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<憑依>流行インフルエンザ②~伝染~(完)

新型のインフルエンザの感染者は次第に増えていく。

ウイルスに操られて、感染を広めていくものたちー。

そして、次第に感染は拡大し、
パンデミックを引き起こす―。
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「--お、お姉ちゃんが!?」
希未の妹、純玲は、自宅で電話越しに、
母親から、信じられない報告を聞いた。

それはー
姉の希未が下校中に倒れて、
そのまま息を引き取ったというのだ。

朝から高熱に苦しんでいる様子だったと。

「そんな…ゴホッ」
妹の純玲が咳をすると、
母親が心配そうに尋ねた。

「大丈夫?」

希未のインフルエンザが、妹の純玲にも
写ったんじゃないかと、母親は心配していた。

「--ううん、大丈夫。
 熱もないみたいだし」

純玲が笑う。

母親や、姉の希未が運び込まれた病院にいる。
純玲は、すぐにでも駆け付けようと思った。
しかしー、本当はちょっと調子が悪い。
もしかしたら、姉のインフルエンザ移ってしまったのかもしれない。

そしてー純玲は思う。
”今、インフルエンザに倒れるわけにはいかない”と。

何故ならー
明日の土曜日は、応援しているアイドルの
ライブがあるのだ。

高校1年の純玲は必死にアルバイトをして
このライブを見に行くためのお金を貯めた。

インフルエンザに、負けるわけにはいかない。

「--わたしは、敦夫くんのライブを見に行くの!」
純玲はそう呟いて、自分の部屋へと上がっていった。

姉が死んだー。
そのことは純玲にとっては大きなショックだ。
けれどー、
それでもライブは観に行きたい。

純玲は自分の部屋のベットに寝転ぶと、
姉の死を悲しみ、涙を流した。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日。

純玲は体温を測っていた。

36.9。

ちょっと高い気もするが、
インフルエンザでは無かったのかもしれない。

今日は土曜日。
仮に、また体調を崩したとしても
日曜日がある。

両親は、希未の死で大忙しだ。
葬式の類は、月曜日からみたいだから、
純玲が今日、クヨクヨしても仕方がない。

純玲は、予定通りライブに行くことにした。
そして、ライブの帰りに、姉の遺体と対面するつもりだー。


しかし、純玲は気づいていない。
彼女の中には、既に新型のインフルエンザ”P型”が
感染していた。

P型は、
純玲がライブを楽しみにしていることを知り、
あえて”熱”を出さないように、身体に命令していた。

既に、純玲の身体は、インフルエンザに支配されている。
あえて、意識を奪わないのは、
純玲に、”獲物”がたくさんいる場所まで行ってもらうためだ。

「-くひっ!」
純玲が不気味な笑みを浮かべた。

「----!?」
純玲はハッとする。
今”自分の意思とは関係なく”
笑みがこぼれたような、そんな感覚がしたのだった。

「---気のせいだよね」
純玲は微笑むと、そのまま
人気アイドル・敦夫のライブ会場へと向かった。

”あぶねぇ あぶねぇ”
脳内のインフルエンザウイルスはそう呟いた。

うっかりと自分の喜びの感情が、
純玲にも影響を与えてしまった。
危ないところだった。

”さぁ、女・・・
 ライブを楽しもうぜ”

インフルエンザウイルスは、そう呟いた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ライブ会場に到着した
純玲。

しかし、彼女に異変が起きていた。

「ふふ・・・獲物が…」
純玲はニヤリと笑みを浮かべる

「獲物が…獲物がそこら中にいる…
 くふ…くふ…くふふふふふ♡」

純玲は、既に自我を奪われつつあった。
ライブ会場に到着した今、純玲の意識など
もう必要ないのだ。

この身体は、
純玲という女性ではなく、
インフルエンザのキャリアとなったのだ。

「---」
ぽた、ぽたと額から汗が流れ始める。

熱が上がる。

「--あ、、、あれ、、わ、、、わたし…」
純玲は朦朧とする意識の中、
かろうじて残っていた自我で歩き続ける。

うつろな目で歩く純玲。

そんな純玲の異様な雰囲気に気付いた
他のライブ客が、純玲に声をかける。

「あの…大丈夫?」
女子大生ぐらいだろうか。

純玲は「・・・・・」と
何も返事もせず、ゾンビのような表情で
そのままライブ会場入りを果たした。

人気アイドルの敦夫のライブは、
大きなライブ会場で行われていた。

ライブを前に興奮を隠しきれない客たち。

もちろん、純玲だって例外ではない。
純玲はこれから、インフルエンザを感染させるときの
ことを考えて、笑みを浮かべた。

「ふふふっ…楽しみ♡」
純玲がイヤらしい笑みを浮かべる。

もうー
ライブに来た目的など忘れていた。

今はただー。

「---ぐふっ…ぐふっ…ぐふふふふふ♡」
純玲は、あまりの興奮から、びしょ濡れに
なっていた。

これから仲間を増やす。
興奮しないはずがない。


敦夫がステージ上に現れた。
ネオンとスモークの中から現れた敦夫は、
ステージ上から、観客に向けて指をさし、
甘い声で囁いた。

「I love youー」

と。

全員に向けてではなく、
一人ひとりへのメッセージとして
敦夫はいつもこの言葉を使う。

一斉に歓声をあげる観客たち。

その時だったー。

「どけ!」
敦夫のライブを楽しみにしていたはずの
純玲が突然、ステージ上に上がり、
敦夫を突き飛ばした。

「--な、何をするんだ!」
突き飛ばされて尻餅をついた敦夫が叫ぶ。

その表情には驚きの色が浮かび上がっていた。

「--ふふふ…」
純玲は嬉しそうにマイクをつかむと宣言した。

「--愚かな人間たち!
 今まで我々はずっと虐げられてきた!」

純玲が自信に満ち溢れた表情で
演説を始める。

ライブに来ていた人たちは戸惑い、ざわめき、
そしてブーイングが始まった。

「--何あれ?」
「何かのパフォーマンスか?」
「及びじゃねぇぞ!ひっこめ!」

そんなブーイングを浴びながらも、
純玲は動じることなく宣言した。

「---これからは我々が人間を支配する!
 お前たちは、我々が繁殖するための器だ!」

純玲が大きな声で堂々と叫んだ。

「何言ってるんだ!」
敦夫が叫ぶ。

すると純玲は、笑った。
よく見ると、その顔は真っ赤に染まり、
目は充血し、
はぁ、はぁ、と苦しそうにしている。

「ーー私はインフルエンザ」
純玲はそう言った。

ライブの客たちは、
わけが分からないという様子でわざめく。

「--我々は進化したのだ。
 意思を持ち、お前たちを支配できる力を
 手に入れた。

 この女がそうだ」

純玲は自分の胸を触りながら笑う。

「うふふ・・・くふふ、
 これが人間の身体…くふふ♡
 ふふふふふふふっ♡」

女子高生がライブ中に乱入して、
胸を揉んで笑っている。

会場の人間たちは唖然としていた。

「-お前たちは我々の感染を予防しようと
 マスクだの薬だの出席停止だの、
 我々をしいたげてきた。

 でも、もうそうはさせない」

純玲はそう言うと、
手を広げて、自分が支配者かのように宣言した。

「--これからは、我々の時代だ!」

新型インフルエンザ、P型の
感染力は爆発的だった。

既にライブ会場周辺で、純玲がした咳から
感染している人、
そして、純玲のクラスメイトを介して広がった感染者ー

ライブ会場にも新型のインフルエンザが既に潜伏している
人間が100人以上は存在していた。

「---ふふふふふ」
「あ、、、あれ・・・わたし!?」
「くへへへへへ、俺はインフルエンザ!」

ライブの客の一部がインフルエンザに意識を
乗っ取られて叫ぶ。

「--さぁ、感染を広げるのよ!
 うふふふふふふ、はははははははははっ♡」

純玲が手を広げながら大笑いする

「ひっ…!?」
人気アイドルの敦夫は真っ先にファンを
見捨てて逃げ出した。

客も、パニックに陥る。

100人以上のインフルエンザに支配された人間たちが
周囲の客に咳を吹きかけていく。

広がる感染者ー
もう、この拡散は止められない。

そしてー
真っ先に逃げ出した敦夫も、
既に感染していたーー。

「ーー人間ども!私たちに跪け!
 あははははははははは!」

純玲の笑い声と、
観客たちの悲鳴が、ライブ会場内に響き渡った。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

1か月後。

政府は、新型インフルエンザをP型と名付け、
その対策に追われた。

感染拡大を防止しようとしても、
感染者が支配されて、自ら感染を広げてしまう。

どうすることもできなかった。

しかもー
予防接種も効果がなく、
患者は、インフルエンザそのものに支配されてしまうため、
タミフルなどの投与もできない。

今や、半数の人間がインフルエンザに支配されていた。

しかも、高熱の中、身体を酷使されるため
その犠牲者も、かなりの数に膨れ上がっていた。

とある家庭ー。
両親と、高校生の娘が、
冷や汗をかきながら、顔を真っ赤にして
ニュースを見ている。

政府関係者による記者会見だ。

あれから1か月ー
政府の顔ぶれも変わっていた。

ーーあの時、ライブ会場で
インフルエンザを広げた純玲が、
偉そうに歩きながら姿を現す。

「---愚かな人間のみなさん。
 政府は我々インフルエンザが掌握しました。

 無駄な抵抗はやめなさい…
 わたしたちが、人間を支配するの…
 くくく…ははははははは!」

純玲は記者たちに向かって、そう宣言した。

記者たちが拍手を送る。

もうーー
逃げられない。

残された人間たちが、
この新型インフルエンザに打ち勝つことはできるのだろうか…。


おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

ウイルスが意思を持ってしまい
人間を操ってしまったら?という小説でした!

この後はどうなってしまうのかはご想像にお任せデス!
お読み下さりありがとうございました☆



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