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<洗脳>ぼくの”ママ”③~まま~(完)

ママが欲しいー

どうして、自分にはママが居ないのかー

奪われたなら、
ママを取り戻さなくちゃいけない。

ママを奪ったわるいやつがいるならー
それを、壊さなくちゃいけない
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雷が鳴り始めた。
大粒の雨が落ちてくる中、
塚田家では悲劇が起きようとしていた。

「ママを奪ったわるいやつを、やっつける!」
「ママを奪ったわるいやつを、やっつける!」

彩香が呪文のように、そう唱えている。

女子大生らしい明るさと、
真面目な雰囲気を兼ね備えた、
彩香が殺人鬼のような冷たい目で
裕樹の父親・正信を見つめている。

「うあぁ…うああああああぁっ!」
正信は自分の腹部から噴き出す血を
見ながら彩香を突き飛ばして、
2階へと逃げ込んだ。

彩香は勢いよく戸棚ぶつかり、
落ちてきたモノで頭を打ち付けた。

「--やっつける、、やっつける!」
痛いハズなのに、そんな様子も見せず、
彩香は立ち上がった。

ポニーテールがほどけ、
乱れて垂れ下がった髪の毛は
まるで、幽霊のようー。

「--やっつける、やっつける」
彩香も、正信を追って、
2階へと向かう。

「---ーーママ!頑張って!」

家に入ってきたのが父親だと
気づいていない裕樹は、
”わるもの”がやってきたのだと思い、
嬉しそうに、ママになった彩香を応援した。


2階に駆け上がり、自分の部屋の扉を閉めた
正信は「はぁ、はぁ、」と言いながら
1年前のことを思い出した。

あの日ー

正信は会社の同僚と共に、
”ある不正”をして、会社のお金を横領した。

完璧な計画だった。
誰にも気づかれず、数千万のお金を
手にできるはずだった。

しかしー
”妻”に気付かれてしまった。

「--あ、、あなた…どうしてそんなこと…!」
あの日、妻は、気づいてしまったのだ。
正信の横領に。

「---り、凜子!分かってくれ!
 俺の親の借金を返すためなんだ!
 お前と、裕樹のためなんだ!」

正信は叫んだ。
しかしー

妻の凜子は正義感の強い女性だぅた。

「わたし…警察に行くわ」
凜子が言った。

「凜子!?俺を裏切るのか?」
正信が叫ぶ。

妻は、涙をこぼしながら言ったー。

「-ーーあなたが好きだから、
 あなたに道を踏み外してほしくないからー。
 
 あなたのお父さんの借金なら、
 わたしも手伝うからー」

凜子も悲痛な叫び。

正信は「わかった…2日間だけ、考えさせてくれ」と答えた。


そしてー
その夜、正信は裏サイトで、殺し屋を依頼した。
会社から横領した数千万の一部を使って―


翌日。
正信はいつものように仕事に出かけた

そして、その最中に雇われた殺し屋が押し掛け、
裕樹の母親の命を奪った。

「欲しいモノは、奪う物だぜ…
 自分の手でな」


裕樹にトラウマを植え付けた男ー

しかし、正信にとって嬉しい誤算があった。

それはー
3歳だった裕樹がパニックを起こし、
その殺し屋を殺してくれたことだー。

口封じや、秘密がばれる心配も無くなった。
しかも、裕樹は3歳児かつ、状況が状況だけに、
罪に問われることはなかった。

そうして、正信は、邪魔モノになった妻を葬り、
莫大なお金を手にしたのだ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

”ママを奪ったやつをやっつけろ”

そう洗脳された彩香は、
”ママ”の殺しを依頼した、正信を
やっつけようとしていた。

「くそっ…くそっ…」
正信はなぜ自分が女子大生の
彩香に命を狙われているのかわからないまま、
スーツで、刺された部分を止血した。

ガン!

ガン!

部屋の扉が乱暴に音を立てる。

雷の音が聞こえる。

「やっつける!やっつける!
 わたしは裕樹のママだから、 裕樹のために
 わるいやつをやっつける」

廊下では彩香が、
乱暴に扉を何度も何度も蹴り飛ばしていた。

スカートも服を乱れまくった彩香は
まるで殺人ロボットのようだった。

「わるいやつは、許さない!」
「わるいやつは、許さない!」
彩香が何度も何度も叫ぶ。

「や、、やめてくれ!やめてくれ!
 俺が何をしたってんだ!」
正信は泣きながら叫ぶ。


彩香を追って2階に上がってきた
裕樹は笑う。

彩香に殺されそうになっているのが
父親だと知らぬまま。

「--悪いヤツをやっつける!」
ママになった彩香は乱暴に扉を
蹴り続ける。
鬼のような形相で。

「--ママ、がんばれ~!」

そう祐樹が叫ぶと、
彩香はさらに力を振り絞って、
扉を蹴破った。

「や、やめろ!やめろ!来るな!」
正信は叫ぶ。

しかしー

「ママ、悪いやつをやっつけるの」
彩香はそういって、不気味に微笑むと、
正信に包丁を何度も何度も突き刺した。

「うぎゃあああああ・・・!」
正信が力無くその場に倒れる。

”わるいやつ”を
やっつけた彩香は、そのまま
笑みを浮かべてその場に立っている。

「---裕樹!わるものをやっつけたよ!」
彩香が廊下にいる裕樹に向かって叫んだ。

裕樹が嬉しそうに入ってくる。


「--ままを奪ったわるいやつはボクが許さないぞ!」
裕樹が倒れている人物に向かって叫んだ。

しかしー
裕樹は倒れている人物が誰なのか、
ようやく気付いた。

雷が鳴り響く。

「え…パパ…?」
裕樹が驚いた表情を浮かべて、
震える。

「---ゆ、、、裕樹…」
正信は苦しそうに息をしながら呟いた。

「--俺はただ、、、俺はただ、、、
 家族みんなで…」

裕樹の方に手を伸ばす。
しかし、その手を彩香が踏みつぶした。

「わたしの子に触れないで…!」

「----」
正信が、涙を流して、そのまま動かなくなる。

「うわあああああああああ!」
裕樹は、父が母に殺しを依頼したなんてことを
知る由もなく、その場で泣きじゃくった。

そして叫んだ。

「--ママをとったやつをやっつけるんだよ!
 本当のわるものをやっつけるんだよ!」

裕樹が彩香に向かって叫んだ。

彩香がビクンとなって
「---わかった。ママに任せて」とつぶやいた。


ーーーー血が飛び散る。

「---!?えっ…」
裕樹は、自分の手が切りつけられたことに驚く。

「---わるいやつをやっつける!」
「---わるいやつをやっつける!」

彩香が、裕樹に襲い掛かった。

「--えっ、、ど、、どうして…やめて・・やめてよ!
 うわああああ!」
裕樹は慌ててその部屋から飛び出した。

しかし、廊下で躓いてしまう。

「--ママをうばったやつをやっつける!」
ボサボサの髪で返り血を浴びたスカートと
ブラウス姿の彩香は、まるで殺人鬼のようだった。

「--やめて!やめて!」
裕樹が命乞いをするー

どうして…?
裕樹はそう思った。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

1年前ー

「うわああああああああ!」
母親を刺されて、パニックになった裕樹は、
殺し屋の男と乱闘状態になった。

”相手は3歳の男の子”

軽くあしらうつもりだった殺し屋の男。

しかしー、
恐怖とパニックで無我夢中だった3歳の子を
見縊っていた。

逆に、自分が刺されて、命を落とすことになるとはー。

「---はぁ…はぁ…」
男が動かなくなった傍で、裕樹は座り込んでいた。

そこにー
まだ生きていた”ママ”がやってきた。

男に刺されながらも、母はなんとか生きていた。

「ゆうき…」
背後から声をかけたー

でもー

「--うわあああああああああああああ!」

血まみれで、髪もボサボサだった母は、
3歳の裕樹にとって、鬼に見えた。

「---わあああああ!わあああああ~」
裕樹は”現れた鬼”をメッタ刺しにしたー。

鬼をやっつけるためにー

母の命を奪ったのはー
自分自身ー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「やめて!やめて!やめて!」
裕樹は泣き叫ぶ。

「------」
彩香は裕樹に包丁を刺そうとする。

その時だったー

「---動くな!」
警察官が家の中に入ってきた。

最初に父親の正信が刺されて、
部屋に逃げ込んだとき、
正信が警察に通報していたのだった。

「--ーーーやっつける、、やっつける」
取り押さえられた彩香は、無表情でそう呟いている。

「ー大丈夫か?」
警察官が裕樹に向かって言う。

そして、すぐに救急車が手配された。

連行されていく女子大生の彩香。
その最中、彩香は正気を取り戻した。

「え…!?わ、、わたし…あれ?
 え…なにこれ・・・え???いやっ」

泣き出す彩香。
しかし、警察官はそのまま彩香を連行した。

救急車で運ばれる裕樹。

裕樹はボソボソと何かを呟いている。

「ママー
 ママー
 ママー」

うつろな目で呟く裕樹。

1年前の事件を思い出す。
今日のことを思い出すー

「ママー
 ママー
 ママー」

4歳の裕樹にとってあまりにも過酷な経験。

そしてー

「--ママをとったわるものを
 みんなやっつけなくちゃ!」

警察官は
”彩香ママ”を奪った。

この救急車のやつらも、仲間だ!

「--ぼくは、、ママをとったわるものを
 ゆるさないー!」

救急車内で目を赤く光らせて立ち上がる裕樹ー。


無邪気な狂気は、
さらなる悲劇を起こそうとしていたー


おわり


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

憑依空間では数少ない洗脳モノでした。
お楽しみ頂けましたでしょうか!

お読み下さりありがとうございました☆


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無名

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