が叫んだ。

愛衣は、学校でも圭吾のことを無視している。

「--なぁ、この前の事怒ってるなら謝るよ!」
圭吾は叫ぶ。

それでも愛衣は返事をしない。

「なあってば!」
圭吾が手を触れると、
愛衣は殺気に満ちた目で言った。

「--触れるな」

と。

くノ一としての気迫のある表情。
圭吾は思わず、黙り込んでしまう。

「土曜日ー、
 ちょっと付き合ってくれるか?」

愛衣が言った。

「土曜日…あ、うん、いいけど」
圭吾が言うと、
愛衣は何も返事もせずに、
そのまま教室へと入って行った。

だんだんとこの世界になじみ始めていたくノ一。
なんだか、また、最初の頃のように
戻ってしまったようなー
そんな感覚を圭吾は覚えるのだった。



放課後。

「ね、ねぇ…一緒に帰ろうよ!」
圭吾が愛衣に声をかける。

しかしー

「寄るな!」
愛衣が叫んだ。

「ど…どうして…」
圭吾が悲しそうな表情を浮かべる。

夕日に照らされた校舎前。
しばしの沈黙が流れる。

「--私は、別にお前のことなんて、す、、好きじゃない!
 弱弱しくて、なよなよして!
 私の生きた時代だったら、お前のようなやつは
 生きていけない!」

愛衣が叫ぶ。

周囲の同級生たちが不思議そうに、
愛衣と圭吾の方を見ている。

「--ご、ごめん…」
敬語のとても悲しそうな表情を見て、
愛衣は呟いた。

「そ、それに、わたしは、
 お前の彼女じゃない!」

そう言うと、
足早に愛衣は立ち去ってしまった。

「----」
圭吾が地面を見つめる。

地面には水滴の跡が残されていた。

「---君は…」
圭吾が、愛衣の後ろ姿を見つけながら、
悲しそうにつぶやいた。


「---許せ」
愛衣は、歩きながら涙を流していた

「これも、お前のため…
 わたしは、、この世に生きる人間じゃない…」

愛衣は涙を指につけて思う。

「涙……
 わたしは、忍びとして、失格だな」

そう呟くと、彼女はそのまま悲しそうに
歩き続けた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

自宅に帰った愛衣は、
机の上に飾ってある写真を見つめる。

圭吾と愛衣が嬉しそうに写っている写真。

くノ一である自分が、憑依する前の写真だ。

「ーー楽しそうだな」
愛衣は、少しだけ笑う。

本当に幸せそうだー。
願わくばー
自分が彼の隣にいたかった。

けれどー
自分は愛衣じゃない。

そんなことは分かっている。

そしてー
もう一つ…

圭吾は、愛衣を見ているー
どんなに圭吾が気を使っていても分かる。

彼はー
くノ一である自分ではなく、
やっぱり愛衣のことを見ている。

愛衣のことなんてどうでもいいや、みたいな雰囲気や
全く忘れているような素振りもある。

けど、違うー

それは、彼の優しさ。

本当の彼は、愛衣のことを気にしている。
でも、くノ一である自分に気を使って、
それを言い出せないでいる。

「ーーー私は…もう、還るよー」
愛衣に憑依しているくノ一は、
寂しそうに、写真を見つめながら呟いた…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

土曜日。

圭吾は、とある人気のない野原に
呼び出されていた。

林を抜けた先にある、何もない野原。
建物の建設予定となっているものの、
場所が悪いため、なかなかその計画も進んでない。

そこにー
ショートパンツ姿で薄着の愛衣が待っていた。

「--ちょっとさ…
 露出度高すぎない?」
圭吾が笑いながら言うと、

「う…うるさい!わたしには動きやすい
 服装の方がいいんだ!」
と愛衣は顔を赤くしながら叫んだ。

「はは…今日も可愛いな」

圭吾が茶化すようにして言うと、
愛衣は顔を真っ赤にして、圭吾を叩いた。

「いてて…」
圭吾が叩かれた頬を抑えながら苦笑いをしていると、
愛衣が言った。

「--ここ、なんだか分かるか?」
愛衣が真剣な表情で言う。

「--え?ただの野原?」
圭吾が言うと、
愛衣が首を振った。

「--そうだな。
 お前にとっては、ただの野原…
 いや、今を生きる人間にとっては、
 ただの野原だな」

愛衣が寂しそうに野原を見回す。

「ここは、わたしと、わたしの殿が暮らした
 城があった場所だ…」

愛衣がつぶやく。

「え…君の・・・」
圭吾が言うと、愛衣はうなずいた。

そして、桜の木を見つめながら愛衣は言う。

「---よく、あの桜を見たものだ」
愛衣が少しだけ懐かしそうに微笑む。

「--・・・そっか、思い出の場所なんだね」
圭吾が言うと、
愛衣はうなずいた。

風が吹き、桜がその花びらを散らせる。

愛衣は、真剣な表情で圭吾の方を見た。

「----…」
愛衣は、少しためらった後に口を開いた。

「--わたしは、帰るべき場所に、帰る」
愛衣が言ったー。

圭吾はその言葉を聞いて、
しばらく、何の返事もできなかった。

風と、木々が揺れる音だけが、
耳に聞こえてくる。

「---え…」
圭吾がやっとの思いでそれだけ言うと、
愛衣は悲しそうに微笑んだ。

くノ一に憑依された愛衣が、
こんなに悲しそうな顔をするのは、
初めてだ。

「-わたしは、今の時代に愛想がつきた。
 だから、帰る」

愛衣はそれだけ言うと、
背を向けて、呟く。

くノ一は思い出す。
最後の瞬間、殿は耳打ちした

”役目を果したら、戻ってこいー
 戻る方法はーーー”

愛衣は決心して言った。

「---お別れだーー」

と。


②へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

ずいぶん間が空いてしまいましたが、
くノ一の完結編を皆様にお届けします!
現代から帰ることを決意したくノ一の
最後のお話をお楽しみください!

明日で完結デス!

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プロフィール

無名

Author:無名
憑依小説好きです!
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