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<二重人格>精神崩壊~ココロノキズ~

二重人格の彼女・優香ー。

彼女を大切に思う心優しき男子高校生・誠吾の想いは、
彼女に届くのかー。

精神崩壊~ココロコワレル~の完結作デス!
---------------------------

ガチャ。。
玄関の扉が開いた。

出てきたのは母だろうかー。

「---優香さんに、話があります」
誠吾が言うと、
優香の母親と思われる人物は戸惑いの表情を浮かべたが、
誠吾の強いまなざしを見て
「あの子は…」と呟いた。

「---分かってます。
 それでも僕は、彼女に会いたい」

誠吾がそう言うと、母親は頷いて、
そのまま誠吾を招き入れた。

「優香は2階よ・・・」
その言葉に、誠吾はうなずき、2階へと向かう。

部屋をノックする誠吾。
中から返事はない。

だが、人の気配はする。
誠吾は意を決して、
そのまま扉を開けると、

「なに?入るなってこの前もいったでしょ?」
優香の不機嫌そうな声が聞こえてきた。

母親が入ってきたのだと思ったのだろう。

優香は誠吾の方を見て表情を歪める。

「あんたー…」

誠吾は
部屋の扉を閉める。

「・・・何なのよ」
優香が誠吾を睨みつける。

「…安心したでしょ?病気の私が
 学校に来なくなって。

 せいせいしてるんじゃないの??
 お荷物が居なくなって!」

優香は自暴自棄な様子で言う。

その言葉を聞いて、誠吾は首を振った。

「…僕は今でも優香の事が好きだからー。
 だから、今日もここに来たんだよ。」

「それにみんな、優香の事を心配してるよ。
 …だから、また学校に行こう」

言葉を続ける誠吾。

「はいはいー出た、そーいうの!」
優香が椅子から立ち上がり、誠吾の方に近づいてきた

「----言ってんだろ、そういうのウゼェって」
優香が誠吾を間近で睨みつける。

しかし、誠吾は目を逸らすことなく、しっかりと優香の
目を見返した。

「何と言われても、僕は優香を嫌いにならないし、
 信じるーー約束したよね。」

パチン!

突然、優香が、誠吾にビンタを喰らわせた。

「ウゼェ!」
そう言うと、優香はさらに誠吾にビンタを喰らわせる。

「ウゼェ!ウゼェ!ウゼェ!」
何度も何度も、繰り返し…。

それでも、誠吾はしっかりと優香の目を見た。

「何なのその目…
 ふざけんな!」

「ふざけてなんかいないよ。」

「あっそ。。
 どうせ私を笑いに来たんでしょ!
 笑えばいいんじゃん!ほら笑えよ!」
優香の目は涙ぐんでいる。

その目には
怒り、憎しみ、悲しみーー
色々なモノが浮かんでいるように見えた。

「--僕は、笑わないー
 僕は、何をされても、優香を嫌いになったりしないー」

誠吾は強い意志を持って、優香にそう言い放った。

「………どこまで」
優香の様子が少し変わった気がした。

「どこまでお人よしなのアンタは。。」
優香が飽きれた様子で言う。

誠吾はそんな優香に向かって叫んだ。

「僕は、優香が大好きだから…!
 きみも…優香も…
 いいや、どっちの優香も、ぼくは受け入れるから!」

誠吾が叫び終えると、
部屋の中は沈黙した。
優香が、自虐的な笑みを浮かべている。

「…わかったわかった。
 もういいよ」

「優香…?」
優香の表情は、
何故だか穏やかだった。

それが、逆に不気味だった。

目の前にいる優香は
”もう一人の優香”なのか-
それとも”元の優香”なのかー

その境界線が次第に薄れている気がする。

「---私、もう消えるから」

優香は机のカッターを掴むと、
自分の手首に向かってカッターを突き立てようとした。

「やめて!」
誠吾が叫ぶ。

優香は怒りと悲しみが混じったような表情で
誠吾を見つめる。

「ぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶうざい!!!
 もう、こんな世界、、、わたしなんて、、
 消えてしまえ!」

優香の負の部分を全て受け持つ人格ー

それが、ついに自傷行為に走ってしまったー。

「やめて、優香!」
誠吾が叫ぶ。

優香はカッターを持ちながら涙目で
誠吾の方を見つめている。

「・・・どうしても消えたいなら、 
 僕が代わりに消える。

 どうしても自分にそのカッターを刺したいなら
 僕に刺せ!」

誠吾は、自分でも無茶苦茶な事を言っていると感じながらもー
必死だった。

優香を取り戻したいー
その一心で。

それほどまでに、誠吾にとって、優香は、
大切な存在だったー。

「はぁ?何それ?
 ほんっっっとうにウザいわアンタ」
そう言うとカッターを持った優香が誠吾に近づく

「どこまでお人よしなの?
 あんたみたいの、ほんと~にうざい!

 知ってる?
 わたしがどんな地獄を見たか?
 知らないでしょ?
 何も知らないくせに、知ったような口をきくな!」

優香は叫びながら、誠吾の腕をカッターで切りつけた。

腕から血が出る。

痛い…
怖い…

誠吾は恐怖を感じながらも、優香の方を
強いまなざしで見つめる。

「…それで満足なら。
 僕は何をされても、優香が好きだから」

「…何なの…アンタ!
 バカじゃないの!」
優香は、泣き叫ぶようにして誠吾の腕を切りつける。

血が流れて、床に滴り落ちる。

それでも、誠吾は表情を歪めながら
一歩も逃げずに、優香を見つめた。

「僕は逃げないー
 僕は信じるー

 優香をー」

「何で私なんかをそんなに!」
優香は涙声で叫んだ

”お前たちはゴミのような存在だぁ!”

弟に暴力をふるいながら
笑ってそう叫んだ実の父の姿を、
優香は今でも忘れていない。

”ゴミは、いつまでもゴミなんだよ!けひひひっ!”

父親の暴言ー
父親の暴力ー

そして…
弟の死。

「ーーーさっきも言ったよ…
 優香が好きだから」

誠吾は、瞳を震わせている優香の方を見つめながら
優しく囁いた。

「そんな目で私を見ないで!」
再び優香がカッターを誠吾に向ける。

今度は顔。

「…切るよ」
優香が言う。

「……僕は逃げないし、信じるよ。。
 優香を」

誠吾は、そう言いながらも、怯えていた。

僕はこのまま死んでしまうのかなーー。
そんなことを考えながら。。

顔に痛みが走る。

彼女が僕の顔に少しずつ傷をつけている。

優香ー。

僕がこのまま死んだら、優香はどうなってしまうのだろうー。
少しは、悲しんでくれるだろうかー。
優香が前に進むきっかけになるだろうかー。

不意に傷みが止まる。
優香が、誠吾の顔に突きつけていた。カッターの動きを止めた

「ねぇ…何で・・・
 何で逃げないのよ!」
泣きながら優香は叫ぶ。

「おかしいでしょ!?
 普通、逃げるよね!
 それなのに何で・・・」

優香の言葉を聞いて、
誠吾は頬に流れる血の感触を感じながら、呟いた。

「僕、、
 優香と一緒になるまで学校なんか
 つまらない。。
 そんな風に思ってた」

誠吾がそう呟くと、優香はカッターを持つ手を震わせた。

「でもね…優香と出会って、
 学校ってこんなに楽しいんだなって。。

 優香と出会えて僕は変われたんだ。
 他のみんなとも話すようになって、明るくなって…
 みんなとも仲良くなれた。」

優香は涙ぐんだ目で誠吾を見つめている。

「僕はさ、小さい頃から、面倒事には
 関わらないようにして生きてきたんだ。
 中学のときもさ、いじめられてた幼馴染を
 見て見ぬふりしちゃったし…

 でもー」

 今回は初めて”守りたい”って思えた!
 優香を”助けたい”って思えた!

 生まれて初めてこの人と一緒に居たい!って思えた!

 だから僕は何があっても逃げないんだ!」

誠吾は、優香に向けて、今までにないぐらいの叫び声で叫んだ。

優香がカッターを窓ガラスに向かって投げつけた。

「本当にーーーー
 馬鹿なんじゃないのーーーーー?

 誠吾…」
優香が泣きながらそう呟いた。


「・・・優香?」
僕は顔の傷から出る血を手で拭い、
その場に座り込んだ優香に近づいた。

「・・・ごめんね誠吾…
 私、、、、今まで…」
優香が泣きながら言う。

元の優香が表に出てきたのだろうか。

「今まで逃げてばっかりだったのは私だよーー。

 お父さんの暴力の事もそうーー。
 弟の死も…
 もう一人の私の事もそうーーー。

 全部、、私が逃げていたからーー」

優香が泣きながら呟く。

「…大丈夫だよ、優香。
 これから向き合って行けばーーー。」

誠吾が優香にやさしく語りかけると、

「ーーーーーーーありがとう」
と、優香はそう呟いた。。

「大丈夫?」
誠吾はそう問いかけた

いろんな意味の”大丈夫”だった。

ーもう一人の優香はー?
ー空白の期間に混乱していないかどうかー?

誠吾が問いかけると優香は顔を上げて微笑んだ

「---それは私のセリフだよ…誠吾…」

誠吾の顔や腕からは血が流れていた。

…すっかり忘れてた

「確かに…そうだね」
誠吾が笑うと、優香も微笑んだ。

・・・・・・・・・・・・・・・

優香が応急処置をしてくれた。

カッターで軽く引っかかれただけだったから、
幸い、血はすぐに止まった。


「---私の中にいたもう一つの心…
 さっき、私に今までの記憶を全部、
 伝えてくれたの。。」
優香が僕にそう語る。

「私、色々酷い事しちゃったんだよね。
 みんなにーー。」
優香はそう言うと下を俯いた。

「誠吾にもーーー」

優香は、ここ最近、ずっと”もう一人の優香”が表に出ていた。
その間は、周囲に敵意を向けるような態度で、
周囲からも孤立してしまっていた。

「僕は大丈夫。
 それより、、もう一人の優香は?」
誠吾は一番気になっていることを尋ねた。

さっきまでのやり取りで消えてくれたのか。
それともー。

「ーーー優香の事を認めてくれたみたい。。
 変な言い方だけど。。

 もう思い残すことは無いって…」
優香さんがそう言った。

”思い残すこと”

誠吾はふと、思う。
仮に人格統合が果たされれば、
もう一人の優香はどうなるのだろう。

「はい、、終わり」
優香が腕の方の応急処置を終えると立ち上がって
窓の外を見つめながら言った

「私ーーー
 もう逃げないね。。。

 自分の状態からもーー
 過去からもーーー
 高校からもーーー

 私も強くならなくちゃね」

そう言うと、優香は振り向いて微笑んだ。

僕は微笑み返して呟いた。
「----おかえり」

ーーと。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日。

優香と誠吾は学校に登校した。

優香は、みんなから距離を置かれている。
でもー。

「--大丈夫」
誠吾が呟く。

「僕が、なんとかするから」
その言葉に、優香も微笑んだ。

「-わたしも、自分のしたことにちゃんと向き合うから…
 大丈夫」

”もう一人の自分”も自分ー
優香はそう思いながら、
自分の最近の態度をクラスメイトたちに謝り、
ちゃんとやり直す決意をしていた。

「---よぉ…」
背後から声がした。

誠吾が振り返ると、
そこにはA組の後藤がいたー。

「--!?」

後藤はキャラメルポップコーンを食べながら笑みを浮かべた。

「--お前…二重人格なんだってな?」

ポップコーンを天井高くに投げ飛ばして、
それを口でキャッチすると、
後藤は音を立ててポップコーンをかみ砕いた。

「---惚れたぜ。
 そういう女、好きだぜ」

後藤が言うと、にやりと笑みを浮かべて、
衝撃の言葉を発した。

「俺の女になれー」

と。

驚く誠吾と優香。
優香が「わたしは…」と返事をしようとすると、
後藤は、キャラメルポップコーンを大量に
口に頬張りながら笑った。

「返事は昼休みに聞こう。
 俺の女になるか、
 全校中に二重人格だとばらされるか。
 選びな…!

 ま、俺と付き合わなきゃ、てめえは終わりだ」

それだけ言うと、後藤は、空っぽになった
キャラメルポップコーンの袋を誠吾に押し付けて
立ち去って行った。

「-----わたしの、最後の仕事」

ふと、優香を見ると、優香は鋭い目つきで後藤を睨んでいた。

「ゆ…優香!?」
誠吾ははっとした。
これは、、もう一人の…

優香は少しだけ笑うと、誠吾の方を見た。

「心配はいらないよ。私は優香のために、最後の仕事をするだけだから」

そう言うと、もう一人の優香は、廊下を歩きだしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

4時間目ー
C組の授業は数学だったー。

だが、優香は、体調が悪い、と言い残して保健室に行ってしまう。

「だいじょうぶかなぁ…?」
誠吾が心配しているうちに、
4時間目の授業が終わった。

「保健室…覗いてみるか」
誠吾はそう思って、保健室の方に向かおうとすると、
体育の授業から戻ってきたA組の生徒たちが騒然としていた。

「--!?」
誠吾がA組の教室を除くと、
そこには優香と、後藤の姿があった。

優香が、後藤の鞄を逆さまにして、
鞄の中身を床にぶちまけていた。

「----テ…テメェ…」
後藤は青ざめている。

煙草ー
ナイフー
コンドームー

持ち込み禁止のものが次々と出てくるー

「---終わるのは、あんただろうが!」
優香がそう怒鳴り声をあげて、後藤の机を蹴り飛ばすと、
後藤の机から大量のエロ本が散乱した。

「あ…うああああ…!」
後藤がキャラメルポップコーンの袋を床に落して
パニック気味に大量のエロ本や鞄の中身を
拾い出した。

「---後藤」

後藤はその言葉に動きを止めた。

後藤が顔を見上げると、そこには、
生活指導の先生の姿があった。

煙草ー
ナイフー
エロ本ー

もう、後藤に言い逃れはできなかった。

「---あ、え~と…喰います?」
後藤はキャラメルポップコーンを先生に
差し出したが、そのまま生活指導部の先生に
連行されて停学になった。

「--ふん」
優香はその様子を見ながら、
鼻で笑うと、
そのあとにため息をついた。

「---私が招いたことだからー」

後藤に付きまとわれるようになったのは、
自分が後藤を弄んだからだー

だから”消える前”に
責任を取らなくちゃいけないー。

そして、その責任を、今果たしたのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・

放課後の図書室。

誠吾と優香が図書委員の活動をしていた。

夕日が図書室に差し込む。

利用生徒もいなくなり、
戸締りをして、帰る時間だ。

「……アンタさ…」
片づけをしていた優香が突然、そう口を開いた。

…誠吾ははっとして優香の方を見る。

さっきまでとは違う雰囲気。。

”もう一人の優香”だろう。。

「…優香?」
誠吾が心配そうな口ぶりで言うと、
優香は愛想ない様子で口を開いた

「…心配しなくていいよ。。
 もう私は消えるから。。

 一つの体には2つの心がいちゃ
 いけないから」

誠吾は解離性同一性障害について思い出す。
優香の中のトラウマなどが払しょくされた今、
自己防衛のために作られたもう一つの人格は
役目を終え、統合の時を迎えようとしているのかも
知れない

「アンタ、、本当にバカだよね。。
 あそこまでされながら
 信じる 信じるって…。

 ま、そのおかげで優香もようやく心を開けたみたいだし…
 もう私もすることないからさ…」

「--ありがとう」
夕日が差し込む中、誠吾は優香にそう告げた

「は?」
優香がわけの分からないという表情で誠吾を見る。

「いや、こんなこと言うのも変だとは思うんだけど、、
 なんか、、お礼言わなくちゃいけないかなって…」

ー自分でもなんて言っていいか分からないー。

でも、もう一人の彼女は優香という存在を
守るために生み出された人格。

カタチはどうあれーー
彼女を守ろうとしてくれていたのだろう。
辛い記憶の部分だけを全て背負ってーー

だからこそーーお礼の言葉が誠吾の口から出た

「はっ…バカじゃないの…
 最後の最後まで…ウザいわアンタ」

鋭い口調でそう言う。

しかし、そのあとにもう一人の優香は少し笑って言った

「---ま、、
 アンタなら優香を任せられるかもね」

もう一人の優香の初めての”敵意のない”笑顔だった。

辛い記憶ー
暴力、虐待、優香自身のあらゆるものを
背負って生まれた彼女にとって
”楽しい”ことはあったのだろうかーー。

その笑顔はどことなく、寂しげで儚げだった。

彼女が立ち上がって窓際の方に歩いていく。

夕日が優香を照らす。

優香は夕日の方を見ながら口を開いた

「ーーー前にさ全部ウザい、っていったよね?
 でも、訂正するわ…
 この世界は、ウザいだけじゃない」 

誠吾に聞こえるようにもう一人の優香は言った。

しばしの沈黙…

「あのさーーー」
誠吾は口を開く

「君はこれからどうなるの?」
率直な疑問だった。

統合を迎えたら、
もう一人の優香はどうなってしまうのだろうー。

元々一つだったものが、一つに戻る。
確かにそれだけの事なのかも知れない。

でも、今の彼女にははっきりと
優香とは別の意思がある。

彼女はーーー。

「…知ってんでしょ?」

彼女が窓の外の景色を見ながら言う。

「私は消えるの。
 お役御免ってわけね…」

短い言葉だった。

彼女の心中は誠吾には分からないー

交代人格として生まれてきた彼女は
今、どう思っているのだろう。

「---怖くないの?」

「…」

しばしの沈黙の後、彼女は口を開いた。

「フフ…
 元々、私も優香なんだから、
 怖いわけないでしょ、、
 
 そのぐらい考えれば分からない?」

もう一人の優香らしい、
嫌味っぽい言葉が返ってきた。


「…そうだね」
僕は優しく返事をした。

図書室の片づけが終わる。
”もう一人の優香”はまだ窓の外の景色を眺めている。

「これからー 
 アンタ達は、、あの夕日を何度も何度も
 一緒に見れるんだよねーー。

 でも私はこれで最後だからーーー」

優香が一人呟く。

その声には悲しさが漂っている。

常に棘棘しい様子だった優香ー
誰にも負けないよう強気に振る舞っていた優香ーーー

それでも、やっぱり消えるのは怖いのだろう。

”もう一人の彼女”の弱音ーー。

最後になんと声をかけてあげられるのだろうーー。

そんな事を考えていると
彼女がもう一度口を開いた。

「ーー次生まれる時はさーーー。
 ちゃんと”一人の人間”として生まれられるかなー?」

もう一人の優香がそう呟いた。

「----うん。きっとーーー。」
誠吾には正直、分からない。
でも、誠吾はそう言わずにはいられなかった。

「--他人事ね」
優香が冷たくそう言い放った。


夕日が西側に向かい、さらに強く
優香を照らす

「私が戸締りしておくから。。
 アンタ、もう先に帰りなさいよ」

もう一人の優香が窓の外を見ながら言う。

「え?どういうこと?」
誠吾がそう言うと、彼女が言う

「…ほんっとうに…
 鈍くてウザい奴ね…」

そう言うと優香はこちらを振り返った。

「最後ぐらい一人にしてって…
 言ってるの。。

 大丈夫よ。。もう暴れたりしないからー」

優しい口調だったー。

夕日で反射して彼女の顔ははっきり
見えないけれどーーー
彼女の頬からは涙が伝っているように見えた。


その言葉を聞き、誠吾は立ち上がり、図書室から去る準備をした。

優香は窓の外をじっと見ている。

去り際ー
誠吾は口を開いた

「ありがとうーーー
 そしてさようならーーー」

その言葉を聞いた優香が言う

「……優香を悲しませたら、
 また私が出てきて、、
 アンタをぶん殴るから…」

少し涙声のような声でそう言うと
彼女はもう何も語らなかったー。

誠吾は「僕を信じて」とだけ言って、
図書室を後にした。

ーーーさようなら
”もう一人の優香”


ーーー図書室。


私はこれからどうなるのだろうーーー。

私の存在に意味はあったのだろうかーー。


……。


私の頬を涙が伝う。


-何故だろうーー

悲しくなんてないはずなのに。。

元々私は優香なんだからーー

何も恐れることなんてないはずなのにーーー

「ちょっとだけ…
 みんなが羨ましいな」

そう呟くやくと、窓を閉め、
”もう一人の優香”はカウンターの椅子に座り、
静かに目を閉じた


「さようなら………」

ーーーーーーーーーーーーーー

どれだけ時間が経っただろうー。

誠吾は昇降口で後から出てくるであろう
優香を待っていた。

もう一人の優香と交わした最後の会話を思い出す。

ー彼女は誠吾を認めてくれた。

大丈夫。
僕は必ず優香を大切にするからーーー

誠吾は、そう決意した。

「---誠吾?」
誠吾が振り返ると、そこには優香の姿があった。

「ごめんね、待っててくれたんだ。
 私、カウンターで居眠りしちゃってたみたい」
優香はそう笑顔で言った。

その目はさっきまで泣いていたのだろうかー
少し潤んでいるように見える。

「あ… 別の私が
 ”誠吾にありがとうって伝えてほしい”って
 言ってたよ」

優香がそう告げた

「もう一人の優香は…?」
誠吾が聞くと、優香は答えた

「うん。もう居ないみたい…。」

ーもう一人の優香との統合が済んだという
ことなのだろうかー。

「私もーー誠吾に色々お礼言わなくちゃね。
 ありがとう」

優香はそう言うと、自分の胸のあたりに触れて呟いた。

「ありがとうー」

と。

今まで自分の黒い部分を抱えていてくれていた
”もう一人の自分”に対するお礼だろうか。

そんな優香を見て、誠吾は微笑んだ。

「--さ、一緒に帰ろう」

と。

これからは、優香が自分自身で
色々なことと向き合って行かなくてはいけない。

けれどもー
2人なら
きっと乗り越えて行ける。

きっとー。

彼女の心の傷も、誠吾は受け入れて
これから支えていくー

そう、決意をしていたー。

沈みかけた夕日を見つめながら
誠吾は呟いた。

「--ありがとう…」

それは、自分の彼女を守ってくれた
もう一人の優香に対するお礼の言葉だったー


おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

いつもより長くなっちゃいました!
話数的に時間をかけてゆっくり和解、ということは
できませんでしたが、
ひとまずこれでまとまったかな、と思います!

お読み下さり、ありがとうございました!


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無名

Author:無名
憑依小説好きです!
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