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<皮>見失った自分②~迷宮~(完)

幼馴染の彼氏になった海二。

しかし、海二は、周囲の人間も皮になっていたことを知り
愕然とする。

そんな海二がとった行動とはー?
”皮の迷宮”に迷い込んだ彼の運命は・・・?
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「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
校舎裏で、青ざめた表情の女子高生が
地面を見つめていた。

そこには”皮”になった女子高生が2人ー。

香恋は、友人のツインテールが可愛らしい少女・敦子も
皮にされていたことを知り、
パニックを起こしたー。

敦子の中にいたのは、
去年退学になった不良生徒だった。

敦子の仲から飛び出してきて、
”お前が香恋の皮を着ていることをばらしてやろうか?”と
脅してきたため、
とっさに人を皮にする力を使って、
その不良生徒を皮にしたー。

そして今、
地面には、不良生徒の皮と、
敦子の皮が横たわっている。

香恋の中にいる海二は怯えていた。

”もしも、幸弘を、香恋を皮にしていることがばれたらー?”

と。

人を皮にしたらー
どうやって戻せばいい?

このまま放置しておけば、戻るのか?

海二はパニック状態のまま考える。

いやー
もし戻るとしても、
この二人に皮にされている間の記憶があったらどうなる?

もし、彼女たちが騒ぎ始めたら、どうなる?

海二の頭の中に、
自分が殺人鬼として逮捕されるイメージが浮かぶ。

人を皮にするー
それは、命を奪っているに等しいことかもしれない。

だったら、それがばれたら自分は・・・

「うっ…うわああああああ!」
香恋はそう叫びながら、
不良生徒の皮を上から着て、
さらには敦子の皮を上から着たー。

「わ・・・わたし…わたしは敦子…」
自分に言い聞かせるようにして呟く
ツインテールの少女。

「--そ、、そうよ!わたしは敦子よ!」

もう、忘れよう。
皮のことはー。

自分が、敦子に成りすましていれば、
ばれることはない。

自分も、幸弘も、香恋も消えることになるが、
それでも、ばれることはないはずー

不良女子は、元々退学になっているから学校では
騒ぎにならないだろうしー
心配は…いらない。

スカートに違和感を感じながらも、
敦子として教室に戻って行く。

「---あはははははは!」

ふと、通り過ぎた空き教室から
海二の友人・寺岡の笑い声が聞こえた。

「いやぁ、お前に那智子になってもらってよかったよ」

ーーー!?

敦子の皮を着たままの海二がその声にびっくりして
空き教室を覗く。

すると、そこにはーー
寺岡の彼女、那智子の皮の中から
別の少女が出てきている光景が広がっていたー

「うふふ…お兄ちゃんとずっとずっと一緒にいたいもん!」

ーーー!?!?!?

思わず空き教室の外から、
中の光景に見入ってしまう。

「---あぁ、俺もずっと一緒にいたい」
寺岡が、那智子の仲から出てきた少女を抱いている。

那智子は、脱皮した皮のように、
教室の床に横たわっている。

「---ま…まさか」
海二は思う。

隣のクラスの那智子まで、皮にされていたのか?
しかも、寺岡の妹とやらに…?

ガタッ!

「---!!」
うっかりと音を立ててしまった海二。

「---おやぁ?」
中にいた寺岡が笑いながらこっちを見る。

「--あ、、、あ、、、ご、、ごめんなさい」
海二はとっさに敦子のふりをしながら謝る。

「--敦子ちゃんじゃないか。
 ……」

寺岡は、背後の光景ー。
自分の妹と、皮になって横たわっている那智子の方を見て、微笑んだ。

「見ちゃったね。敦子ちゃん」
寺岡はそう言うと、手を光らせて
敦子の方に向けた。

これはーー

”人を皮にする力”

「て…寺岡!お前まで!」
敦子のふりをするのも忘れて敦子は必死に
逃げはじめた。

「ーーおい!待てよ!」
寺岡が不気味に笑いながら敦子のあとを追うー。


空き教室に一人残された寺岡の妹は不気味に微笑んだ。

「--くへっ」
そう笑うと、その妹も、皮のように垂れ下がり、
中から白髪まじりのおっさんが現れていたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「おい~敦子ちゃん!どこにいるんだ~?」

既に5時間目の始業ベルがなったのにも関わらず、
寺岡は、敦子のことを追っていた。

廊下の物陰に隠れながら、
敦子は体を震わせている。

「な…なんなんだよ…!」
敦子は目に涙を浮かべていた。

周囲の人間が、こんなにもたくさん皮にされていたなんて…

敦子は震えながら思う。

寺岡も人を皮にする力を持っているー。
もしも、、
もしも、、見つかったら…

敦子の中にいる海二はひとつの結論に辿り着く。

”自分も、皮にされる”

という結論に。

香恋や、敦子、那智子、幸弘のようにー
自分も意思なく着ぐるみのように
なってしまうー

「--うわあああああ!」
敦子は寺岡の背後からとびかかった。

無我夢中で寺岡に襲い掛かる敦子。

ツインテールを振り乱し、
荒い息をしながら、寺岡を一心不乱に
抑え込む。

「おい、、、やめろ!!!」
寺岡が叫んでいる。

しかし、敦子は狂ったように叫びながら
寺岡を叩きつづけたー

するとーーー

寺岡が動かなくなってしまったー

「--あっ…あぁあああ」

敦子は、表情をゆがめながら
寺岡を見るー

寺岡はーー
後頭部を殴りつけられた際にー
死んでしまっていた。

「いやあああああああああああ!」
敦子は叫んだ。

人を皮にするだけではなく、
人を殺してしまったー

海二は更なるパニックを起こしていた。

「いや…待て…」
敦子は寺岡の方を見る。

寺岡を皮にして、
自分が寺岡になってしまえば…

そう思って、敦子は、寺岡に手をかざしたーー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

5時間目の授業に遅れてやってきた寺岡。

元は海二だが、
その上に幸弘の皮、香恋の皮、不良女子の皮、
敦子の皮、寺岡の皮をかぶっていた。

皮は不思議と、サイズが変わるのか、
皮をいくつ身に着けても、
見た目上は普通の人間にしか見えなかった

「---寺岡?何してたんだ?」
先生が言う。

「すみません」
寺岡はそう告げると座席についた。

どうなってるんだ?と海二は思う。

身の回りに”皮”にされている人間が
こんなにもたくさんいたのか?

疑心暗鬼になってクラスメイトたちを見つめる。

もう、誰が誰だか分からない。
自分の知らないうちに、皮にされた人間が
そこら中にいたと言うことかー?

頭が爆発しそうになりながら、海二は考えた。

海二の幼馴染である香恋は、半年前に退職した安西先生に皮にされていた。
さらに、友人の敦子は、退学になった不良女子にー
そして寺岡の彼女である那智子の中には寺岡の妹がいたー

「--なんなんだ、なんなんだ」
頭を抱え込む寺岡。

ここまで来ると、もう、誰が誰でも
おかしくない。

それにー
海二の頭の中には、
敦子や香恋、幸弘、寺岡…
いろいろな人物の記憶が
少しずつ流れてきていた。

「…お…おれは!」
突然、寺岡は叫んで立ち上がった。

先生と周囲のクラスメイトたちが、
びっくりして寺岡を見る。

「おれは…誰なんだ・・・!!!!」

寺岡は大声で叫んだ。

先生とクラスメイトたちがぽかんと口をあけて
寺岡を見ている。

色々な人物の記憶が流れ込んできて、
海二は、もう、何が何だか分からなくなってきてしまっていた。

「--人を皮にする力よー。
 その力で、意中の人の彼氏になりなさいー」


自分に”人を皮にする力”をくれたあの少女は何者だ?と
海二はふと思う。

あの少女は、いったい?
この力は、何なんだ?

最初に感じるべき疑問を今になって感じた海二は、
寺岡の身体のまま走ろうとした。

「おい!待て!」
先生が叫ぶ。

そんな先生を無視して、寺岡は走り出した。

あの少女に、この力は何なのか聞かなくては。
このままでは頭がおかしくなってしまうー。

あの子と出会った場所に向かわなくてはー


「--ね~ぇ!寺岡く~ん!」

廊下を走っていると、
寺岡の彼女・那智子が姿を現した。

「---!!どけっ!」
海二は知っているー
この子には、寺岡の妹が潜んでいる。

同じひみつを知るものを
野放しにしておくわけにはいかないー

海二は、那智子を皮にすると、悲鳴をあげた。

「---うわあああああああああああっ!」

皮にされた那智子の中から
ボロボロと皮が出てきた。

寺岡の妹ー
白髪のおじさんー
老婆ー
半年前に失踪したクラスメイトー
見知らぬ少女ー

「--な、、な、、な、、」

那智子の中から大量の皮が出てくる。

那智子になっていた人間は、
自分と同じように何人も人間を着こんでいたのだろうか。

海二は、周囲を見渡しながら、
那智子から出てきた皮を全部着こんだ。

”人を皮にする”
これが、ばれたら自分は殺人鬼にされるかもしれない。
その恐怖が、海二をさらにパニックへといざなった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

皮の力をくれた少女と話をした裏路地に辿り着いた海二。

今はー
那智子の姿をしている海二は叫んだ。

「--出てこいよ!何なんだこの力は!?」
可愛い声で叫ぶと、
皮の力をくれた少女が姿を現した。

「----あら…あなたは」
少女が不気味に微笑んでいる。

「---お、、おい!”皮”ってなんなんだ?
 俺の周りにも皮にされていた人間がたくさんいた!
 これは一体、なんなんだ!?」

那智子の姿のまま、
パニックになった海二が叫ぶと、
少女は微笑んだ。

「ーーふふ」

そして、少女は、パニックになっている海二に近寄って行くと
耳打ちしたー。

”オマエガ ソレヲ シル ヒツヨウハ ナイ"

とー

少女の身体がパックリと割れるー

中からー

「---うわあああああああああああああ!」

那智子の悲鳴が響き渡るー


中からーーーー
”人間ではない何かーーーー”

が現れたーーーー


「---23枚かーーー」

少女の中から出てきた”何か”は
海二が着こんでいた皮と、
海二自身の皮を見つめながら笑った。


「おいーーー」

”何か”は、背後に呼びかけると、
背後から、それと同じ不気味な生命体が23人現れた。

「---」

23人は、海二と海二が着ていた23枚の皮を着ると
微笑む。

「--くくくくく…」

海二の幼馴染だった香恋も邪悪な笑みを浮かべて笑う。


「-ーーこの星は、われわれのものだー」

彼らはー
宇宙からやってきたエイリアンだったー
50年前、地球の美しい環境に目をつけて、
それ以来、少しずつ人間を皮にして、
着こんでいるー。

今や、地球の人類の半分は、
彼らの着ぐるみだー。
中に、エイリアンが潜んでいるー

人間に皮にする力を授け、皮を集めさせて
海二のようにパニックになって戻ってきたら、
それを全て回収ー

そうすることで、人類を少しずつ、
少しずつ支配しているー。

「--ふふふふふ…
 全ての人間が我々の着ぐるみになる日は近いー」

エイリアンに着こまれた香恋は、
嬉しそうに微笑んだ…


おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

リクエストのお題が私にはなかなか難しかったので
こんな感じになりました(汗)

皮モノの執筆経験があまりないのと、
複数形だったので、なかなか難しく…!

「見失った自分」とは、
このお話を考えた私自身のことを示すタイトルだったりもします(笑)
半年間、このリクエストどうしよう~と悩み抜いた結果、
自分を見失ってしまったわけですネ笑

ただ、リクエストはこういう不慣れな部分にも
挑戦できるので、私自身も楽しませて頂いています!

お読み下さりありがとうございました~!

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無名

Author:無名
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